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【行政】国家公務員の職位と出世事情

1.概要

 本記事では、国家公務員の職位や出世事情について扱う。
 国家公務員とは、主に中央省庁の職員のことをいう。厳密に言えば、国会議員等の「特別職」と府省庁に務める「一般職」に大別され、さらにややこしいことに、一般職は採用区分の意味で「総合職」と「一般職」、「専門職」に分けられる。ちなみに文系職は事務官、理系職は技官という言い方をする。
 この記事では特別職ではなく一般職の国家公務員の職位と出世事情について解説する。
 また、本記事では参考にしていないが、最後に行政学の推薦図書を記載しておくので、公務員事情のネタをより詳しく知りたい方は一読されるとよいかもしれない。

2.職位と出世事情

 国家公務員の職位(階級)には、係長、課長補佐、室長、課長、次長、審議官、局長、事務次官など様々なものがある。
 出世のスピードは、(民間企業も大方同様かもしれないが)採用段階においてキャリア官僚(総合職)とノンキャリア(一般職、専門職)のいずれであるかによって大きく変わる。これを「入り口選抜方式」ともいう。
 民間とのイメージの違いであれば、公務員の課長は結構偉い存在で、ノンキャリアであれば稀に本省課長級まで登りつめる者もいるが、大半は課長補佐で公務員人生を終えることになる。ちなみに例外的ではあるが、過去にはノンキャリアでも印刷局の局長に大抜擢された者はいる。ある行政学者によると、外局の局長ポストとはいえ、これはノンキャリアにも出世の希望を持たせるための異例人事だったそうで、当時大変注目されたそうだ。
 他方、キャリアであれば30代前半で課長補佐、40代で本省課長級まではほとんど横並びで昇格する。
 但し、キャリアでも本省課長級以降は実力ベースでの出世競争となり、出世コースから外れた大半の者は片道切符の出向という形で50代半ばまでに役所を去り、天下りすることになる。出世できなければ定年を待たずに出向、転籍という形で追い出されるという点においては銀行員も似ているかもしれない。
 尚、上記で「本省課長級」という表現を用いたのは、本省ではなく地方支分部局や出先機関においては、課長が本省の課長補佐級、部長が本省の課長級といったように、本省換算した時の職位が異なる場合があり、職位の上下関係の混同を回避するためである。実際に公務員の世界では「本省の課長級」といった表現はよく使われている。
 ちなみに、地方自治体の役所であれば、叩き上げの地方公務員が頑張れば50歳前後でそこの課長になれるぐらいのイメージだが、キャリア官僚が地方自治体に短期(2~3年)の出向で来た場合には、30歳前後でもいきなり課長のポストにつくケースはよく見られる。
 国家公務員と地方公務員の出世のスピードという点では、国家公務員総合職>国家公務員一般職>地方公務員上級職、という序列が一般的である。
 警察組織を例にすれば、地方公務員の警察官は採用時に巡査からスタートするが、警察庁で採用された国家公務員一般職は巡査部長からスタートし、さらに国家公務員総合職については警部補からのスタートとなる。特に警察組織では、国家公務員一般職でも警視長(本省課長級)程度までの出世が見込まれるなど、やや扱いが手厚いことから準キャリアと呼ばれることもある。他方、地方公務員として採用された警察官でも、警視正以上まで昇格すると警察庁の国家公務員一般職相当(特定地方警務官)の所属に切り替わるという制度もある。余談だが、大昔は全国採用警察官という、地方公務員でありながらも他都道府県に異動することもある特殊な人事制度もあり、これについてはかなり狭き門である一方、出世も早かったそうだ。
 また、法務省や検察庁、公安調査庁等ではキャリアよりも法曹(司法試験合格者)の方が出世のスピードが早いという、例外的な関係性も存在する。これらの省庁ではキャリア採用者であっても法曹よりも出世が遅いという意味で、皮肉的に準キャリアという呼ばれ方をすることもある。
 さらには、同じ職種でも省庁間で上下関係(力関係)があるなど、公務員の職位の事情は複雑で、センシティブなものなのである。

推薦図書

[1]真渕勝, 行政学, 有斐閣(2009). 

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