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特級呪物? 老舗会社の営業資料

私が以前勤めていた老舗会社のことです。
大正時代から続くその老舗会社では、経営陣はともかく現場はとにかく変化を嫌う習慣を持っていました。
私が最初に配属された営業部の営業資料には「出島で貿易をしていたポルトガル人が…」と書かれていました。小学校の教科書を思い出していただきたいのですが、出島で貿易していたのはオランダと中国だけです。ポルトガルはそこにいないはずです。
おそらく戦国時代と江戸時代の情報がごっちゃになっていると思うのですが、最初にこの営業資料を書いたのが誰なのかはもう分かりませんし、おそらく結構な年月でこのまま使用されていたことになります。
かなり些細なことだと思うのですが、まるでダムのヒビを最初に見つけしまった人状態の私は、先輩に相談しても無視をされ、しかし間違った(しかも小学生レベルの)情報を対外に使うのはどうしても我慢ならなかったので、私は意を決して共有フォルダの営業資料の該当部分をしれっと修正しました。
しかし後日見返すと、「出島のオランダと中国」と書き換えたはずの営業資料が「出島のポルトガル」に戻っているのです。最初は保存ミスかと思ったのですが、何度修正しても「出島のオランダと中国」は「出島のポルトガル」に戻されます。
変化を徹底的に嫌うこの会社の誰かが、私が修正するたびに律儀に元に戻しているのです。
その後私はその会社を辞めましたが、もしかすると今も「出島のポルトガル」になっているかもしれません。

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