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OEDO[1-9]シン・積極的平和主義

軍拡が戦争を招いた例は数知れませんが、非武装が戦争を退けた例は、わずかながらも確実に存在しています。かと言って、軍備を増強すれば必ず戦争になる訳でも、武力を放棄すれば必ず平和になる訳でもありません。世の中に絶対はありません。あくまでも蓋然性の話です。

数少ない非武装、中立を謳った国家がかろうじて平和を保っているだけの話です。しかもコスタリカのような小国家。大国日本(GDP世界3位、人口11位)が、もし武力を放棄したらどうなるのか──少なくとも軍拡よりは安全性は高まるでしょうが、100%までは保証できません。あくまでも確率の話です。

武力放棄だけでは足りない、だから「地球防衛隊」なのです。平和の蓋然性、確率を上げるための真の積極的平和主義を推進する正義の部隊です。「積極的平和主義」──どこかで聞いた言葉ですね。「真の」という枕詞を付けたのは、どうやら「偽り」の語法も存在するらしいからです。

軍備を増強し、米国との協調体制を強化し、国連のPKOにも積極的に派兵する──つまり、積極的な「武力」により平和を実現するという与党の語り口。まるで大河ドラマによく出る戦国武将の台詞「天下泰平のためには戦(いくさ)は避けられぬのじゃ」のような詭弁です。

中世、戦国時代の血塗られた歴史を、2000年代の現代に復活させようというその動きは、そのワードの提唱者、ヨハン・ガルトゥング氏からも「積極的平和(Positive Peace)からの盗用で、本来の意味とは真逆だ」と批判されています。まさしくオーウェル『1984』の二重語法ですね。

集団的自衛権、自衛隊の海外派遣に関しては、「戦力ではない、実力だ」だの「戦闘ではない、衝突だ」などと、いちいちその表現や定義を巡って貴重な国会の時間が浪費されてきましたが、そんなのただの言葉遊びです。偽りの「積極的平和主義」もそれと同様、レベルの低い言い訳でしかありません。まさしくオーウェル『1984』のニュースピークです。

その証拠に、理念となる『国家安全保障戦略』には「軍備管理・軍縮・不拡散の取組を一層強化する」と明記されています。軍縮の取り組みを強化する──防衛費を40兆円以上に増額するのが、それにあたるのでしょうか。自分で言った上でのダブルトーク。誰にでも分かる幼稚園児並みの嘘です。

幼稚さで言うならば、我が「地球防衛隊」法案も引けを取らないように思われるでしょうが、その本質はさもあらず。しかも憲法9条護憲派の「消極的平和主義」──武力を持たないことで戦争のない状態を実現する──よりも、高い実行性を備えています。

ガルトゥング氏の主張は、貧困や差別、格差や抑圧などを生み出す社会の「構造的暴力」に着眼を置いていますが、「地球防衛隊」のそれは少し異なります。他国の「構造的暴力」に過度に積極的になるのは、少なからずや内政干渉にあたる危険性を孕みます。

「地球防衛隊」が実効性を発揮するのは、地雷や森林火災、震災や水害などの危険を排除する場面においてです。ガルトゥング氏が来日時に残した「日本がこう主張するのを夢見てやまない。『軍隊は持たず、外国の攻撃に備えることもない』と」に最低限合致はしますが、それ以上の高みを目指しています。

言うなれば「真」というよりも「新」と銘打つべき「積極的平和主義」。震災時に活躍するから「震」、これまでのどの平和主義よりも深いから「深」、弱者・被害者を救うから「神」──どれでも良いのでまあ、「シン・積極的平和主義」を名乗ってもガルトゥング氏からもお認めになって頂けるでしょう。

冒頭で「100%までは保証できない」と判断した「消極的平和主義」、それに国際世論を味方に付ける実効性を持たせれば、確実に安全への蓋然性、確率を向上させることができるはずです。もちろんそれでも100%は保証できませんが、改憲への代案となるには十分な実効性があるはずです。

実行性──英語でいうならばOperative。「地球防衛隊」の正式な英語表記は「Operative Earth Defense Organization」──「実効的地球防衛機構」とでも訳しましょうか。略してOEDO。纏(まとい)を振り上げ、人々を災害から救う「火消し」がヒーローとなったあの時代です。

憲法9条は「お花畑」と称されることが多いようですが、お江戸には「華」がなければいけません。せっかく国を守り、人々を守るために命を賭ける訳ですから、肩身の狭い存在に堕してはいけません。子どもたちの憧れ、ヒーローでなければならないのです。

お花畑──おめでたいと呼ばれるのは実に良いことじゃないですか。戦場の阿鼻叫喚に巻き込まれ、屍と伏すよりは余程ましです。「地球防衛隊」構想もおめでたいとはよく言われますが、五味隊長が言うところの「め」でたいの「め組」、真の「華」となれるめでたさを擁しているのです。


※最後までお読み頂きありがとうございます。この「地球防衛隊」全体の構想は最初の投稿「OEDO[0-0]地球防衛隊法案──概論」にまとめています。それ以降の章は、この章も含めて、その詳細を小分けして説明する内容になっております。

第一部[1-1]〜[1-9]では「戦争観のアップデート」について。第二部[2-1]〜[2-9]では「地球防衛隊の活動と効用」について。第三部[3-1]〜[3-9]では「予想される反論への返答」について。第四部[4-1]〜[4-9]では「地球防衛隊に至る思想的背景」についてを綴って行く予定です。

敢えて辛辣に、挑発的に書いている箇所もありますが、真剣に日本の未来を危惧し、明るいものに変えて行きたいとの願いで執筆に励んでいます。「スキ♡」「フォロー」や拡散のほど、お願いいたします。

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