楊宏琪

本業は売れないムード歌謡歌手で副業は●●●●です…涙 お代は珈琲と煙草代に役立てられま…

楊宏琪

本業は売れないムード歌謡歌手で副業は●●●●です…涙 お代は珈琲と煙草代に役立てられます。有難うございます…

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人生(たび)の空から①

 四月を迎え、幾分か暖かくなった札幌の街。ひとりの男を待つために札幌の駅に降り立った。日陰には雪がちらほらと残る舗道を歩いていつもの喫茶店へと向かった。  店の奥、窓際に並んだふたつの大きなスピーカーからはジャズの名盤が身体を芯から揺さぶるような音量で流れ、わたしはスピーカーからほど近い席で時間つぶしの週刊誌を読み、“名店”の情報サイトを眺め、何本かの煙草を灰にして男を待った。  店内を流れるアルバムが何枚目かに差し掛かった頃に男は現れた。ダブルのスーツに身を包んでニヤつ

    • 花散る夜を惜しむよに…

       気付けば福岡・清川の艶宿(あでやど)に荷物を置いて、中洲・清川の夜を流れ始めてからもうひと月が経とうとしている。二週間に一度くらいは“恋の街”に戻って、医者と産業医に会って、また“流れ”る…  先週、ようやく勤務地である“ハバナ”に雪の中を馴れない雪道運転で戻り、あいさつ回りを済ませて、部屋の様子も見てきた。埒が明かない、先が見えない、おれはこんなにも仕事も街も愛しているし、愛されているのに……泪  すすきので“アテンド業”をして、歌って歩いて、恋に墜ちたりしなかったりし

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      • そしてひとつが終わり…

         昼下がりの狸小路の喫茶店。シチューのランチを頼んだあとに、セットのドリンクも飲み干して、わたしはホットレモンを注文した。酸味の中で少しだけ舌先に染みる甘さと暖かさ。どこの喫茶店でもホットレモンが出てくると嬉しいものだ。  小銭を数えて喫茶店への電車賃を求めていたあの頃とは比ぶこともないほどに、預金残高もあるし、珈琲チケットもある、正社員としての身分もある。けれども、正社員になってから8ヶ月と少しで何故かホームレス生活が始まって、年明けは愛媛・松山で過ごすこととなった。

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        • 超大型巡業、開始____涙

           網走を出た特急は、特急とは呼び難い速度で北見〜旭川間の原生林を走り続けていた。車窓に流れるダイヤモンドの様な煌めきは、積もり積もってはこの島に住む人々を苦しめる白い雪。美しさの裏にはいつも苦しみがあるという暗喩だろうか。  そんなことを考えながら、遅い昼飯を車内で食べ終えると、いつの間にか微睡みの中にいた。次に目を覚ますと、陽は傾き、車掌は間もなく旭川に到着することを告げた。  旭川の駅は、今まで道内で巡ってきたどの駅よりも新しく、整然としていた。降りて喫煙所を探すも、な

        人生(たび)の空から①

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        • 街耽溺記
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          ブルーナイトイン札幌①

           すすきのの夜が好きだ。北へ“流れ”てから知り合った仲間たちとスナックでしこたま歌うのも良いし、ひとり、ジャズバーで珈琲を片手に名盤たちに耳を傾けるのも悪くない。  暖かい、いささか暖かすぎて眠くなる酒場を出て北国の冷気に当たって酔いや眠気が覚めるあの感覚がたまらない…カラオケ・スナックではなく、シングル盤で昭和の名曲たちをしこたま聞かせてくれる名店もあるし。極上_______涙  酒が飲めないわたしはバーに行っても珈琲かクランベリジュースばかりだ。スナックに行けば薄くハイ

          ブルーナイトイン札幌①

          アルファでありオメガ

           わたしたちは何本も煙草を灰にしながら歌い続けた。興が乗ってくると、冒頭の溜息を真似ながら“伊勢佐木町ブルース”を歌ったりした。この店のママに定職に就けたことを報告して名刺を渡して歌を歌えることに至上の喜びを感じていたことは言うまでもない。  男は来なかった。まだ“ビジネス”が終わらないから、という理由で。ママが彼のために用意した食事は冷めて、いつの間にかわたしの胃袋の中に収まっていた。  麗しい女(ひと)を新開地の駅まで送り届けて戻ってから、ろくでなしたち3人で宴は続い

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          アルファでありオメガ

          憎みきれないろくでなし

           全く北海道の夏が涼しいだなどとどこの誰が言ったんだ?茹だるような暑さの中を祭の隊列に加わり出発するのを待っていた…祭の多い“ハバナ”でも一番大きな祭…  夏の盛りの土曜日。当然のようにサービス残業として踊りに参加した。踊り終えてしまえばすっきりしたもので以前に“ハバナ”にいた本社の他部署の50がらみのおっさんに「●●さんは独身か!それならあそこの☓☓☓☓(特浴の名前)行って来い!」などとからかわれながら煙草を吸い、踊りの前の昼ごはんとして配られたお弁当をもう一箱食べた。上

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          街耽溺への誘い:札幌周辺編①

           皆さまお仕事に学業に“耽溺”におつかれさまです。前回noteで街耽溺の記事を書いてからもう1年半以上も経ってしまったことに気付きました。予告していた紫野編や西陣編をすっとばしてハバナ(仮称)編になったわけは愛おしい街々を思いおこすうちに北海道を出たくなってしまうのが怖かったからです。  ♪どこかちがうの…この街だけは…いつもわたしにやさしくするの…♪ 雨の日曜、付き合いで訪れたお琴の発表会の後、わたしはハバナ駅にいた。“恋の町”へ向かう快速は4番、「裕次郎ホーム」と名付け

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          日本で一番悪い正月

           皆さん、明けましておめでとう。如何お過ごしだろうか?わたしはというと、近年稀に見る「悪い」正月を過ごした。これはろくでもない男のろくでもない正月の話だ。新年早々、くだらない話だが、お付き合いを願いたい。この記事を購入していただいた場合の費用は、引っ越しや次の「実地調査」に使われる予定だ。それでは、年末の話から始めよう…  大晦日、テレビでは毎年変わらない馴れ合いが流れて、大阪の南にあるとある家では、ひたすらに弛緩した時間が流れていた。  わたしはというと、30日からこの家に

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          北新地の夜は更けて

           薄明かりのテーブルの上にはデンモクとグラス、取り替えられたばかりの灰皿にシャンパンの空いたものが二本、おつまみの入った籠に、夜の女たちの名刺が幾枚かあった。 「目ぇ覚めたん?」とひとりの女の声が聞こえた。ほんの短いひととき、わたしは眠ってしまっていた様だ。わたしと同い年だという女は、問われることもなく、来月でこの仕事を上がることを語った。  三時少しまえの北新地のラウンジで、どうしてこうなってしまったかを考えていた。

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          街耽溺へのいざない①三宮篇

          はじめに  大学生の頃は、近畿地方の耽溺街に直ぐに行けてよかったと涙を流すばかりの今日この頃、やんほんち改め、見上げてごらん夜の星を(半値にしては長いですね、、)です。この度は、「街耽溺への誘い」と称して、わたしが阪神間と西陣で、それぞれ三年ずつ暮らして見つけた「街の隙間」にある「答え」について記していこうと思います。アルバムや日記を読み返してみると、今はもう閉業したお店や煙草の吸えなくなったお店もいくつもあり、時の流れと再開発の残酷さをひしひしと感じています。  「街の隙間

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