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Days.18 「モノクローム・フィルムに青空を見分けるように」(strange paradise)

モノクロの海の写真を見た。
夏の海の一瞬の輝き、
夏の頂点のような空気を切り取っていて、
すごく印象的だった。
この光を見た夏が自分にもあったような気がして
記憶の中を探すほどに鮮明だった。

若い頃モノクロのポストカードをよく買った。写真集も好きだった。その頃アートショップでバイトをしていて、バレンタインにはドアーノの『市役所前のキス』の写真なんかを大小いろんなフレームに入れて店の展示をキスだらけにして遊ばせてもらったりした。モノクロなのに唇の熱や息づかいさえ分かるようなあのキスに、みんな見惚れていた。

心の、カラフルな美しい色の写真を見て動く部分と、モノクロのシーンを見て動く部分は、違う、と思う。

その時の、空気や光を喚起するのに、色彩を失くした方が有効なことがある。
情動を喚起するのに、かも知れない。
視覚は意識無意識に膨大な情報をもたらしているけれど、膨大なことで却って、何かを見失ってしまうのかも知れない。



モノクロ写真についてもう一つ追記
最近書店で写真系の本(写真集でなく)のコーナーにいったら、ドアーノとかユージン・スミスとかの仕事について書かれた本があって、かつてショップのバイト仲間とキャワキャワ言ってた彼らは、写真史上の、歴史上の人物だったんだなと思った。私はスティーグリッツが好き。(古め)


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