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Days.23 如月の望月の頃

願わくば
花もとにて春死なん
その如月の望月のころ

西行

若い頃はこの願いを猛烈に美しいと思った。

如月は2月だけどこの歌は桜が咲く頃の満月を詠んだものだろう。花の頃の月を、月光の中に咲く花散る花を見ると、この歌を、「願い」として思った。

年を取った今は

願いとはなんだろうかと思ったりする。

美しさだけに全振りすることは既にできない。それはまあ「美しくない」姿だろうけど、そのことこそが誇りであることも今は確信している。(若い頃は分からなかった。)
季節はめぐっていく。満ちる月もまた欠けていき、咲く花も、二度と同じ花は咲かない。それが分かる今は、なんの変哲もない明日がくることが、花に望月に春に、意味を与える気がしている。

今でも願わくば花のもとにて春と思うけど、
願いは まためぐりくる私がいなくなった後の春も、なんの変哲もなく月が満ち、次の桜が咲くように
そんな願いの歌のように今は思える。

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