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最終日

 あともう少しで夏休みが終わる。あともう少しで新学期を迎える。「今年の夏休みは、どうだったの?楽しかったの?」隣で黄昏れる友人に声を掛けられた。打ち上げ花火の轟く音。微かな火薬の匂い。四年ぶりの夏祭り。幻想的に輝く騒ぐ夜店。どれもこれも色彩豊かに宝石の様に輝く。煌めく。忘れられない、忘れたくない思い出の一粒。大切に大切に宝箱の中に入れそっと鍵を掛ける。いつでも取り出せるように。誰かにいじられないように。貶されないように。笑われないように。もう一人ぼっちで涙を流したくないから。夏休みのことは誰にも隣の友人にも教えない。
 「夏休み楽しかったの?」のアンサーには素っ気なく「楽しかったよ」。そして、すぐに話のテーマを変える。さりげなく。「新学期が面倒臭い。憂うつ」家での居場所がないのに新学期に居場所はある?
 願わくば今年の夏休みが終わらないで。叶いっこないのに黄昏の空に願う。

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