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夢見る少女の幻影

君はロマンチスト?
そんな風に聞かれて、私は即座に
いいえ。と答えた。

そうなのだ、自分は全くもってロマンチストな性分ではない。
バレエというものを職業に選び、クラシックを聴くのが好きだなんていうと、ロマンティックなものが好きにイコールで結びついても致し方ないのかもしれないけれども。

昔、ある先生が

貴女達が素晴らしいダンサーになる為に1番大切な事は、バレエを好きな気持ちと詩情よと
おっしゃっていた。

詩情。
その意味がその時の私にはよく分からなかった。

けれど、舞台の上で
初めて恋を知った10代の少女や
穢れを知らない完全無欠のプリンセス、
羽根の生えた可憐な妖精を演じるにあたって1番必要なものは、
見せかけのテクニックや独り善がりな音の取り方ではなく、詩情なのだ。
それが結局全てに説得力をもたらす。

幸せを全身で表現しながら、可憐に微笑み、
空気の様に重力を感じさせず。
だけれどもちろんテクニックを行う冷静なもう1人の自分が確かにいて。

だからふわふわと夢見る少女の様に見えていて
その実は、全くロマンチストからは掛け離れ現実を、確かな次の一手を見据えていなければと思う。

なんにせよ、
〝ただの〟夢見がちの様なふわふわした女性ではなく
柔らかな詩情を湛えた、つよく可憐な女性に
なりたいものだなと私は思う。



#文章 #エッセイ #詩情 #なりたいもののこと
#82

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