肩に乗ってる妖怪

中学のときの美術の先生の話で、印象に残っているものがある。

授業は、版画で妖怪を描くというテーマだった。そのときの余談として、先生は「昔は肩が凝るのは妖怪が肩に乗っているからだと思われていたそうだ」という話をしていた。

なんでも、肩に乗っている妖怪を払い除けるために、腕を肩からぐるぐる回すという対処法がとられていたようだ。腕をぐるぐるまわすと、肩に乗っていた妖怪がいなくなって、肩の凝りが取れるということらしい。

たしかに、腕を肩からぐるぐる回すと肩の凝りは良くなるが、それは血行が良くなるからであって、妖怪がいなくなるからではない。
「対処法は同じだけど、昔は理由がわからないから妖怪のせいにしていたらしい。面白いよね。」といった感じで、先生の話は括られていた。

上記の妖怪の話は、
Aをすると→Bになるので→Cになる
といった因果関係の中で、Bだけ科学的に解明されておらず、そのため、理由がこじつけられていたケースだと言えるだろう。

A:腕をぐるぐる回す
B:妖怪がいなくなる
C:肩凝りが治る
の中で、A→Cはわかっていたが、それだけでは釈然としなかったのか、AとCの間に、理由となるB(妖怪)を無理矢理作ったのだ。

おそらく正解は、
A:腕をぐるぐる回す
B:血行が良くなる
C:肩凝りが治る
である。

このようなことは、科学が発展した今でもまだまだある。

人々が運気を上げるために、風水というものがあるが、あれもこの手の話だと思う。
例えば、
A:毎日朝に窓を開けると
B:風水的に良いので
C:運気が良くなる
といったように風水では説明される。

実際のところ、Bは「換気ができてウイルスに空気感染しにくくなる」とか、「朝の光を浴びることでセロトニンが出る」とか、そういった理由があって、運気が良くなる(健康に過ごせる)のだろう。

しかし現代でも、説明が面倒なのか、はたまたビジネス的な理由からかはわからないが、Bは「風水」というややスピリチュアルな印象の言葉で片付けられている。

ただ、覚えておきたいのは、Bが間違っているからと言って、A→Cが間違っているかは別問題だということだ。
例に挙げた風水は、統計学だとも言われており、A→Cについてはある程度統計的に正しいらしい。

そう考えると、A→Cが合っているのであれば、Bをどう考えるかは個人の自由だ。だから私は、けっこう風水を参考にしている。

肩凝りの話も、「血行を良くしよう」という気持ちで腕を回すより、「妖怪を追い払おう」と思って腕を振り回したほうが、楽しいかもしれない。
なんといっても、私がこの話を覚えているのも、"妖怪"というワードのおかげである。血行がどうこう言われるより、妖怪のせいだと言われたほうが印象に残る。

たまには間違っていても夢のある理由を信じてみるのもいいなと思う。ただ、あまり真剣に信じすぎて周りを巻き込むと、ヤバい奴だと思われるので注意が必要だが。

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