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研究開発組織と呼ばれがちなAIチームに33歳でビジネス職から異動した話

株式会社GA technologies、AI Strategy Center(以下AISC)所属の白土です。AISCはIRなどで「自社内研究開発組織」と呼ばれている組織です。

私は現在33歳なのですが、昨年までプロダクト企画やマーケティングを行う、いわゆる「ビジネス職」の部署にいました。大学も文系で、趣味や副業でAI領域の勉強をしていた、ということもありません。そんな私が「Will Challenge」という社員が自ら希望して部署異動できる制度を使い、今年の1月からAISCに所属しています。

「えっ、そんな異動を会社は認めてくれるの?」「33歳で急に研究開発組織に行ってできることなんてあるの?」と思いませんか? 実際に私もちょっと思っていました。結論を言うと、快く異動させてもらえたし、できることもめちゃくちゃありました

これはGA technologiesという会社の文化と、AISCが「研究開発だけをやっている組織ではない」という点が大きいと感じたので、異動の経験を通してそこらへんのところをお伝えできればと思います。

リスキリングなんて言葉を耳にする機会も増え、職種を問わずAIの勉強をしたいと考えている方も少なくないと思います。ビジネス職でAIに興味のある方や、研究職でビジネス職との違いについて興味がある方には(n=1のサンプルですが)少しは何かの参考になるかもしれません。

ちなみに私はリスキリングと聞くと添付の画像のようなリスの姿を思い浮かべます。

StableDiffusionで生成したキリングな雰囲気のリス


1.なぜ異動したいと考えたのか?


最初に私のキャリアを簡単に説明するとこんな感じです↓↓↓

  • 2013年にECサイトを運営する中小企業に入社。マーケティング全般をこなす。HTMLメールの作成やデータ集計を行っているうちにエンジニアリングにも興味を持ち2年後にWEB開発チームに異動する。

  • 2017年にGA technologiesに入社。1年程度社内ツールの開発を行った後にマーケティングチームに異動。その後はデータ分析、プロダクト企画をメインで行う。

なので、研究をしたことはないですが開発経験はありました。とはいえ10年の社会人経験の中で2年くらいなので、ちょっとです。

異動のきっかけとしては「当時の部署に不満があった」とか「キャリアに不安を感じた」とかではないです。手前味噌ですが、2021年に全社表彰されたりと、ビジネス職としても活躍している方でした。

ただ、関わるプロジェクトの規模が大きくなるにつれて、データ活用系の企画で「データ分析やAIなどの自分が使う技術に対して漠然とした知識しかないこと」に違和感を覚えるようになりました。この感覚は大部分の人は感じないか、あるいは感じても無視できるものな気がします。

私も「どうして電話は繋がるのか?」なんて気にせず携帯を使いますし、最近では「文系AI人材」という言葉もあるように、技術的に完璧な知識がなくても事業や企画を行うことはできます。実際に私には画像生成AIの知識はないですが、先ほどのリスの画像も簡単に出力できました。それなのに私の中で「改めてデータやAIの勉強をしたい」という欲は大きくなっていきました。なぜ?

ぜんぜん良い例えじゃないですが「全身麻酔」の話をします。幾つか仮説はあるようですが「どういう原理で全身麻酔が人間の意識を奪っているのか?」は未だに解明されていないらしいです。(※ちょっとググっただけの知識なので間違っているかも)それでもお医者さんは過去の経験の蓄積によって麻酔を使うことができます。

でも、もし仮に怪獣が現れて、その怪獣の手術をするとなったとき、お医者さんも全身麻酔が使えるかはわからないと思うんです。だけど、もし原理がわかっていれば、使えるかどうか事前に十分な検証ができるはずです。そうすれば、親知らずで苦しんでいる怪獣を救えるんじゃないか、と。

つまり何が言いたいのかというと「不動産業界でデータやAIを活用するのは新しい試みなので、他社の事例から結果を学ぶだけでは不十分で、しっかり基礎となる知識があった方が良いと感じた」という話です。
(※GA technologiesは不動産領域を中心にDXを推進している会社です)

2.異動はどうやって実現したのか?


今回、私は「Will Challenge」という制度を使いました。従業員のキャリアをサポートするための福利厚生の一つです。

会社からの説明によると、具体的には以下のような制度で、半年に一度全社に対して募集中のポジション一覧と募集開始の通知が来ます。

GA Will Challengeは自らの意思で社内の違う部署への異動を申し出る制度のことです。もちろん、スキルセットやフィット感の確認をする選考(書類審査/面談選考)がございますが、これまでに培ってきた経験を活かし、さらなるキャリアアップを望む皆さんの意思を最大限支援するものです

この制度のことは以前から知っていたので、AISCからデータサイエンティストの募集があるのを見て、昨年の11月に募集しました。タイミング的に前の部署に新しく優秀な方も増えて、今ならチームにあまり迷惑をかけずにチャレンジできると感じたのも応募した理由の一つでした。

実際に使ってみて良いと感じたのは、応募先の部署からOKをもらうまで異動前の上長にも秘密で選考を進めてくれる点でした。仮に見送りとなった場合でも気まずくならないので気軽にチャレンジできるのは、変化を怖がらないGA technologiesらしい制度だと思います。(私の場合は選考途中で上長にそれとなく相談はしていましたが)

募集後も人事、元々の部署、新しい部署、みんな快く受け入れてくれた印象でした。これは少し意外で、私は前の部署でマネージャーでしたし、前述のように活躍(手前味噌)もしていました。

きっと会社としても直近の成果を求めるだけなら、私を前の部署のままにした方が簡単で確実だったと思います。私が今からAIの勉強をして成果を出すのには時間がかかりますし、確実でもありません。今回の異動を受け入れてもらえたのは、会社としても将来的なデータ・AI戦略に対して投資をしてくれたのではないかと感じました。(※個人の感想です)

結果として私の異動は今年の1月に実現し、兼務で引き継ぎをしながら、5月からはAISCに専任になりました。(実際は3月くらいからはほぼAISCの業務だけやっていました)

3.異動した後の業務内容


AISCに異動して最初に私がやったのは「勉強」でした。データサイエンティストチームの新卒が入社後にやるのと同じブートキャンプを3ヶ月かけてやらせてもらいました。内容としては統計学、機械学習、そして不動産業界で必要な地理データ活用の基礎を幅広く学ぶもので、ずっと曖昧だった領域の基礎を固めることができました。

またブートキャンプを通してPython(データ分析がめっちゃ得意なプログミング言語)の使い方を学べたので、これまでは扱いにくかった社内のデータも扱えるようになりました。データ量が多くて、時系列の処理が必要なログ系のデータとかですね。

そして、Pythonの練習のために行った分析が新しいプロジェクトのきっかけとなった、という出来事がありました。詳細は省きますが、全社的にも割とインパクトのありそうな企画で、急いで要件定義と開発をして、6月の頭に最初の機能をリリースしました。

ここで役立ったのがビジネス職で身につけたスキルでした。勉強したばかりの私ができたことなので、技術的には他の方にもできたことです。しかし私にはそのデータがどのような意味を持ち、どんな場面で使えそうか、という知見に対して一日の長がありました。

もう一つ、今回のプロジェクトは長期的には研究的な要素も持っていますが、短期的には会社として利益を上げるためのものでした。それでも、データ分析・要件定義・開発の全てをスピーディーにAISCのリソースで行うことができました。

「研究開発組織でそんなことできるの?」と思うかもしれません。私も研究開発と聞くと、事業で成果を出すまでに結構なリードタイムが必要なイメージでした。だけど、できます。AISCは「先進技術により事業に貢献する」ことを特に意識している組織だからです。サイトにも一番最初に書いてあります。

そして「事業に貢献しながら先進技術を生み出す組織」でもあると私は感じました。研究には「実証」というステップが必要です。それを事業に貢献しながらスピーディーに行える組織、という感じですね。だからこそ私は「先進技術を用いて事業に貢献するにはどうしたら良いか」という視点でビジネス職のスキルを活かすことができました。

つまり、AISCは「研究開発と事業貢献を行っている組織」なのですが、それだと長くて呼びにくいから「研究開発組織」と呼んでいるんでしょうね。ピアノの正式名称は「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(小さい音も大きい音も出せるチェンバロ)」だけど、長いから「ピアノ(小さい音)」とだけ呼ばれるようになったのと同じ現象だと思います。

4.AISCに異動して得たもの


最後に、私が今回の異動で得たものを整理すると、こんな感じです。

  1. データやAIに関する知識

  2. 学び続けることに対するモチベーション

  3. プロジェクト推進における研究的な視点

この中で予想外だったのが3です。まだ完全に身につけたわけではないので上手く言語化できないのですが、ソフトスキルに分類されるものだと思います。

AISCに異動して論文や技術書を読む機会が増えたことで、「このプロジェクトを論文として書くにはこの要素が抜けているな」みたいなことを考えるようになりました。それを整理していくと、最終的には頭の中でぴたりとパズルが嵌るような感覚に辿り着きます。(ロジカルシンキングに要素が一つ増えた感じ?)

これは将来的に論文を出すためだけではなく、再現性を担保するために事業的にも重要なものだと思います。もちろん、短期的には時間がかかる作業なので全ての企画で行う必要はありませんが、いずれはこの視点が大きな成果に繋がる気がしています。

以上、私が異動してこれまでに感じたことでした。まだ半年なので、今後も得るもの・発見は増えていくはずです。私から見て、AISCは本当にユニークで面白い組織なので、そこについては機会があればいずれまた書きたいと思います。(特に今回触れられなかった研究開発の面とか)

もしGA technologiesやAISCに少しでも興味を持たれた方がいたら、是非こちらをご覧ください。


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