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大きな車が強いという文化

むかしドイツに住んでいたときに、車を運転していると。日本とは違う交通の文化を感じることがあった。

何かというと、乗用車よりも、大きなトラックやバスなどの走行が優先されること。

例えば、大きな道路を走っていた時に、目の前で巨大トレーラーが止まってUターンを始めたことがあった。両側6車線の広い道路を完全に塞いでエンヤコラとUターンしている、その3~4分くらいの間・・・。両車線ともに沢山の車が完全に足止めを食らっていたけれども、どの車もクラクションを鳴らすことなく、ただひたすら辛抱強く待っていた。

他にも、日常の運転風景でもよく感じることがあった。

特に路線バス。路線バスが車線変更してこようとしたら、乗用車は慌てて道を譲る。路線バスは自分が優先されて当然のように運転する。乗用車がもし路線バスの期待と違う動きをすると、クラクションやパッシングで猛烈に怒られる。

必ずしもそうでないケースもあるけれど、でも明らかに日本の常識とは違う交通文化。

こういうことは現地の人に聞くに限る。ドイツ人同僚に「なんで?」って聞いてみた。

ドイツ人同僚①
「それは、ぶつかった時にどっちの被害が大きいかって話だね。乗用車の方が当たり負けするから」

彼の説では、物理的な問題らしい。

ドイツは「マッチョな文化」なので、チカラ強いものが優れている、という感覚があるからなのか。

他の人にも聞いてみた。

ドイツ人同僚②
「おっと、路線バスとかには気を付けた方がいいよ。路面電車もそうなんだけど、公共交通機関は道路交通法で手厚く守られているからね」


「どういうこと?」

ドイツ人同僚②
「例えば、路線バスと自分の車がぶつかるとするだろ。仮に、その路線バスが割り込んできたとか飛び出してきたりとか、そのバスに落ち度があったとしても、道路交通法でバスを保護するケースが色々と定められていて、最終的には「乗用車が悪い」ってされがちなんだ。悪いことは言わないから、彼らを優先して譲った方がいいよ」

と言っていた。裏を取ったわけではないので、実際にそうなっているのかは確認できていないけれど。

でも慣れてくると、大きな車が優先されることが自然に感じてくる。というのも、大きな車の方が、加速もブレーキも車線変更も遥かに大変。そして、路線バスは多くの人を運び、トラックはみんなの荷物を運ぶなど、一般的に大きな車は公共性が高い仕事をしているわけだから。

さて、翻って日本の交通文化を考えてみると。

バスやトラックなどプロが運転している大きな車は、乗用車に迷惑を掛けないように気を使っている運転手が多いなあ、立派だなぁ、と思う。

ただ、ドイツの交通文化を経験すると、本来は日本でもそういった公共性の高い大きな車というものが「優先されて当然」なのかも知れない、と感じる面もある。

ということで、交通についても各国それぞれに文化として根付いている「一般常識」のようなものがあるけれど、自国の交通文化が絶対に正しいというわけではなく、より良い交通文化というものを考えてみるのもおもしろいかも知れない。

by 世界の人に聞いてみた

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