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【番外☕】そばにいる紫

主のいなくなった家
そして家さえ影を失ったブラックシートを見て
わたしはいつもため息を落とす

ああ
あの空間も陰影も手ざわりも
もうそこにはないのだなと
その度毎に理解する

形を失ったものは二度と元に戻らないのだ

だけどそこには
さいかちの風と共に
彼ののこしたきらめきが漂う

さいかちがたくわえたサルノコシカケは
用が済むと同時に朽ち果てた
代わりに根元には
キランソウの鮮やかな紫
わたしの健康を願ってくれているの
腫れ物に効くという薬効は
明日の長男の手術を成功に導いてくれるの
追憶
――いいえわたしの愛は現在進行形
あなたを待っている
――いいえわたしは今もあなたと共にいます

目の覚めるような鮮やかな紫が
心に差す
気がつけば そこここに

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ブラックシートに覆われた彼の家の跡地。唯一残されたさいかちの木の根元には雑草が茂り、春の花が咲き誇る。そこに昨日突然、鮮やかな紫が現れた。たまに見かける雑草だけれど、調べてみると「キランソウ」という薬草だった。
 花言葉:健康をあなたに、追憶の日々、あなたを待っています
 薬効:のどの痛み、咳、腹痛、虫刺され、腫れ物

その直後に、車で約50分離れた彼のお墓に行くと、その足元にもキランソウが咲いていた。

お墓に居たほうの子

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