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りんごの木箱の思い出は、

りんご箱の思い出は、
幼いころの懐かしい香り。

りんごの木箱は貨物列車に運ばれて、遠い青森から訪ねて来ます。
りんごの木箱のりんごさん、カタコト、カタコトと揺られては、のこぎりの屑の布団に包まり、わたしのお家まで来るのです。今か、今かと揺られては、故郷の祖父母の想いを乗せて、父に会うのを楽しみに、待ち焦がれて赤く頬を染めました。

わたしの家にたどり着いたりんごの木箱、箱を眺める父さんが細く優しく笑っています。

のこぎり屑のお布団を優しく分けてやりますと、可愛い顔した甘い香りのりんごさん、ようこそ我が家に来てくれました。わたしの隣の父さんも可愛いりんごを手にとって、赤い頬に想いを寄せて、大きく深く息をして、りんごを見つめているのです。
 
わたしの父さんは若い頃、集団列車に揺られては、故郷の青森から上野まで、集団就職で上京したと話しをしてくれました。

三男坊の父さんは、家業を継ぐことは出来なくて、家を出るしかなかったの?何だか居場所がなかったの?
それとも、周りに何もない畑ばかりの集落の淋しい田舎から飛び出したかったのか?

父は「東京で一旗あげたい」と思って頑張っていたのでしょう。


りんごの木箱のりんごさんがすっかり綺麗になくなると父さんは、空になったりんごの木箱に、今度はこちらの地元のお菓子やら、缶詰やらを詰めました。おじいちゃんおばあちゃんに似合いそうな洋服やら履き物やらも沢山詰めて贈るのです。
わたしは隣で見てますと、父さんも荷物と一緒に木箱に入って田舎に帰ってしまいそうな程、りんごの木箱に父さんの想いもいっぱいに詰めて贈っているのです。

大きい木箱のりんご箱は、青森と上野を行き来する通い箱。
父さんと父さんの故郷を行ったり来たりと繋ぎます。





最後までお読みいただきありがとうございました。
今は、父の思い出をりんごの木箱のお題に籠めました。

今回の企画のお題『りんご箱』では、甘いりんごの香りが染みたりんごの木箱が届いた時の父の喜ぶ顔を想い出すきっかけとなりました。素敵な企画とお題、ありがとうございます。
小牧部長様、感謝申し上げます。




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