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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊷

「はい、お電話ありがとうございます」

 
数日後、教えて頂いたコインパーキングに車を停めて、近くのビルに入っていきました。
入り口の段差にはスロープがかけてあり、エレベーターに乗って一人で現場までたどり着くことができました。
ドアを開けると一段段差がありましたが、そこにもスロープがありました
担当者の方のお話では、数か月後にほかの場所で新しくコールセンターを
オープン予定で、オペレーターを大量募集しているとのこと、
新しいコールセンターはバリアフリーのうえ、駐車場も車いす用に建物の前に用意するとのことでした。
「大丈夫そうですね」
「よろしくお願いいたします」
採用していただけました。

普通の主婦のパートが始まりました
初めてのオペレーター、かっこいいヘッドレストをつけて
制服ではなく、おそろいのエプロンが支給されました
「はい、お電話ありがとうございます。○○運輸コールセンター○○でございます」
ほかのパートさんたちと一緒に研修を受け、同じ条件で
新しい仕事に挑戦です

新しくオープンしたコールセンターは、実家や大学病院へ向かう途中の
銀杏並木が続く工業団地の中にありました。
大きな配送センターの一角にある建物の3階です。
車いすでも何の障害も感じず働ける環境に整備されていました。
部屋の壁には、前日のオペレーター別の受信件数が貼りだされています。
ある朝ふと見ると、一番上に私の名前が書いてありました。
「うれしい」
オペレーターの仕事は楽しくて、車いすは全く関係ありません
天職だと思っていました。
(前職の経理事務も天職と思っていましたが)
 
ところが1年後、契約更新の時、条件に土日出勤が追加され、
小さなお子さんがいるパートさんは次々と辞められていきました。
私も土日出勤は考えられなかったので、次の職場を探さなければなりませんでした。
責任者の方が
「○○さんは土日出勤はしなくてもいいですから仕事を続けてください」
と言ってくださいましたが、
「私も土日出勤はできないので辞めさせていただきます」
と契約は更新しませんでした
とは言ったものの
「どうしよう」
またまた、就活です

以前勤めていた施設のM所長に
「じつは…」と状況をお話して、
「もし、出来れば働かせていただけませんか」とお願いしてみました
一年前、コールセンターの仕事が決まり、初出勤の前日に
M所長からお電話をいただき、お仕事のお誘いをいただいていたのでした。
その時お断りしたにもかかわらず、私の勝手な申し出を
M所長は前向きに考えてくださり、
そして、働かせていただくことになりました。
天職と思ったコールセンターの仕事は1年で終わり
2004年春
長女が中学入学とともにパートで福祉施設の経理事務に復職です。
家計を助けて頂け本当にほっとしました。
感謝です。
 

 


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