カヨリcoyote

言葉というものは不完全だからどんなに尽くしても意味を完全には伝えられない。そう聞くと絶…

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言葉というものは不完全だからどんなに尽くしても意味を完全には伝えられない。そう聞くと絶望する人と「じゃあ大体でいいか」と思う人に分かれるそうだ。でも、言葉は多分そんなふうに機能するものではなく、言と言の間、人と人の間に、共有される何かを目指して歩き続けるものなんだと思う。

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Days.1 日常 最後の後も続く

1年前、19年飼っていた猫が死んだ。 1年前の今日の明日だ。そのことが分かっていたなら、 1年前の今日の夜、眠らずにあのこのそばにいただろうか。 一晩中ずっとあのやさしい毛の背中を撫でていただろうか。 そんなことにはならない世界だ。 いつでも先のことは分からず、だから充分に何かを尽くすことはできず、 いつでも日常がすべてで、尽くすなら今この時しかない。 できるだけ、で良いのだと思う。 あのこはいつでもできるだけ愛してくれてた。 猫だからね、できることはたくさんはない

    • Days.30 君といつまでも

      ある日大学構内の道を歩いていたら草むらから猫が出てきた。 猫は僕には見向きもせず、でも離れても行かず、僕と同じ歩調で前を歩いていく。 君の後をつけてるんじゃないよ 君が僕の行く方へ行く方へと先に行くんだよ 僕らはしばらくの間、すごく親しい間柄のように心底信頼している親友のように、 またはただ合流した水の流れのように、 いっしょに無心に同じ道を歩いた。 ああ、でもついに行き先が分かれる時がきた。 さらば、しばしの友よ。 僕らの道がまた合流する日はきっとくるだろう。 何し

      • Days.29 桜のうた

        桜ソングは、 桜が入学式の頃じゃなくて卒業式の頃に咲くようになってから、内容がちょっと変わった。と同時に、すごく支持されるようになったと思う。 前は桜に「別れ」の意味合いはなかった。 「死」や「気が狂う」というのは前からあった。桜の樹の下には死体が埋まってるとか、桜のように散ってとか あの花の生きる様を、命の発露を、別の側面から切り取って語っているのだろう。本当は同じものだ。 それが「別れ」と相まって、 刹那の このいっ時だけの 燃えあがるような気持ちと 焦りと 諦めと

        • Days.28 限りなく青に近いブルー

          自分が青と呼んで見ているあの色は、他の人にも同じようにあの色に見えているのか、疑ったことがある。 犬や猫が見ているのは、自分で思ってる通りの姿の自分なのか、疑問に思ったこともある。 見ている主体の『眼』によって見え方は違う。 僕の青が 君の青の近くにあればいい 一人一人に分かれていて確かめることができないのが、僕らの青の孤独であり限りなさだ。

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        Days.1 日常 最後の後も続く

          Days.27 小鳥遊の空

          小鳥遊と書いて「たかなし」。 ある時何かの拍子に注目されて、以来、素敵な苗字として、ノベルやアニメの登場人物でよく見かけるようになったお名前。 本題に入る。 毎年3月のはじめに、フライトフェスタなる鷹匠祭りがある。 千葉の関宿城跡あたりの河原の広い広い野っ原で開催される。 放鷹術、ハヤブサのルアーパス、ハリスホークのアジリティなどなど、会場にはフクロウなどの猛禽類もやってきていて、とっても見応えありだ。 アジリティでは、 高い止まり木に止まるよう鷹を投げ放ったり、小さ

          Days.27 小鳥遊の空

          Days.26 千年、愛する

          千年経っても君を愛するとか、 生まれ変わっても君を見つけるとか、 今熱い渦の中にいる恋人たちに水をさす気はないけどね 千年後より再び巡り会う来世より、 10年後とか30年後とかに愛し合い慈しみ合うのが難しいんだと思う。 難しくても それでも日々は続いていく。 明日も君を愛する。 いつか本当に終わるまで、と、午後の光が静かに祝福する。

          Days.26 千年、愛する

          Days.25 飲み物の魂

          コーヒーの魂 以前、美味しいコーヒーの淹れ方を教わった。 飲む時の半分の量の水(お湯)で抽出を止め、 半分はそのままの水として足す。 後半の抽出は、色も香りもあまりなく、分析するとエグみや渋みなどの「良くない成分」ばかりらしい。 「良い成分」だけのコーヒー。 ほの甘く、優しく、すっきりと爽やかな後味で美味しかった。 が、 何かコーヒーの「魂」のようなものが欠けているようにも思えた。 コーヒーの魂、それは良くない成分に、 エグみや渋みに宿っているのかも知れない。 ビール

          Days.25 飲み物の魂

          Days.24 その花の花言葉はなんですか

          花言葉にはときどき笑わされる。 「赤いバラの花言葉は『愛』だよ」とか言われると 普通なのでスルーしてしまうけど キンギョソウ「推測ではやはりNOです」とか タネツケバナ「父の失策」とか聞くと、 花言葉って何よ?と思う。 誰が決めているんだろう。 先日、ピーマンの花言葉が『海の幸』だと知り、盛り上がった。 ピーマンの花って見たことあるか ピーマンの花で、花言葉を使うシチュエーションってあるか 『海の幸』って、ピーマンに海 どうしてもって来たのか 『海の幸』が花言葉ってわ

          Days.24 その花の花言葉はなんですか

          Days.23 如月の望月の頃

          願わくば 花もとにて春死なん その如月の望月のころ 西行 若い頃はこの願いを猛烈に美しいと思った。 如月は2月だけどこの歌は桜が咲く頃の満月を詠んだものだろう。花の頃の月を、月光の中に咲く花散る花を見ると、この歌を、「願い」として思った。 年を取った今は 願いとはなんだろうかと思ったりする。 美しさだけに全振りすることは既にできない。それはまあ「美しくない」姿だろうけど、そのことこそが誇りであることも今は確信している。(若い頃は分からなかった。) 季節はめぐってい

          Days.23 如月の望月の頃

          Days.22 独夜

          建て込んだ家の間から夜を見上げる。 四角く空が切り取られている。 雲が空を覆って、 塞がれた夜 僕らは、雲の上に出て、 星あかりの中を飛ぶことだってできるけど 今夜はここでひとりで 黙って眠る

          Days.21 線を描く

          線をいっぱい描き込むことよりも線を一本選び出して描くことの方が難しい。 描き直しができることが前提だと、のびのびとは描けるかも知れないけど、 覚悟も哲学も 自分自身を見る目も 磨かれない気がする。 間違えたらやり直せることのメリットは山ほどあり、可能性は目が眩むほど広がる。 でも 見えない、定まらない線を、一本、描き出す その線がその人を表すんじゃないかと思っている。

          Days.21 線を描く

          Days.20 境界線上

          南の果ての島に行ったことがある。その島の伝説では、さらに南に幻の島があって、そこは楽園なのだそうだ。 西の果ての浜を漕ぎ出すと、海の先、もっと西の方に浄土があるという。 多分、東にも北にも、その向こうがあるのだろう。 誰もがなぜかその先にある何かのことを思う。 ここはどこ ここまでと、ここからの 間 最果て ぼくらの世界の終わるところ 別の世界の始まるところ 溶けあう境界線の上 僕と君の 世界の境界線上

          Days.20 境界線上

          Days.19 等価 Equivalents 死も再生も

          モノクローム写真の続き(前はDays.18) 空の写真が好きだ。 かつては写真集やポストカードをよく集めていた。 空の写真でとくに好きだったのが、アルフレッド・スティーグリッツの「Equivalents 等価」と名付けられた一連の写真。古い時代だからモノクロームだが、繊細な雲と光の陰影に惹かれた。 最近は日々SNSでいろんな方の空の写真を楽しませてもらっている。 ある時、一枚の風景写真に強い印象を持った。 海と大きな空、鮮やかではないが色彩は複雑で、昏い。反して線

          Days.19 等価 Equivalents 死も再生も

          Days.18 「モノクローム・フィルムに青空を見分けるように」(strange paradise)

          モノクロの海の写真を見た。 夏の海の一瞬の輝き、 夏の頂点のような空気を切り取っていて、 すごく印象的だった。 この光を見た夏が自分にもあったような気がして 記憶の中を探すほどに鮮明だった。 若い頃モノクロのポストカードをよく買った。写真集も好きだった。その頃アートショップでバイトをしていて、バレンタインにはドアーノの『市役所前のキス』の写真なんかを大小いろんなフレームに入れて店の展示をキスだらけにして遊ばせてもらったりした。モノクロなのに唇の熱や息づかいさえ分かるようなあ

          Days.18 「モノクローム・フィルムに青空を見分けるように」(strange paradise)

          Days.17 術式(あるいはExcel)について

          OSやプログラミングって、陰陽道や呪術みたいだなあと、日頃から思っている。 (因みにコンピューターの中味は爻で、データサイエンスはインド哲学かなあと) 例えばエクセルExcelなんかは術式の塊で、 基本的な使い方から関数、マクロなどを説明する時、 相手が「陰陽師」や「呪術廻戦」とか知っていると説明しやすいのである。 術式として捉えると、 領域展開、 埋め込んでおく式神、 限られた選択肢からしか選べなくなる呪詛、 あるきっかけで発動し最後まで遂行する術式、 結界を越えて要素

          Days.17 術式(あるいはExcel)について

          Days.16 結ぶ/解く

          物語を書くというのは、何かを結ぶということだろうか。解くということだろうか。 あなたは何か物語を読んだ時、結んだという感覚になりますか。 それとも、解いたという感覚になりますか。 いろんなことを結んで結んできたけれど、思ったような結び目の形ができなかったりする。 じゃあ解くかというと、簡単じゃなかったり。結ぶよりも多分難しい。でも絶対解けないと思うものも、時々驚くほどあっけなく解けたりもする。 それは分かち難く、 どちらにもなるし、その時々にまた違うのだろう。 結び目

          Days.16 結ぶ/解く