ぶらっくすわん(金融×数理科学)

1995年, 大阪府出身. 銀行でクオンツ業務に従事. 東京工業大学博士課程在籍. 専…

ぶらっくすわん(金融×数理科学)

1995年, 大阪府出身. 銀行でクオンツ業務に従事. 東京工業大学博士課程在籍. 専門は代数的位相幾何学. 数理科学, 金融, 経済, 行政などをテーマに配信!

最近の記事

プログラミングの環境構築は嫌いなことの3本の指に入る。プログラミングのエラーなら対処できるが、環境構築の段階でエラーを吐かれてしまうと苛立ちを通り越して全てのやる気を吸い取られてしまうのだ。せめてエラーメッセージを具体的かつ分かりやすいものにしてほしいものだ。

    • 【経済】コストプッシュインフレとは何か

      1.はじめに 本記事では、コストプッシュインフレの概要と金融政策との関係性について概説する。 2.コストプッシュインフレの概要 コストプッシュインフレとは、生産要因のコストが上昇し、それが商品やサービスの価格に反映されることで物価が上昇する現象のことをいう。  生産要因の中で特に重要なのは、原材料や労働力の価格の変動である。原材料価格や賃金の上昇が企業の製品やサービスの生産コストを押し上げ、企業はこれを消費者に転嫁するために価格を引き上げようとするわけである。 3.金融

      • 【数学】位相幾何学とは何か

        1.はじめに 本記事では、数学の一分野である位相幾何学(トポロジー)とはどのような分野なのかを紹介する。 2.位相幾何学の基本となる概念 位相幾何学は幾何学の一分野で、空間の形状や性質に注目する。特に、対象の形が変形しても同値であると見なすことで、「空間に穴が空いている」といった形状の特徴を捉えようという発想に基づくものである。言い方を変えれば、体積や曲率といった詳細な情報をある程度無視してでも、本質的な情報を取り出そうとする分野である。よく例示される、「ドーナツとマグカ

        • 【金融】銀行の部署と仕事

          1.はじめに 本記事では、銀行の主要部署とそこで行われている業務について説明する。ここでは、預金・融資・為替の三大機能を担う普通銀行について扱うものとする。 2.銀行の部署と業務 銀行によって組織体系は異なるが、主に以下のような部門に大別され、各部門の中に部・室・課・係等が存在する。  尚、以下で示す部署名は一例である。 (1) 支店  ネット銀行専業でない限り、通常銀行は各地に支店を有する。支店の中には窓口業務を担うサービス課の他、外回りで法人・リテール営業(RM)

        プログラミングの環境構築は嫌いなことの3本の指に入る。プログラミングのエラーなら対処できるが、環境構築の段階でエラーを吐かれてしまうと苛立ちを通り越して全てのやる気を吸い取られてしまうのだ。せめてエラーメッセージを具体的かつ分かりやすいものにしてほしいものだ。

          【電子工学】キルヒホッフの法則とグラフ理論

          1.はじめに 本記事では, 回路解析への入門として, 電気回路における重要な法則であるキルヒホッフの法則とグラフ理論の関わりについて扱う.  グラフ理論におけるグラフとは, ある「点」とそれにつながる「辺」から構成される幾何学的対象のことをいう.  グラフ理論は, モノとモノのつながりの情報に注目し, そこから様々な性質を分析できる特性やコンピュータ処理との親和性の高さから, 数学的基礎研究のみならず, 回路解析やコンピュータサイエンス, 社会ネットワーク分析, 路線図問題

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          【行政】第一線公務員の裁量とジレンマ

          1.はじめに 本記事では、第一線公務員における裁量とジレンマについて解説する。 2.第一線公務員の裁量とジレンマ 第一線公務員はストリートレベルの公務員ともよばれ、教職員や地域警察官、生活相談員のように現場で市民と直接対峙する業務を中心に担っている公務員のことを言う。  この第一線公務員は、行政学において裁量余地の観点から扱われることが多い。  行政を担う公務員は、選挙によって民主的に選ばれた者ではないため、大きな裁量を与えられることなく法令等で定められた手順に沿って粛々と

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          【体験談】文系から理数系への転身

          1.はじめに 本記事では、文系から理数系に転身した筆者の体験談を綴ってみようと思う。 2.文系学部から理数系修士課程へ 筆者の学部時代の専攻は政治経済学系であったが、学部1年生の秋に社会工学という文理融合系の分野に興味をもち、その分野を学ぶことをモチベーションに、集合論や位相空間論、微分積分学、線型代数学、複素関数論といった工学系の1、2年生程度で学ぶような基礎的な数学の独習を始めた。  学部2年生以降はルベーグ積分論や抽象代数学などの数学科向けの教科書も少しずつ読むように

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          【哲学】ヘーゲルの芸術論

           ギリシャから綿々と伝わってきた、背後世界の存在を前提条件とするような発想の仕方は、18世紀後半から19世紀にかけて活躍したドイツの思想家、哲学者であるヘーゲルによって典型的な形で提示された。典型的な背後世界の存在を前提条件とする立場が出てきたのだ。このヘーゲルの発想の仕方は19世紀の後半になってくると、前つ方のものであるとされるようになる。つまり、ヘーゲル的世界は崩壊していったのである。  では、ヘーゲルは芸術をどのように捉えたのだろうか。彼は、背後世界の存在を前提とした

          【哲学】ヘーゲルの芸術論

          【哲学】映画芸術論

           シネマ(映画)というものは、娯楽性をもつと同時にアートへの可能性をもつ。娯楽性については特筆することでもなかろう。ところが、娯楽を超えて、閉じられている背後世界に対するノスタルジックな気分が生まれてくることがある。アートへの可能性のようなものをすぐに人間は思いつくものである。アートへの可能性というのは、シネマを“向こう側の世界”への超越的な作用として捉えることであり、シネマはその誕生と同時にその宿命性も持ち合わせるのである。  結局、シネマとは何であるのかを考えるにあたっ

          【哲学】科学とは何か

           そもそも科学とは何なのか。これは科学哲学における重要な問いの一つである。  色々観点はあるが、反証主義の代表たる20世紀の科学哲学者Popperによれば、ある対象が科学である条件は「反証可能性」を有するかどうか、なのだという。  この反証可能性とは、「真偽を検証可能であるかどうか」というものであり、偽である可能性を一切認めない言説や、検証可能でないような記述、説明は反証可能とは呼ばず、非科学に分類されるのである。  もう少し平易に言えば、反証主義の立場によると、科学とは間

          【数学】ボホナー積分の定義

          1.はじめに 本記事では、函数解析におけるボホナー積分(Bochner Integral)について扱う。  ボホナー積分は函数解析の基本的な教科書ではなかなか見かけない、数学的にややマニアックな概念ではあるが、モチベーションのひとつとして、ランダムな函数をデータとして取り扱う函数データ解析とよばれる分野においてよく用いられている。  尚、和文による解説は少なく洋書にはなるが、より詳しく学びたい方には参考文献[1]をおすすめする。 2.ボホナー積分 バナッハ空間$${\mat

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          【金融工学】なぜ対数収益率が使われるのか

          1.はじめに 金融工学では、金融資産(株式など)の収益率(return)という概念がよく扱われるが、その際、対数をとった収益率が用いられることも多い。  本記事では、収益率の対数をとるモチベーションについて直感的に解説する。 2.収益率と対数収益率[1] 時刻$${t}$$における金融資産$${S}$$の価格を$${S_t}$$とする。  このとき、時刻$${t}$$における収益率$${R_t}$$は、$${R_t=\frac{S_{t+1}-S_t}{S_t} }$$で与

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          【数学】すぐ分かる集合論入門

          1.はじめに 本記事では、「高校数学でつまずいたけど大学数学を学びたい」、「集合論の概要を理解したい」という方を主な対象として、大学数学の入り口たる集合論の基本事項を解説する。  解析学、代数学、幾何学、その他応用数学など、その先何をやりたいかというモチベーションは人によって異なるだろうが、モノの集まりとその性質を議論する集合論は全ての数学分野の土台たる位置づけであり、避けては通れない分野である。  ちなみに、集合論の基本を理解しておけばプログラミングの本も読みやすくなるとい

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          【行政】国家公務員の給与事情

          1.概要 本記事では、国家公務員の給与事情ついて解説する。 2.給与事情 国家公務員の給与は職種の別(行政、教育、公安等)のほか、人事院が公表している俸給表の通り、号俸と職務の級に応じて非常に細かく規定されている。要するに、ベース給=f(職種,号俸,職務の級)という関数で決まるわけである。  また、採用区分の観点で言えば、そもそも国家公務員はキャリア官僚(総合職)とノンキャリア(一般職、一部専門職)に分かれるが、それらの給与水準は採用区分に応じて初任給の時点から異なってくる

          【行政】国家公務員の給与事情

          【行政】国家公務員の職位と出世事情

          1.概要 本記事では、国家公務員の職位や出世事情について扱う。  国家公務員とは、主に中央省庁の職員のことをいう。厳密に言えば、国会議員等の「特別職」と府省庁に務める「一般職」に大別され、さらにややこしいことに、一般職は採用区分の意味で「総合職」と「一般職」、「専門職」に分けられる。ちなみに文系職は事務官、理系職は技官という言い方をする。  この記事では特別職ではなく一般職の国家公務員の職位と出世事情について解説する。  また、本記事では参考にしていないが、最後に行政学の推薦

          【行政】国家公務員の職位と出世事情

          【数学】「ほとんど至るところ」とは何か

          1. はじめに 本記事では、数学の世界で扱われる「ほとんど至るところ」という概念について説明する。  大学で解析学を学んだことがあれば耳にしたことがあるかもしれないが、Lebesgue(ルベーグ)によって導入された数学用語として「ほとんど至るところ」というものがある。  これは”almost everywhere (a.e.)”という英語表現の和訳であり、解析学で著名な高木貞治先生によって「Lebesgueは一片の咒語"ほとんど"をもって、彼の積分論に魅惑的な外観を与えたのだ

          【数学】「ほとんど至るところ」とは何か