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中空構造日本の深層

読書のきっかけはYouTubeから。
ニコラスくんの動画は面白く深みがあって、言葉や考え方も難しいけど、ふとした時に過去の動画を見返してピタっと理解できることがあったりする。
最近また少しずつ動画が上がるようになって嬉しいです。

この中で紹介されていたのが「中空構造日本の深層」という本。日本を“母性原理”の国として語っているが、それについて書かれているということで読んでみることに。

正直、全体を読んだ感想としては
ノートを取りながら興味深くじっくり読み進める章もあれば、集中力が続かずに何度も閉じるような章があったりと、なかなかムラを感じる。
それもそのはずで、本著は著者が過去に発表した作品をいくつかまとめたもののようだった。


若者の漫画から読み解く青年の感性についての章があったのだが、そこで語られる漫画がことごとく古すぎて全然わからなかった。(つげ義春、せめてねじ式くらいは読んでおかないといけないかもなぁ)

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しかし、日本のことを考える上で「中空構造」という概念はかなり適切な表現のように感じている。

有名なアマテラス、ツクヨミ、スサノヲといった三貴子の神が古事記には出てくるが、中でもツクヨミに関する物語はほとんど現れないことに触れる。
その昔太陰暦を用いていた日本人にとって、月はとっても象徴的なものだったはずで、太陽と対を成す存在としていろいろと語られてもいいはずだが、古事記の中、三貴子で語られるのは太陽神であるアマテラスと、その弟で荒くれ者のスサノヲのみである。

また、全ての始まりである造化三神(タカミムスヒ、アメノミナカヌシ、カミムスヒ)におけるアメノミナカヌシも、
ニニギとコノハナサクヤヒメの子であり、海幸山幸でも有名なホデリ、ホヲリ、そしてもう一人のホスセリノミコトも。
さまざまな場面で描かれる古事記の三神において、語られることのない神さまが存在しているのである。

古事記に出てくる三神、重要そうで働きが語られない神さまが存在する

このことから、
日本神話の中心は無であり空である
といった日本人の宗教、思想、社会構造などのプロトタイプとなっている考えを読み取ることができる。

正・反・合という、西洋的な弁証法の論理ではなく、
正と反が巧妙な対立と融和を繰り返しながら、あくまで「合」に達することがなく、あくまでも正と反の変化が続いていくだけ。そんな円環的な論理構造。
これを日本的な中空巡回形式だと著者は語っている。

イメージしてみると西洋的な弁証法が直線的なのに対し、日本は円環的といった感じ。
国旗の日の丸からしても、こうして中心に円を置くというのは日本らしさの象徴なのかもしれない。

媚態、意気地、諦念、この三すくみをぐるぐるしているのが「いき」であると説いた九鬼修造の「いき」の構造とも通ずるものがあるように思う。

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空気を読む国民性だったり、察する文化だったり、私たちがなんとなく感じている「日本人らしさ」の正体が、書かれているような本でした。

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