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元祖チロルチョコから思う、駄菓子と子どもの世界

こんばんは、クラフトビア子です。

チロルチョコはお好きでしょうか。チョコ好き・甘いものが好きな我が家では、スーパーでたまにアソート(詰め合わせ)の袋をみかけると、ついつい買って来てしまいます。

今日もいつものように甘いお菓子の棚をみていたら、元祖チロルチョコと書かれたパッケージが。ヌガーが入った1種類だけのチロルチョコの袋詰めでしたが、食べたことのない種類だったので買ってみることにしました。

今晩は、元祖チロルチョコと、そこから思う駄菓子やさんと子どもとの世界について書きます。


元祖チロルチョコは、子どもたちに10円でチョコレートを食べさせてやりたいという思いから始まった

高度成長期の真っただ中の1962年に、西日本の駄菓子やで発売された「元祖チロルチョコ」。今回、ビア子が買ってきたのは、当時の復刻版でした。

元祖チロルチョコ・ミルクヌガー味。チロルチョコ公式サイトより

チロルチョコは、キャラメルをバラ売りで製造・販売していた製菓メーカーが、「子どもたちに10円でチョコレートを食べさせてやりたい」と考え、開発したのが出発だそう。

戦後復興を経て、ベビーブームで子どもたちが増えていく時代。町には駄菓子やがあって、子どもたちは10円玉を握りしめて、駄菓子を買っていました。

チロルチョコを製造・販売した会社は福岡・田川市が本拠。当時は炭鉱の町として栄えていて、菓子メーカーは炭鉱で働く労働者向けにキャラメルを買いやすい価格・バラ売りで販売していました。年々数が増え、単価は安くても毎日のように買っていく子どもたちは、製菓業界にとって新しい顧客層として映ったのかもしれません。

ともかく、当時はチョコレートは子どもが気安く買えるお菓子ではありませんでした。原材料が高く、板チョコは10円では大赤字になってしまいます。

そこで製菓メーカーが考えたのは、チョコレートの比率をギリギリまで下げること。中をミルクヌガーにしてチョコレートでコーティングしたチョコなら、10円で売れる。さらに食べ応えのあるボリュームを追求し、現在のチロルチョコが3つ連なった形にしました。

発売当時から変わらない3連のチロルチョコレート。チロルチョコ公式サイトより

駄菓子やでチョコレートが買える!しかも10円で!

というチロルチョコの登場は、当時の子どもたちにとって大きな衝撃だったようで、西日本の駄菓子やで大ヒットとなったのだそう。(ちなみに西日本限定なのは、単純に東日本の販路開拓ができなかったからだそうです。製菓メーカーの本拠は福岡県・田川市なので、東日本まで拡販するのは大変だったのでしょう。)

ところがオイルショックなどを経て、原料が高騰すると、それまでの10円の値付けが維持できなくなります。値上げすると、子どもたちは離れてしまいました。検討の末、お菓子のボリューム感を犠牲にしても、子どもたちがこれまでと同じ10円で買えるようにと、チロルチョコを現在のような正方形の1粒に変えたのだそう。そして、今でもよくみかけるコーヒーヌガー味のチョコが登場します。

以降はさまざまな味の一粒チロルチョコが駄菓子やからコンビニ・スーパーへと舞台を移していくことになります。

という歴史を、今回買ってはじめて知ったビア子。
一粒食べてみましたが、コーヒーヌガー味の、コーヒーじゃないバージョンというのがそのまま、といった味わいでした。

しっかり甘くて、歯にくっついてくるヌガーがうれしくて、なんだか懐かしい。

大人も子どもも前を向いて、東京タワーが建ったり新幹線が走ったりする時代に寄り添った、幸せな味なんだなあと思いました。

減ってしまった駄菓子やと子どもたちとの世界

さて、ビア子の子どもの頃には、まだ近所に駄菓子やさんがあることの方が多かったように記憶しています。

ただ、私の数年下の世代の頃には、コンビニが完全に普及し、駄菓子やさんは少しずつ姿を消していきました。彼らはオリオンのコーラを見ても、懐かしさを感じないのかもしれません。


オリオンのミニコーラ。コカ・コーラそっくりのボトルデザインでしたが、いまの子どもにはわからないかも…。 オリオン公式サイトよりお借りしました。

かつての駄菓子やさんが扱っていた駄菓子たちは、スーパーやコンビニの一部で今でも買うことができます。

スーパーの駄菓子コーナーは本当によくできていて、お祭り気分が演出されていたり、かつての駄菓子やの陳列を彷彿とさせるような配置がされていたりします。でも、やっぱり本物の駄菓子やとは全く違うのです。

幸いなことにビア子の自宅近くには、駄菓子やさんが残っています。

我が家の子どもたちは、100円くらいを予算にして、友達と駄菓子やさんに行くのを楽しみにしています。

そんな昔ながらの駄菓子やとスーパーの駄菓子コーナーとどう違うのでしょうか。

駄菓子やの特長は、お店に大人(親)が買い物に来ないことだったり、お金を直接やりとりすることだったり、店主と会話して買い物したりすることだったり――。

なにより、大人には踏み込めない子どもたちの社交場なのが、駄菓子やさんなのです。

駄菓子やさんの店主は概ね、子どもたちと対等な目線で会話してくれます。悪いことをしたら叱ってくれるし、子どもたちの顔を覚えてくれています。

子どもだけの世界が持てるのも、子どもの頃だけ。

駄菓子を買っていた子どもたちは、すぐに成長して、行動する先はコンビニやファストフードに移り、そして大人になったときに子どもと一緒に自らの子ども時代を懐かしみます。

そして、子どもの頃によく買った、チロルチョコやらヨーグルやらよっちゃんいかやらを買ってみます。当時よりずっと小さく見える容器や、単純で体に悪そうな味にいくつもの思い出を呼び起こしながら。

駄菓子やさんは、子育てを支えてくださっている地域のインフラ。そんな駄菓子やさんから出発したチロルチョコの、今後のさらなる展開が大いに楽しみです。

それではまた。

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