レンディングプラットフォーム:AaveとCompoundの戦略とサービスを比較

はじめに


分散型金融(DeFi)の世界は、急速に成長し、Web3.0全体のエコシステムに欠かせない存在となっています。その中でも、AaveとCompoundという二つのレンディングプラットフォームはDeFiを代表するプロトコルです。それぞれどのようなアプローチをとり、そして、それがどのような結果を生み出しているのか、その戦略を比較してみようと思います。

今回は、下記の記事を参考に、日本語要約しています。さらに詳しい解説は下記の記事を読んでください。

PANews: 蓝筹DeFi新叙事:复盘Aave与Compound基本面数据
https://www.panewslab.com/zh/articledetails/g482pmmkhzah.html

提供しているサービスの違い

1,最新バージョンの機能


AaveとCompoundの最新バージョンは、両方とも借入れや貸出しの効率性とセキュリティを高めるために様々な機能を導入しています。

AaveのV3では、高い資本効率とセキュリティの両立を目指しています。借り手の担保と貸し出し資産が同じ種類であれば、より大きな融資が可能になる「効率的モード(eMode)」、そして新しいローン資産が初めに入る安全保障の「分離モード」が導入されました。また、クロスチェーンレンディング機能の導入が進められていますが、セキュリティの観点からまだ完全には導入されていません。

一方、Compound V3では、共通プールが廃止されて、個別の暗号資産ごとに専用のプールが設けられるようになりました。これにより、それぞれのプールには固有の暗号資産だけが集まるようになり、様々な種類の暗号資産を借入の担保として使うことが可能になります。具体的には、ETHやCOMPなどの暗号資産を担保に預け、対価としてUSDCなどのステーブルコインを借りることができるといった感じです。

2,レンディングサービス


ユーザーがレンディングサービスをする際、資産の安全性と流動性は大事な要素です。AaveとCompoundは、資本量や取扱い資産の多さ、融資インセンティブなどにおいて競争しています。

現在、Aaveの資本量はCompoundの2.6倍で、レンディング分野で最大規模のプロトコルです。両プロトコルとも複数のチェーンに展開されることを目指しています。利息は資金の利用率に基づいてアルゴリズムで計算され、それぞれほとんど差はありません。

一方、リスク管理では差があります。Compoundは、各種資産ごとに独立したプールを作り、そのプール内で借入れと貸出しの取引を行います。これにより、一つのプールで問題が生じても、他のプールへの影響を最小限に抑えることができます。ただし、このアプローチには限界があり、あまりにもマーケットシェアが小さいアルトコインは取り扱いを見送ることもあります。

一方、Aaveは「ユニバーサル融資契約」という手法を採用しています。これは、多種多様なデジタル資産を一つの大きなプールに統合し、その全体で貸出しと借入れの取引を行う方法です。これにより、より多くの種類のデジタル資産を取り扱うことが可能となり、より広範な市場シェアを確保します。しかし、新しい種類の暗号資産を追加する際は、それがプール全体にリスクをもたらさないように注意深く管理する必要があります。Aaveはこのように新規トークンのリスクを軽減しつつ、より積極的に市場シェアを獲得することを目指しています。

3,その他のサービス


Aaveが開発したステーブルコインGHOは、借入率1.5%を設定し、その利子収入はすべてトレジャリーに預け入れられます。一方、Compoundはステーブルコインの発行を予定していません。

また、Aaveは現実資産(RWA)をトークンにしてそれを担保に借入ができるサービスを導入しています。現在、このようなRWAのレンディングサービスは珍しいのですが、今後大きな資本が入ってくることが期待できる領域です。

このようにAaveは多様なサービスを展開してる中で、Compoundは、やや保守的に感じます。Compoundは、レンディングプラットフォームの先駆け的な存在ですが、新しいサービスを積極的に取り入れるプロトコルではなく、Aaveの革新性に少し遅れをとっているのが実情です。

トークンについて

Aaveは2020年7月に経済モデルを刷新し、元のLENDトークンをAAVEに100:1で置き換えました。AAVEトークンの総発行量は1600万です。1300万が元のLENDに置き換えられ、300万がエコシステム保護協定により追加発行されました。AAVEはガバナンスとステーキングに使用され、ステーカーはAAVEトークンのインセンティブとプロトコル収益を受け取ることができます。

一方、CompoundのトークンCOMPは2020年6月にリリースされ、総発行量は1000万です。COMPはガバナンストークンと流動性インセンティブとして機能します。ユーザーへの割り当ては主に融資活動のインセンティブですが、2023年7月15日にコミュニティの提案により、預金と融資に参加するユーザーへのインセンティブは削減され、レンディング市場の流動性提供報酬が増加しました。

経済的視点:収入と費用

AaveとCompoundの経済的な観点からのアプローチは、それぞれ異なる結果をもたらしています。

Aaveは、先に説明した通り、プロトコルの収入源を多様化することにより、キャッシュポイントを増やし利益を上げてきました。その結果、トレジャリーの価値を増大させることに成功しています。収益性と持続可能性の高いビジネスモデルを作れていると評価できるでしょう。

一方で、Compoundの収入源はユーザーからの手数料のみです。利用者が増えることで収入を増やすことに成功してはいますが、Compoundの収入は、ガバナンストークンのインセンティブ支出をまだカバーできていないという課題に直面しています。Compoundはこの問題を解決するために、そのインセンティブモデルを変更し、COMPトークンの報酬を減らすことで、収入と支出のバランスを調整しようとしており現在も財務バランスの改善に努めています。

まとめ

2大レンディングプラットフォームの戦略的な違いを解説してみました。まとめると、Aaveは、対応するトークンを増やし、マルチチェーン展開やレンディング以外の事業にも積極的です。収益も安定しており今後も積極的な姿勢でビジネスを拡大していくでしょう。一方で、Compoundは保守的ながらも堅実に自分達の得意分野を追求しています。最大の利点は各資産を独立した分離プールで管理してることで、安全性という意味ではAave以上のサービスを提供しています。これらのレンディングプラットフォームの活動は、分散型金融の可能性を示し、更なる革新と拡大を促しています。
戦略的な違いがあれど、その目指す先は同じで、それはデジタルな金融の未来の形成と、より広範で公正な金融アクセスの実現です。AaveとCompoundは、それぞれの戦略とリソースを利用して、DeFiエコシステムの中で競争し、成長し続けることでしょう。

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