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【建築家の頭の断面図】アロマを空間デザインに落とし込むには?

ひょんなことから、アロマを勉強する機会をいただいた。
今まで香りなどの「嗅覚系」には触れてこなかった僕だったが、今では毎日事務所でアロマを使う「アロマ男子」になっている。

(ちなみにこの方が僕にアロマの良さを教えてくれました。)

僕が思うに、アロマはホントに奥が深い。「無くても生活できるが、有れば良いかなというもの」、「目には見えないもの」にお金を掛けることは、モノづくりで発展した日本人には「贅沢品」という位置付けになるかもしれないが、近年それがちょっとずつだが変わり始めたように感じる。

「香り」は鼻から入り、電気信号となって脳に届き、ホルモン分泌や自律神経の働きに作用する。嗅覚は他の感覚(味覚や触覚など)に比べて圧倒的に早く伝わるので、直感的に良し悪しがわかるものだ。

この「圧倒的早さの伝達力」は空間デザインにおいて、何と似ているかというと「スイッチ」じゃないかなぁって。

スイッチを入れたら電気がつく、機器が動くなど、空間自体や何かの行為の「変化」をもたらすものと位置付けると、自分の意思とは関係なく突然入るスイッチとして「香り」が存在するのかなぁって思う。

この「突然」がポイントで、良い香りの場合、人は笑顔にになり、いわゆる「臭い」場合はしかめっ面になる。

サプライズを起こすために「突然」をデザインする。
これは香りのデザインとしては有効じゃないかなぁって。

では空間はどう寄り添ったらよいか。

「香り」のみでデザインを完結させる場合は単純に「ここで見えないスイッチをいれたい!」というポイントにアロマを設置すれば良いと思うが、店舗やオフィスなどで各部屋でイメージを変えたい時、例えば明るい雰囲気と暗い雰囲気を演出したい時などに、インテリアデザインと合わせて「香り」を建築ディテールとして加えればデザイナーの意図を最大限発揮するものになるんじゃないかなぁって。

もう一つ空間デザインにおける「香り」を使うポイントは、「足を止めさせる装置」である。
良い香りを感じた時、人は「ハッ」と驚き、一瞬身体が硬直する。例えば新作アイテムや推しの商品などを手に取って欲しい時、そのポイントにアロマを設置すると足を止める確率が上がるだろう。

ここで「香り:アロマ」をまとめると

  • 眼には見えないスイッチの役割

  • 足を止めさせる装置

  • 空間デザインの意図を最大限発揮する建築ディテール

ということじゃないかなぁって。

深堀すると単純に良い香りを楽しむためのものではなく、「人の動きを誘導する装置」と位置づけできると思う。

いままで建築設計において「Border=境界線」にこだわってきたけど、この「香り」を建築ディテールとして加えてあげるとより良い空気感が演出できるんじゃないかなぁ。

ただ注意するところは、必ず体験を重視する場所に計画するということだ。
要は実際に足を運ばないと香りは伝わらない。SNSやweb上の写真や動画では嗅覚にささらない。

じゃあどうしたら足を運んでもらえるだろうか?

今のところの僕の答えは「インテリアデザイン」。もちろん建築自体のデザインも重要だが、屋外や人通りが多い空間では「香り」がその場にとどまらない。重要なのはアロマを置く「部屋」だと思う。

この考えを基に、総合的に考えると

  1. インパクトのあるファサード(外観)で建築物に集客

  2. 風の流れが少ない「部屋」にインテリアデザインで誘導

  3. 推しの商品などに「香り」でアプローチ

店舗、施設、展示会場など大小さまざまな建築物に対して有効なアプローチではないだろうか・・・と思う。(あくまで香りを軸にしたデザインアプローチ)

CURIOUS design workersの過去の事例を使って、もし「香り」を付加したら、今以上のデザイン効果を発揮しそうなプロジェクトをお話すると・・・


同一空間で二つの用途をインテリアで表現

Plus Kombucha

限られた同一空間で2つの用途を造りたい場合、境界線をはっきり分ける。例えばここにそれぞれ違う「香り」を入れたら・・・

トリックアートにより「過去」「未来」「現在」を表現

crossover(オフィス)

ある一点に立った時だけ、空間の境界線がはっきりする
築100年以上の古ビルの構造部を「過去」(左)、新しい仕上げを「未来」(右)、境界線がはっきり見える1点「現在」と位置付けた。過去の経験と未来への情熱を「現在」というある1点で冷静に分析するこの位置に、頭をクールダウンさせる「香り」を入れたら・・・

トリックアートによるストップポイントで会話の糸口をつくる

この文字は合成ではありません、トリックアートです(ROOM NAGOYA)

新規顧客が素通りしがちなアパレルショップにて、強制的に立ち止まらせるためのトリックアート。ここに立った瞬間がスタッフが話しかけるタイミング。そこに緊張をほぐすような「香り」を設置したら・・・
(トリックアートどうなってるの?と思う方はこちらの動画へ)

ちょっと怖そうからのギャップ

cdwオフィス入口

扉もない薄暗い隙間の入口から・・・

cdwオフィス内装

カラフルなインテリア空間が現れ、そこに気持ちの高揚を促進する「香り」を入れたら・・・

このように、インテリアデザインに香りを入れることで、目には見えないかもしれないけど、伝えたいことをより伝えることができる。

なんかアロマってインテリアの本質を突いてる気がする。
設計者、インテリアデザイナーの皆さんも「香り:アロマ」を「建築的ディテール」として位置付け、この武器を活かすと空間体験をさらにドライブできると思うので、参考にしてもらえたらうれしい。

ちなみに僕が一番好きで愛用しているアロマは
こちらの「CRESCENT MOON」


僕はアロマと空間デザインを合わせることはできるが、アロマ自体のことを教えるスキルがないので、アロマを勉強したい方はこういう協会がやってるスクールに行くといいかも

「無くても良いが、有れば暮らしが豊かになる」
それが僕の香り・アロマの位置付けかなぁ

暮らしが豊かになれば、心身ともに安定して人にやさしくなれる。
大きなストレスを取り除くことは原因を解決するしかないが、日々の小さなストレスを和らげることが、愉しさにつながるのではないだろうか・・・

昨日久しぶりの会食で、摂生した日々を破壊するくらいの暴飲暴食、深夜2時のラーメン+チャーハン炭水化物パラダイスで、目覚めと共に激しく後悔したのち、ふとアロマの香りで心穏やかになった時に考えたお話。

今回はここまで。
ありがとうございました。

紹介した「Plus Kombucha」「ROOM NAGOYA」の「Border=境界線」を実際に見てみたい方は下記の店舗へ行ってみてください。


建築設計事務所「CURIOUS design workers」ではインテリアにこだわった様々なworksをUPしております。住宅、リノベ、店舗、中規模建築問わず事例が見れますので、ご興味があれば下記HPよりご覧ください。

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