見出し画像

誰かの凸凹【読書感想文:朝井リョウ 少女は卒業しない⑵】

前回の投稿はこちら↓

本を一冊読み終えた。
『少女は卒業しない』という短編集だ。今回は二作目、「屋上は青」の感想文を書こうと思う。


「メイク崩したくないなあ」そう思った。


私の母は、自分が異端であることや人と変わっていることを自負している人間だ。
誰の目も気にせず、好きなことややりたいこと、大切な人の為に必死に動くことが出来ている。
だから、私がどんな選択をしようと、どんな物が好きだろうと、それを否定することは無かった。

でもそれは母が昔から強い人間だからではなくて、様々な経験をしてきたからなのだろうと思う。娘の私が知らないような修羅場を何度も乗り越えて来たのだろう。私は母から、全てを聞くような関係性ではない。


仲間外れやいじめというのは、自分が普通であり皆と一歩の狂いも無く動くことが出来るという証明だと思う。皆で仲良く前に進みましょうと、言われていなくても言われているような気がして前に進み、足が速い人、遅い人、歩かない人を「あいつはおかしい」と決めつける。そして自分達とは違うからと馬鹿にする時間だけが、普通という呪縛から抜けられる至福の時なんだと思う。

でも、おかしいあいつが少しだけ羨ましいと思う人もいる。いや、少しではなく、自分が出来ないことをやってしまうあいつになりたいと、ロールモデルにしようと思う人だっていると思う。でも自分はここから抜けられるほど秀でた物がないと仕方なく普通に戻り、普通じゃないやつを馬鹿にする。至福の時に戻るのだ。


自分の考えを通すというのは、子どもでも大人でも難しいらしい。赤ちゃんでさえ、言うことを聞かず泣いていてベランダに投げ出される事件だってある。人は、特に日本人は、自分の考えをはっきり伝えることをヨシとしていない。

だから、多くの人間が暮らせる。凸凹な性格の中、凸凹を極限まですり減らして生きている。まあるい地球はそうやって出来上がっている。
でもヤスリでは落ちきらない凸の部分を認めてくれる人がどこかにいると常に願っている。自分の凸を好きでいてくれ、私の凹で貴方を包むから。

そうやって、世界は回っている。

私も含めて、全員がどこかで凸凹を所有しているから、誰かの凸凹を認められる。そんな性格とても素敵だね、それが貴方なんだねと言える心を持つ人間になりたい。
実際、普通から外れている私や、近くにいる母がいるから、もう目標には達している気がするけど、私にはまだまだ経験が足りず、こうして文章に起しても上手くいかないことだってある。

この感想文が嘘にならないように、私は誰かの凸凹が削られてしまう前に「私は好きだな」と言えるような素敵な人になりたい。

この記事が参加している募集

スキしてみて

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?