見出し画像

構想16年のおろし金「17°」誕生ストーリー。製造業が挑むECの販売戦略とは?

2022年4月から「CRAFT STORE」では、日本のものづくりの職人さんと商品を知っていただける取り組みをしようと記事広告「CRAFT journal(クラフトジャーナル)」を開始。「CRAFT journal」をご活用いただいた企業のご担当者さまにお話しを伺い、これまでの課題感や、やってみてよかったことなどを一緒に振り返っていきます。

今回は新潟県燕三条で、半世紀以上にわたりものづくりを続けていらっしゃる、『シゲル工業』の藤田社長と熊谷さんにお話を伺いました。
(聞き手:CRAFT STORE PR 木山)

シゲル工業、刃物づくりの歴史

木山:シゲル工業は1976年に創業し、現在ではプロ用理美容はさみ製造数日本No.1のメーカーです。なのではさみをつくってきた会社がおろし金をつくったのは意外というか。「キッチンはさみではないんだ」と思ったのですが、なぜおろし金なんでしょうか?

藤田社長:シゲル工業では理美容はさみをつくる前から調理器具の刃物をつくってきました。たとえばピーラーの刃とか、氷を削るための刃とか。理美容はさみの前は、洋装の裁ちはさみも自社ブランドとしてあったのですが、家庭で裁縫するような時代の流れではなくなったんですね。

その後理美容はさみの生産が増えたため、手狭になった工場での、大きなはさみの生産はやめようと。数年後、新工場への移転をきっかけに、自社ブランドの再構築として新商品の開発に注力しました。家庭用の理美容はさみからスタートして、その次に調理器具を選択しました。

構想16年のおろし金「17°」

木山:調理器具のなかでも、「おろし金」に着目した理由はなんだったのでしょうか?

藤田社長:当たり前を疑うというか発明家気質のある会長がいまして「おろし金ってもっといいものできるのでは?」という疑問からスタートしました。じつは何度も試作品を重ね、お蔵入りした分も含めると、おろし金の構想は16年くらいなんです。

30年前からおろし金のOEM生産を始めていたこともあり、自社ブランドとして出す商品は、相当突き抜けたものじゃないといけないと思い、求めるハードルが高かったですし。納得のいく「17°」ができるまで、かなり時間がかかりました。

プロダクトデザイナー・秋田道夫さんとの出会いは?

木山:おろし金「17°」はプロダクト・デザイナー・秋田道夫さんと一緒につくられていますが、これはどういうきっかけだったのでしょうか?

藤田社長:家庭用の理美容はさみがデザインコンテストで受賞をして、東京で受賞の展示があった際に、秋田さんが遊びにきてくれたんです。そこから「なにか一緒にしよう」と新潟にきてくれたところからスタートしました。

デザイン面は秋田さん、技術面はシゲル工業の体制で、構想16年をかたちにするタイミングが来たんです。

しかし、ちょうどその頃すごくいい「おろし金」を地元の企業が発売されて大ヒット。思わぬ向かい風となりました。「このままじゃだめだ。これを超えるものをつくらないと……。」と1年半かけてさらにブラッシュアップしました。

木山:燕三条らしい切磋琢磨感ですね。

藤田社長:どうしても同じ金属を扱う以上、産地全体で同じアイテムをつくることが多いんですよ。だからこそ真似はしないんだけど今あるものより、いいものをつくる。よそには真似できない優れたものをつくることは徹底しています。

流行りのものをみんな同じようにつくるけど、買う人からしたら「何が違うんだ?」っていう。売れるのはいいが、自社の強みや付加価値をプラスすることが重要かなと。
もっと安いものをつくれるところはいくらでもあるし、昔からある道具だから今更新しいものなんてできるの? というところを狙っています。言うほど簡単ではなかったですが……(笑)。

特許に通る新しさ

木山:昔からある道具に付加価値を加えるという意味では、おろし金「17°」の特徴は“刃の目立て”ですよね。

藤田社長:いまあるものと一線をひくという意味では、特許の取得を行っています。特許も新しい技術やエビデンスがないと申請は通りません。いろんな種類の技術を開発して申請をして、おろし金「17°」も特許を取得しています。刃がすべて同じ向きを向いているため、食材を引き戻す時の抵抗が少ないので作業がラクで、お手入れも水で流すだけで残った食材が落ちやすくなっています。またおろされた食材はすり潰されずすぐ下に落ちるため、美味しさそのままのふわふわ食感のおろしが作れます。(特許第7083530号)

独自の目立てはシゲル工業にしかできないもの。「値段はちょっと高かったけどめっちゃいい」という「お値段以上」に満足度が高い製品を目指しています。

モノづくりは得意だが…直面した課題は販売戦略

木山:おろし金「17°」はデザイン賞を受賞するなど華々しいデビューを飾ったと思うのですが、課題もあったとお伺いしています。

藤田社長:製造業としてはカタチにするのは得意ですが、売る経験はないし10年あれば売り方も変わってきている。クラウドファンディングなども昔はなかったですしね。販売戦略は自分たちに欠けている部分だと感じています。

熊谷さん:1番初めの連絡は「CRAFT STOREでおろし金「17°」を取り扱いできませんか?」というメールを送ったところからでした。ちょうどその時、新商品(薬味おろし)のサンプルができたタイミングで、そのことを話したらMakuakeのことを教えていただいて。プロジェクトページ制作をお願いしたんです。*1

Makuakeの打ち合わせをしているなかで、既存商品であるおろし金「17°」のメディア露出が落ち着いて、どうやって売っていくか悩んでいる、と相談をしたところ「記事広告がいいのでは?」と提案いただきました。

木山:たしかにメディアの露出って、プレスリリースなど新商品発売のタイミングがメインなので、発売から時間が経ってしまうと、こちらからメディアに企画を持ち込むってなかなか難しいですよね。しかもMakuakeは新商品しか発表できないため、既存商品である「17°」は出せない。ならば記事広告「CRAFT journal」はちょうどピッタリでしたね。


*1=CRAFT STOREを運営するニューワールドではMakuakeの制作サポートも行っています。

記事で売れた経験があった。だからこそ

CRAFT STOREの記事広告:進化したおろし金「17°」で料理をラクに、もっと美味しく。

ITmediaのライター・納富廉邦さんに使ってもらった記事*2があり、メディアの正直レビューがいいという原体験があったんです。生きた言葉というか、感じたことを記事にしていただいた経験があり、とても売れたんです。その時はメディアの特性上、圧倒的に男性のお客さまでした。

木山:ITmediaさんの記事との差別化として、CRAFT STOREらしさを出そうというのはかなり意識しました。道具のすごさを消費者が知れるのって実際に食べてみて、使ってみないとわからないじゃないですか。だから「使ってみた」訴求で、1日のなかでどんなシーンがあるかイメージできるよう料理写真が多めです。実際に出来上がった記事を見てどう感じましたか?

藤田社長:すごくいい記事でITmediaとはまた違う記事になりました。わかりやすいとプロダクトデザイナー・秋田さんからも連絡がきました。

木山:Twitterでもシェアしてくださってバズりましたね。記事があるとSNSでも発信しやすいですし、バイラルが生まれやすいのも記事広告の魅力だと感じました。配信型の広告って配信を止めたらもう見ることはできない。でも記事は残るので、ブランドの資産になりやすいなと感じました。

記事を読んだあとの貴社ECサイトへのクリック率がかなり高くて驚きました。私は前職でインターネット広告を扱っていたのですが、ありえないくらいいい数字でした。

熊谷さん:ほぼ女性の方が購入してくださっていました。ITmediaは男性のお客さまがメインだったので、また違う層に届きました。

木山:記事広告の写真をInstagramでもご活用いただいていますが、会長の投稿はかなり反響があったとか。

熊谷さん:社内で撮影できる環境が乏しいため、写真素材がほとんどなく……。なので料理写真など二次利用できる素材がたくさんあって助かっています。

とくに会長の写真は燕三条の方からみたよって言っていただけることも多かったです。

*2=大根おろしに起きたパラダイムシフト 燕三条の金属加工メーカーが取り組んだ9900円の名品「17°」|ITmedia

販売戦略もある上でのモノづくり

木山:今後の展望やロードマップなどはありますか?

藤田社長:MakuakeやCRAFT STOREでの予約販売を活用した、新製品開発が複数進行しています。

買って使ってもらえば絶対に喜んでもらえる自信作です。コスパがいい・安かろう悪かろうではなく、長く使ってもらうことを念頭に置いています。

一生物って言ってもいいくらいしっかりしたつくりのものばかりです。

木山:「一生物シリーズ」とてもたのしみです! 新商品開発はMakuakeやCRAFT STOREの予約販売。既存商品の認知拡大には「CRAFT journal」。記事広告は自社ECサイトへの導線もできたり、CRAFT STOREでの取り扱いもできたりと、ネット販売の戦略がすでにあった状態で商品開発ができるのは素敵です。

商品名も英数字の固有名詞で、海外市場でも戦えそうですね。海外進出の際にはまたお手伝いさせてください。

藤田社長:名前は英数字にこだわっているわけではないのですが、海外も狙えたらいいですね。新商品には、構想50年の「◯◯◯◯」もあるので楽しみにしていてください!

木山:なにやらすごそうです……! とても楽しみにしています。

モノで溢れる時代だからこそ。
使った人の反応を感じながらモノづくりを。

Makuakeプロジェクトは724%達成の大ヒット。11月15日まで実施中
*キャプチャは2022年10月10日時点

木山:最後に読者の方にメッセージはありますか?

藤田社長:いまの時代、モノで溢れているので手に取ってもらうって簡単ではないですよね。ですが持ってもらった時に「これすごいじゃん・これいいじゃん」と言ってもらえるモノを届けるのが、自分達の役割だと思っています。限られた場所で知恵を絞ってモノをつくる。

これまでと違うのは、Makuakeや記事広告のSNSのリアクションなど、何かしら反応を見られるのが新鮮でモチベーションになっています。

とくにMakuakeプロジェクトのスタートボタンを押すのはドキドキしました。笑

新しいアクションが大事で、そこから何かが生まれる。そして今までやってきたことがあるから人が集まるのだなと手応えを感じました。

直接買ってくれた人や応援してくれる人、使ってくれる人のリアクションに触れられるって今までは無かったことですから。みなさまからの反響を糧にこれからもモノづくりに取り組んでいきます。


ニューワールドでは「日本ブランドを世界No.1へ」をビジョンに掲げ、日本のものづくりをセレクトしたEC「CRAFT STORE」の運営や、メイドインジャパンのものづくり企業様の、Makuakeプロジェクトの制作のお仕事をしています。
Makuakeの制作についてはこちら
https://neworld-japan.com/monodukuri-partner
「CRAFT journal」についてはこちら
https://www.craft-store.jp/features/craft-journal



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?