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画面の中のあの子は

幼馴染のあの子が楽しそうでうらやましい。わたしは今日もベッドの上で寝転がってこの小さな画面に向かっている。同じ街で似たように育ったはずなのに いつの間にかわたしたちは全く違う人間になった。そんなの当たり前か、と思いながらカラフルなあの子のインスタにいいねを押す。数年前まではいつも隣にいたのに 画面の中のあの子はどこかの知らない誰かのような気がする。将来のために、と進学校を選んで 将来のために、と受験に向かうはずなのに 今のわたしは何をしているんだろう。今人気のあの店にも テレビで話題のイルミネーションで飾られたあの場所にも ディズニーにも行きたい。行かないわけじゃない。行けないんだ。お財布にはそれなりにお金は入ってるし 時間も土地勘もある。でも勇気だけがない。今のわたしはわたしにしばられて どこにも行くことができない。だけど手元にあるシャープペンはいつまでたっても手に馴染んでくれない。死ぬほど勉強に燃えるほどわたしは頑張り屋さんじゃないんだとも思う。受験生だとかそんなの無視して わたしもカラフルなあの子みたいな毎日を送りたい。今まで言っていた「将来」がどこにあるのかがもうわからなくなった。画面のハートマークを指でそっと外した。

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