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5つの隣国と地続き 多様な文化が流入し入り混じる国ミャンマー (2/2)

今回の話題は
・ラオスと中国とミャンマーの関係について。
・ラオスは山岳地帯が国境なので、ミャンマーとの関係は希薄。むしろそこに住む少数民族の在り方に注目したい。
・北に接する中国とは昔も今も関係が深く、中国系ミャンマー人も多い。近年特に中国はミャンマーに様々な影響をあたえているが、それは中国にとってミャンマーは地政学的に重要だから。その点がわかれば中国がミャンマーにいろいろと持ち掛けてくるのか理解できてくるはず。
・国境付近の少数民族の意識にも注目したい。日本ではありえない生き方。

話す人:(T)チョウチョウソーさん
ミャンマーのヤンゴン出身 日本に難民として来日、現在は高田馬場でミャンマーレストラン「ルビー」を経営。NHK海外放送キャスター、在日ミャンマー人支援、大学教授と一緒に学生の社会活動協力、など多方面で活動
聞き手:(Y)山下 crafts of myanmar noteの管理人
 
(Y)今回は先回の続きで、ミャンマーと中国とラオスとの関係について伺います。
(T)分かりました。


ラオス
(Y)まずミャンマーの東側で国境を接しているラオスについて伺います。ラオスとはどのような関係にあるのでしょうか。
 
(T)ラオスとはあまり深い関係は無いです。
 
(Y)えっ!結構な長さで国境が接しているのにあまり関係は無いんですか。簡単にあまり無いで済ませていいのかなと思いますが。
 
(T)意外かもしれませんが他の国に比べると相互の関係はあまり強くないです。なぜなら国境地帯は山岳地帯で道路が無くビルマ人が頻繁に行き来するような場所ではないから。
この地域は山岳地帯に少数民族が暮らす地域で、中にはラオスとの国境をまたいで村があったりする。国境を意識せずに暮らしている。ミャンマーとラオスの国境というよりも国境付近の少数民族の場所として見たほうが良いでしょう。
この点については改めて国内状況としてお話しようと思います。
 
(Y)そうなんですね。国境はあるけれどそこに住むのは国民の大多数とは別の文化を持った人達だというのは、頭では分かるのですが正直ぜんぜんピンときません。この点を改めて教えてもらうのが楽しみです。
 
中国
(Y)さて最後に、インドと並ぶアジアの大国、中国との関係について教えてください。
 
(T)ミャンマーの北側が中国との国境になっています。ラオスとは対照的に道路が何本も通っていて毎日トラックが沢山行き来しています。中国との国境付近にはビルマ語と中国語の両方を使い分ける人たちが多くいます。その場その場で便利なほうの言葉を使います。この人たちにとっては国境の向こうは違う国ではなく隣町です。住みやすいところに住んでいます。国よりも生活が優先しているんです。
 
(Y)なにかもう日本では非日常すぎて冒険小説にでてくる国境みたいです。でも程度の差はあれ、これが世界の多くの国の常識かもしれません。

(T)そうですね。(笑)
 
(T)ミャンマーには中国の人たちが多く住んでいます。ほとんど雲南省出身者です。ヤンゴンには中華街もあります。お寺にはミャンマー語と中国語の看板があります。
文化的な影響はたとえば女性のぴったりした上着、紐で前を止めます。トーフや納豆も中国から入ってきました。(注:トーフも納豆もミャンマーではポピュラーな食材)米作自体中国からのものですし、お茶もそうですね。

女性のぴったりとした上着

(T)中国との関係では近代も現代も政治的なかかわりがとても強い。第二次世界大戦後に国民党が共産軍に追われて一時ミャンマー国境に集結し政権を建てていました。その後に台湾に移動したので今でもミャンマー人と台湾の関係は強いんです。
ミャンマーの中国系ミャンマー人も台湾に大勢移動しました。さらにマレーシア、シンガポール、香港、マカオ、そこにはミャンマー系中国人街もあります。友達の友達はどこにでもいるので、紹介されて繋がっています。
 
(T)現代の中国にとってミャンマーは地理的にとても重要な国です。中国は南シナ海と東シナ海に面しています。でもインド洋には出入り口がありません。そこでミャンマーをインド洋への回廊にできれば中国には大きなメリットがあります。

たとえば中東から輸入する石油をミャンマーで陸揚げすれば、タンカーがマラッカ海峡を通ってインドシナ半島をぐるっと回って南シナ海に出る必要はありません。だからミャンマーのインド洋側から中国まで、すでに全長1200キロのパイプラインが敷設されていてオイルやガスが運ばれています。
高速道路も鉄道も中国からミャンマー中部のマンダレーまで通っています。

マンダレーから中南部の最大商業都市ヤンゴンまでの鉄道整備はODAで日本が受注していましたが、軍事独裁政権の協力になるとして支援を打ち切りました。今後ここにも中国が乗り出す可能性はあります。

ヤンゴンの鉄道路

(T)軍事面でも中国がインド洋岸に直接軍事的拠点を展開することができれば、国境紛争を繰り返しているインドとの力関係に大きな影響を与えることができます。

(T)地政学的にミャンマーは中国にとってとても重要な国です。この地域のパワーバランスに非常に大きな位置を占めています。
 
(Y)日本ではミャンマーは民主化やクーデタ―あるいは経済や観光など単独で語られることが多く、周辺国との関係から語られることはあまりありませんでした。
アジア圏の国々との文化的な関係に加えて地政学的関係から見ても、ミャンマーという国が今後のアジアの動きのなかで重要なポジションにあることに気付きました。
そういった視点からも今後のミャンマー情勢を注視していくことは大切ですね。

とても興味深いお話をありがとうございました。次回は国内の様子についてお話を聞かせてください。