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社会人留学してサステナビリティで修士取ったけど質問ある?

ひと段落したので色々書き残しておこうと思います。誰かの参考になれば。質問していただければ追記します。自分でも思いついたら追記します。

Q1 どこの大学で勉強したの?

ドイツ第二の経済都市、ハンブルクにある国立大学”ハンブルク大学”で勉強しました。社会経済学部の、MIBAS(Master of Business and Sustainability※現在は名前が変わり、Master of Innovation, Business and Sustainabilityになっています)という課程を修了しました。興味がある方はリンクを参照ください。

MIBAS

Q2 どうしてドイツの大学で勉強することにしたの?


当時日本でフルタイム銀行員をやっていたので、私ももちろんまずは日本国内でコースを探しました。しかし、2019年当時は早稲田大学のMBAの一環でESG投資の科目があったり、東工大でもいくつか、国際基督教大学でもちらほら、といった感じで総合的にアプローチできる大学はありませんでした。また、専門性を深めたいという強い希望があったので、MBAはあまり考慮に入れていませんでした。そこで海外大学院のリサーチを始めましたが、米英はあまりにも学費が高いのと、オセアニアは特につながりがなかったので行先をヨーロッパに絞ってサステナビリティに特化した大学院を探しました。特にオランダやドイツの大学院を見ていましたが、その中でも魅力的だったのがハンブルク大学でした。特にサステナビリティ×金融分野に強い先生方がたくさんいたのと、卒業生のフィードバックがすべてポジティブだったのでこちらでの留学を決めました。

Q3 学費はどうしたの?


私は当時銀行員で、チャレンジリーブという休職制度を使って留学しました。これは社内留学とは違って特にお金が出るわけではないので、(むしろ3年間ずっと社会保険料を払い続けました)留学は自費で賄う必要がありました。いくつか奨学金に応募し、幸運なことにDAAD奨学金(マスター全部門)の分野で奨学金を得ることになり、基本的に奨学金のみで生活していました。月1000ユーロぐらい支給され、その中から家賃、食費など払ってもおつりがくるぐらいでした。私は通常2年のところを3年に延長したので、延長した分はインターンの月給で賄っていました。

Q4 学費はいくらかかるの?

はじめの2年間はDAADの補助があったのでセメスター毎に240ユーロぐらい払っていました。奨学金支給後、満額になってからは390ユーロぐらい払いました。結果的に3年間の修士課程で学費はトータル1740ユーロぐらいかかりました。分野的にほとんど文献を必要としなかったので、教科書等は一切購入せず、オンラインライブラリーで済ませていたので、法律や歴史学など実際に文献を必要とする学部は少し毛色が違うかもしれません。そのほか費用としてはライブラリーカード5ユーロぐらい、卒論の印刷に20ユーロぐらいかかったかなと思っています。ドイツで学生をする場合、学費に定期券が含まれるので基本的に市内で過ごす場合は全く交通費がかからないのもポイントです。

Q5 何人ぐらいのコースなの?他に日本人はいたの?

だいたい毎年80人弱が入学してきます。そのうち50%はドイツ人で、50%はインターナショナルでした。私の代(8代目)は日本人は1人だけでしたが、2世代下には2人ぐらい入学していました。デモグラフィーはかなり多様で、ロシア、イタリア、USA、インドネシア、ネパール、インド、韓国、、ヨーロッパにこだわらずいろんなところから学生が来ていました。

Q6 授業は何語なの?

私の学部は半分がインターナショナルなので授業の99%英語でした。ただ2-3科目だけ教授の方針でドイツ語でオファーされている科目がありました。毎年学生委員会が抗議していましたが特に変わることなく今に至っているようです。別にこの科目を取らなくても卒業できるのでドイツ語が全くしゃべれなくても特に問題はありませんでした。

Q7 どんな科目があるの?


シラバスについて言及すると、最初の1年はFundamentals of managementと、Research Methodsという基礎モジュールを履修する必要がありました。サステナビリティの基礎科目ではIntroduction to CSR, International Organization, Sustainability and Management, Corporate Strategy、リサーチ科目ではReading and Understanding Academic Articles, Quantitative Research Methodsを履修しました。

基礎科目の後は、2つのモジュール(Sustainability Management and SocioeconomicsとInternational Management and Economics)でそれぞれ18単位履修しました。Sustainability ManagementではBusiness ethics、Business and Natural Environment、Corporate Transition Toward Sustainabilityを履修し、International Management and EconomicsではCase Study Shell、International and European Environmental Law、Impact Investmentを履修しました。同時に、Advanced Research Methodも履修する必要があり、Qualitative Research Methodを履修しました。あとは選択科目を少しと、修士論文で課程は修了となりました。

面白かった科目の詳細はまた別記事にまとめたいと思います。

Q8 準備にどれぐらい時間とお金がかかったの?

2019年の年始に海外留学を決意し、ざっくりスケジュールを練りました。奨学金の応募が一年前倒しで発生するのでそれを考慮することと、必要条件になる語学力の証明をクリアすること、大学時代の成績や教授からの推薦状をスケジュールに合わせて準備する必要がありました。

ざっくりとしたスケジュール

かかった費用はILTSの受験費用28500円と、あとはオランダの大学院を見ていた際にGMATが必要だったのでそれも1度受験しました。(だいたい30000円ぐらい。)あとは郵送の費用もろもろ、面接のための交通費などがかかりました。フルタイムで仕事をしていたので、準備が大変だったのではといわれることがあるのですが、すべてを一気にこなす必要はなかったので逆に余裕をもって予定をたてられたと思います。IELTSは7.5がアベレージで取れればよかったので、ぼちぼち通勤時に試験用のPodcastを聞いたりしていました。

Q9 大学院はどうやって探したの?

いくつか自分で条件を決めて大学院を探しました。
1.サステナビリティ×金融あるいはビジネスが学べるプログラムであること。工学系の大学院では環境マネジメントやエンジニアリングという切り口でサステナビリティを勉強することもできるのですが(逆にドイツだとそっちのほうがメジャーだったりするのですが)理系ではなくビジネスを切り口にしているコースに絞って探しました。

2.英語で卒業可能であること。ドイツ語の会話については特に不安には思っていませんでしたが、試験を全部ドイツ語でやりきる自信がなかったのと、結局グローバルな話なので英語で勉強したいと思い、言葉も絞って探しました。ドイツは修士クラスになると英語で卒業できるコースが格段に増えますし、オランダもほぼ英語なので言語を絞ることによって選択肢が絞られることはありませんでした。

3.欧州圏の大学であること。サステナビリティ×金融について調べ始めた際に、欧州にはサステナブルファイナンスというものがあり、ソーシャルバンクもあり、しかもそれが40年前から存在し、、などなどいろいろ読むうちに一番進んでいるのは欧州だと確信し、オランダやドイツ、フランスなどをメインに見ていました。

4.できれば1年で修了できること。イギリスのマスターは基本一年なので、キャリアアップ的には短ければ短いほど良いかなと思い一応条件に入れていました。結局3年間過ごしたのでこれはあとから考えるとあまり関係ありませんでした。むしろ論文もあるので2年でよかったです。

5.実際に訪問してみて得た印象。2019年の5月、休暇を使ってオランダのRotterdam School of Managementのサステナビリティ修士課程、Maastricht大学のサステナブル金融課程、Hamburg大学、スイスのGeneva大学などを訪問しました。特にオープンキャンパスの日とかではありませんでしたが、事前にコンタクトをしたら在学生の方たちが快く案内をしてくれました。学生員とかもあるので機会があれば臆することなく足を運ぶのもよいのかなと思います。私の個人的な印象としては、Rotterdamはピッカピカの素晴らしい環境が整っている感じで、Genevaもすごいんですがどちらかというと国際関係、セオリーに寄る感じ、MaastrichtはLearning by doing!的な感じでした。まあこれは働いていると時間が限られるので、今はZoomでのオープンキャンパスもありますし、ちょっと学生の様子をのぞいてみるのは良いのかなと思います。

使ったプラットフォームは以下で、言語やコースを絞って探しました。あとはグーグル検索で情報を集めました。

Q11 入試で一番大変だったことは?

私の入試は特に面接などなく、すべて書類審査でした。特に重要だったのは下記3点です。
1.推薦状のスケジューリング(大学院によっては2通必要でした。)
2.語学力テストをできるだけ高いスコアで合格すること
3.説得力のあるモチベーションレターを書くこと

モチベーションレターで聞かれる質問は大学によって異なります。
構成としてはオーソドックスな質問+学部特融の質問という印象でした。オーソドックスなものは、
・なぜこの修士課程で勉強したいのか?
・過去の経験(学部での学びや、職務経験)をどのように修士での学に活かすことができるのか?どの点で貢献できるか?
・どのプログラムに対して特に興味を持っているのか?
・この修士課程に応募するにあたって、どの要素が一番大切なのか? などなどです。

そして学部特有な、トリッキーな質問は、例えば

MIBASの場合:
Reflecting on MIBAS program, to what extent and why do you think firms have a responsibility to the society and not to their shareholders only? Which aspects are of particular relevance and why?

Freiburg大学、Environmental governanceの場合:
Personal Understanding of Environmental Governance(一行で)

このようなものがありました。私は筆をなめなめ色々とこねくりまわし、ビジネス経験の長い先輩に見てもらい、最終的にネイティブチェックを経て提出しました。他の成績や語学ではあまり差がつかないので、モチベーションレターは入試においてはかなり重要かなと思います。

Q12 そもそもサステナビリティを専攻する意味は?

雑感も含みますが、サステナビリティを専攻するPros and Consを五月雨式に書き留めておきます。

Pros:
・様々な分野への入り口が開く。サステナビリティと一口に言っても、分野は多岐にわたります。
例えば、環境分野だったら。。カーボンフットプリントの計算やCO2アカウンティング、再エネやトランジションの話、生物多様性などなど
社会分野だったら。。サプライチェーンの人権・労働環境マネジメント、ジェンダーギャップ、ダイバーシティ&インクルージョンなどなど
ガバナンス分野だったら。。社内リスク管理、コーポレートガバナンス、Non-financial reportingなどなど
金融だったら。。ESG投資、インパクト投資、グリーンボンドなどなど。。
まあとにかく幅広くすべてのビジネスに密接にかかわっているのです。ので、物理学者になるよりもつぶしがききます。
・サステナビリティ関連の企業、プロジェクトについて学ぶ機会が豊富にあり、インスピレーションを得ることができる。ケーススタディなどではサステナビリティを推進して成功しているスタートアップや、エネルギー転換を成し遂げた企業を取り上げる機会などもあり、私にとっては興味深かったです。
・まわりの学生のモチベーションが高い。そもそも何か社会・環境に対して何か良いことしたいと思ってる人たちが集ってるので、学生のレベルは高いように感じました。これは大学内にとどまらず、生活面でもいろいろと気づかされることがありました。
・そもそもサステナビリティで学位を取っている人口が少ない、かつ特にEUでは特に求められる人材なので(サステナビリティに対する意識は日本の10年先を走っています)、卒業後にヨーロッパに残りたい場合もチャンスが多い。

Cons:
・自分のフォーカスをなんとなく決めないと、最終的に専門性なく、ジェネラリストで終わる。これはInterdisciplinaryな課程では結構どこでも当てはまるのかなと思いますが、仲間内で結構嘆いていたのは、すべて表面的には知っているけど、すべてそんなに深くないということ。私もスコープ1から3の違いは理解していますが、実際に計算するなどの機会はなかったので、何を自分で深めたいのかをざっくり自分で決める必要があるのかなと思います。私の場合は結果的に金融でしたが、非財務情報開示なども今はかなりホットなトピックです。
・新しい分野なので、すごい沢山文献があるわけではない。私はインパクト投資について修論を書きましたが、そもそも文献が例えばクラシック文学などに比べると格段に少なく、議論が成熟しているわけではないので、必ずしも自分が求めている論文があるわけではありませんでした。
・問題があまりにも大きい。これは別に修士をやってなくても同じなんですが、地球温暖化、縮まらない社会格差、サステナビリティに対する考えも受け止め方も政策も国によってまちまちで、一体自分のやってることが本当に何か役に立つのかと鬱々とすることはよくありました。また、「じゃあ原子力発電はどうなの?」「中国とかインドがCO2排出するのはどうするの?」など、ぴしぴしとメスを入れてくる人はどこにでもいて、いちいち落ち込んだりしていました。

Q13 卒業後の進路は?


ドイツでは基本的にインターンで職務経験を積んで、フルタイムの職に就職するというのが一般的です。私は修論を提出した後にDeloitteの非財務情報開示チームで4か月、GreenGrowthFuturaというサステナビリティファンドの企業評価をする会社で3か月インターンをしてからフルタイムのポジションに就職しました。サステナビリティ業界でも結構経験者が増えてきているので、2年以上の業務経験を求める企業のほうが多かったように記憶しています。サステナビリティに関する職自体は毎日のようにLinked inで投稿されるので問題ありませんでしたが、あまりJuniorのポジションがなかったのでそこがネックでした。私は2年半銀行員をやったあとに休職したので、職務経験が全くないわけでもありませんでしたが、日本での経験は基本的にあんまりカウントされているように感じませんでした。ほかの同級生は、こちらで就職している人が私の周りではほとんどです。就職先はサステナビリティコンサルが多いかなあと思います。Big4含め。


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