ふと子供の頃のことを思い出した。

私は最近、実家に暮らす99歳になるばーちゃんの事が気になって仕方がない。

ばーちゃんなんでボケてしまったんやろ。
あんなになんでも覚えてて、お喋り大好きで、詩吟とか民謡とかゲートボールとか大好きで、日本中旅行にいって世界中旅行にいって、私にお土産いっぱい買ってきてくれたんに。

アメリカでジェリービーンズとティファニーのネックレス。

フランスでセリーヌのポシェット。

博多で博多人形。

青森でこけし。

畑もしててバケツにいっぱいの苺。

我が家の苺はいつもバケツで食べてた。

ナメクジもいたし冷蔵庫で冷やしたりもしないから生温い。甘くも酸っぱくもない。

ばーちゃんなんでボケてしまったんやろ。

母は一緒に住んでいて、もう介護が大変って。本当に苦労してる。昼も夜もない。って。

母からすれば義理母だから、ストレスすごいみたい。昔からずっと喧嘩してたあの2人。本当に嫌やった。お互いにいい事何にも言わんと文句ばっかり。

それでも私はばーちゃんとずっと一緒におったからばーちゃんっ子やった。お母さんごめん。ばーちゃんがお母さんの悪口いっぱい言ってて私はいつもそれきいてたから、お母さんが悪い人やと思ってた時もあってん。ゴメンね。

今はお母さんも大好きや。
お母さんも私のこと好きやってわかるもん。
だから好き。好きって嬉しいもん。

ばーちゃんが冗談でね、「私はボケ老人になるのだけは嫌や。みっともない。そんなんになる前にコロッと死ぬわ。それがいいわ。ボケ老人になっておかしこといっとったら、殺してくれや。ほんなんなるまで生きとうないわ」

そんなことよく言ってた。

さんまのからくりテレビの「ご長寿早押しクイズ」とか見ながらめっちゃ馬鹿にして笑ってたもんね。「同じこと何遍も言って。あんなんみとったら嫌になるわ」って笑ってた。

ばーちゃん今ボケとるやん。
体は元気で歩いたりごはんもりもり食べたりしとるけど、あの時のばーちゃんの魂は今どこにおるんや？もう先に空の上に行ってしもとるんか？ほんなら今のばーちゃんは誰や？

いつも怒って、プンスカしてたばーちゃん。
今はボケーっとなんも考えてないし、目もどこみとるんか全然わからん。

ばーちゃん、「殺してや」って言ってたの私覚えてるよ。私にだけ言ったんか？そしたら私がそれ叶えないといけないやん。

ほんでもそんなことできんよ。

私はばーちゃんがおらんくらる心の準備まだまだできそうにない。

ばーちゃん。今のばーちゃんでいいから。
お願いやから、あと20年くらいおって。
私のおるこの世界におって。
お願いやから。
今度お菓子持っていくから。
一緒に食べよ。

ばーちゃんと一緒に過ごした時間が愛おしいわ。なんであんなにいつも楽しかったんやろ。私の一番の友達や。

くりえ。