安倍2018

【入管法案 衆議院11月26日】 山尾志桜里議員の質疑と安倍総理の答弁 後半部分書き起こし

先日、11月27日に入管法案はわずか17時間という審議時間で衆議院を通過しましたが(強行採決)、これから参議院で審議するにあたって、立憲民主党・山尾志桜里議員が大事なことを言っており、逆に政府側は何も答えられず、この法案がいかに拙速であり、また国会を軽視しているかが表れていると思いますので、ここに文字起こししておきたいと思います。

(なお文字数が少し多くなってしまったので、時間のない方は安倍総理山下大臣の答弁はナナメ読みでもよいかと思います。実際、意味のあることをほとんど喋っておりませんので)

 <2018年11月26日 衆議院予算委員会>

山尾志桜里議員(以下、山尾):4つ目、お伺いいたします。拡大する労働の対象です。総理は、単純労働には拡大しないという単純労働って何でしょうと、こういう私の質問に対して、
「特段の技能、技術、知識または経験を必要としない労働に従事する活動を行う外国人を受け入れる政策については、これを取ることは考えておりません」
この議事録2ページ目の上段左側です。総理にお伺いいたします。これ大事なことなので。特段の技術も技能も知識も経験もいらない仕事ってどういう仕事ですか。
(山下法務大臣が答弁しようとして紛糾)

安倍総理大臣(以下、安倍):ただ今ですね、どんなものですかということについてお伺いでございましたからこれは所管する法務大臣が適当だろうという判断をですね、委員長がされるのは私は当然のことであろうとこう思うところでございます。
(場内ざわつく)
野田聖子委員長(以下、委員長):ご静粛にお願いしますね。)
安倍:・・・あの中々ですね、冷静な議論ができないのでちょっと委員長少し注意していただけますか。
委員長:ちょっと答弁を聞きましょう、ご静粛にお願いします)
安倍:これまで政府が示して来た外国人労働者の受け入れの基本方針は、専門的、技術的分野の外国人労働者は積極的に受け入れ、いわゆる単純労働者の受け入れについては国民のコンセンサスを踏まえつつ十分慎重に対応することが不可欠というものであり、引き続き政府としては特段の技術、技能、知識または経験を必要としない労働に従事する活動を行う外国人を受け入れる政策については、これを取ることは考えていません。
(場内ざわつく)
今回の新たな受け入れ制度はあくまで専門的、技術的分野を拡充し一定の専門性、技能を有する外国人労働者を受け入れようとするものであり従来の基本方針を変更するものではなく、ましてやこれは委員が今言われているような特定の労働分野または仕事を単純労働か否かで分類するものではありません。そこでですね、今のご質問については、特段の技術技能または知識、経験を必要としない労働の具体例は何か、というご質問だろうと、こう思います。そこで今回の受け入れ制度はいわゆる単純労働者の受け入れを認めるものではなく、特定の労働分野について試験や技能実習による実務経験などによる一定に専門性、技能を有する外国人を受け入れるものであります。お尋ねの点については様々な作業が考えられるものの、こうした場において個別具体的に例を示すのは控えた方が良いと考えています。

山尾:
あの私総理の言ってること半分分かるんです。これが具体的に特段の技能や技術を要しない仕事だと特定することは、その仕事に従事している方の尊厳を壊すことになるんじゃないかと。そういうことをもし言ってらっしゃるなら私もそれを懸念しております。だから私この質問をしているんですね。法務省はヒアリングの中では例えば土を右から左に動かすだけの仕事と例示をしました。この例示、維持されるんですか。

山下貴司法務大臣(以下、山下):
お答えいたします。今回の受け入れにおいては個別の作業に着目して単純か否かを判断するものではなく、従事する業務を総体として例えば各業務を構成する複数の作業の内容とか手順であるとか要求されるスキルであるとか知識であるとか経験などを全体として評価するわけでございます。その上で一定の専門性、技能を要するかについて評価するものであります。でこういうことで一般的、抽象的にここで例を示すということは先ほど申し上げた総合的な評価、それをやることになるということをご理解いただいた上であればやはりここは適当ではないということになります。

山尾:では、法務省は例示を撤回するということでありました。
では総理にお伺いします。こういった、今回外国人には拡大しない特段の技能、技術、知識または経験を必要としない労働はこの日本社会で誰が担うことになるんですか。

安倍:あの、単純労働についてどうかという質問についてはですね。すでにこの予算委員会において山下大臣からお答えをさして頂いて、いわば大臣としてですね、これが単純、いわば多くの方々が生業のために一生懸命なされている仕事を単純労働といわば切り分けていく、簡単に切り分けていくことはするべきではないという趣旨の答弁は、大臣としては沿う答弁をされているところでございます。そこで実際にですね、今すでに様々な分野において人手不足がこれは深刻になっているわけでございますが、その中でおいてもですね、しかしその分野で頑張ろうという日本の方々もたくさんいるわけでございますし生産性の向上にもですね、全力を上げ、政府としても支援をしているところでございまして、そういう中でさらに努力を重ねてもなお足りない分野についてですね、外国人の人材を活用していこうということでございますが、しかしそこでですね、ご質問は、では単純労働はどうかということでございますが、それは誰かということを私はここで答弁することは出来ないのでございますが、いずれにいたしましてもですね、ええ、これは需要と供給という関係で成り立つものでございますが様々な形でですね、今、
山尾:答弁できないならもうやめて下さい。)
安倍:い、今ですね。すみません、答弁している最中に質問されたのにやめて下さいというのはどうかと思うわけでございますが、今、まさに、まさに、答弁の途中でございます。それはですね、今様々な形でですね、いろいろな事情が成り立っているわけでございますが、なかなかその作業自体にですね、その作業からステップアップしていく見込みのないものに対してはですね、例えばですね、アルバイトという形で様々な人が関わっているわけでございますから、
山尾:委員長、もう聞いてないこと答えてます。
安倍:そうした形でですね、補充されて行くこともあるんだろうと思います。

山尾:
つまりですね、諸悪の根源は単純労働なんて割り切れる仕事は無いんだけど、単純労働は入れないからそんなに拡大しません、と。こういう風に言いたいがために例示をやっぱりこういう場で一つも上げられないような幻の単純労働なるカテゴリを無理に作るからこういう苦しい答弁になるんじゃないですか。今の話で行ったら外国人に拡大しない単純労働はじゃあ誰が日本社会で担うのか。日本人が担うことになる。なぜこの答弁が出来ないんですか。
職業に貴賤無しという社会の価値観を壊したり、一部の人の仕事を無理やり単純労働と切り分けてそこは日本人に取っておきますというアナウンスをせざるを得ないような、労働者を分断したり、労働者の尊厳を傷付けるようなことはもうやめていただきたいという風に思います。
次に、…法務大臣けっこうです。次に総理に伺います。これ移民についてですけれども、シンプルな質問です。総理は、安倍政権としては国民の人口に比して一定規模云々と、これはまあいわゆる移民政策を取ることは考えていませんと言っておられます。これは議事録に出ておりますので見て下さい。この定義は安倍政権、あるいは日本政府独自の定義なのか。それとも同様の定義を用いている組織や学説があるのか。それを教えて下さい。

委員長:じゃあまず定義について山下法務大臣、簡単に。)
山尾:今の質問だけで結構ですよ。具体的に他にこういうものを取っているのが有るか無しか。)

山下:移民という言葉は様々な論者において様々な文脈で用いられており明確に定義することは困難であります。えーまあ安倍政権としては国民の人口に比して一定程度の規模の外国人およびその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持して行くといった政策は取る考えはないということでございます。

山尾:つまり具体的な、じゃあ総理に伺います。この定義は他にこういう定義を取っている組織や学説が有るんですか、無いんですか。

安倍:
あのう、これはですね。なぜ、まあこういう、いわばいわゆる、いわゆる移民政策ということでお話をさせていただいたかということでございますが、我々移民の定義ではなくてですね、いわゆるこういう移民、こういう私たちが考えているいわば国民の多くの方々が懸念を持っておられるような政策を取ることは考えていないという意味においてですね、私たちはいわゆる移民政策をこのように考えている懸念があるところの移民政策を取る考えはないということでお答えをさせていただいたところでございます。
(場内ざわつく)
委員長:ご静粛に)
え、この問題は大切な議論でございますから、外野からですね、どんどんヤジりまくるというのは皆さんやめましょうよ。しっかりと冷静に議論するべきだろうと思いますし、また労働者の方々を私は一方的にですね、何か貶めているようなそういう決めつけをするのもですね、生産的な議論ではまったくないのではないのかなとそのように感じているわけでございます。
山尾:質問に答えて下さい。)
安倍:いわゆる移民政策というものにつきましては、先ほど山下大臣がお答えをさしていただいたところでございます。これは、
委員長:総理に申し上げます。質問時間が終了いたしましたので、簡潔にお願い致します。)
安倍:はい、これはいわば学説がある、あるいは海外の基準ということに準拠するものではなくて(※)にお答えさせていただく形でいわゆるこういう移民政策を取ることは考えていないということをお答えさしていただいたところでございますが、いずれといたしましてもですね、静謐な環境の中で冷静な議論をしたいとこのように考えております。

山尾:
結局ですね、これはもう日本政府、安倍政権独特の定義であって準拠するような定義や学説や組織は無いということがはっきりいたしました。
なぜこういう質問をしたかというとですね、国際社会のスタンダードから見たら移民に該当する政策を他に類を見ない独特の定義付けをして移民ではないということが有害無益だからです。国際社会を誤解させるし、国内においては国民が政策選択するための正確な情報を提供しないことになります。だからこういった答弁はやめていただきたい。そしてしっかり大事な論点については逃げずに安倍政権として決断をして、この立法府と国民に問うていただきたい。そのことを申し上げて私の質問を終わります。

  (聞き取りにくい部分については(※)印を付けています)


結局、「有る」「無い」「分からない」という一言もしくは一行で答えられるような質問に長々と時間を消費して(書き起こしで十数行)逃げているのが分かると思います。
生産的な議論を、と総理は言っていますがそれは野党側の言うセリフです。  

質問にまったく答えられず、移民の定義は独自に考えたものであり、様々な細かいことは法案が通ってから省令等で決めるという、まったくもって国会を軽視したものです。

山尾議員は改憲議論についてリベラル側からも批判は多いかと思いますが、質疑は鋭く、こういったことは評価して行きたいと思います。

(追記)
このようなツイートが出回っていますが、上記の書き起こしを見て頂ければ分かるようにデマです。

「人の話を全く聞こうとしない山尾議員」ではなくて、「人の質問にまったく答えようとしない安倍総理」なのです。
このようなものが数千リツイートもされているというのは、まさに日本がフェイクニュース先進国ということを表しているでしょう。

LINK:
衆議院予算委員会(2018年11月26日)http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=48491&media_type=fp


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