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不法行為とは ~その3_不法行為の類型等

不法行為の第三回目ですね。
今回は「不法行為の類型等」について書きます。


|特殊不法行為の類型

民法では「一般不法行為」のほか、以下の「特殊不法行為」が定められている。
① 責任無能力者の監督義務者等の責任
② 使用者責任
③ 工作物責任
④ 動物占有者の責任
⑤ 共同不法行為者の責任

それぞれについて喚起すると以下のとおり。

 ① 責任無能力者の監督義務者等の責任

前述のとおり、加害者が未成年など責任無能力者は、不法行為に基づく損害賠償責任を負わない。

しかし、被害者の保護のため、民法では「責任無能力者の監督義務者等の責任」という規定が定められている(民法714条)。

親権者等、責任無能力者を監督する立場にある(法定の義務を負う)(例:成年後見人など)は、責任無能力者が第三者に加えた場合に生じた損害を賠償する責任を負うのだ。

監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も同様です。
ただし例外的に、監督義務者等がその義務を怠らなかったとき、またはその義務を怠らなくても損害が生時るべき状況にあった場合などは、損害賠償責任を免れることになる。

 ② 使用者責任 

事業のために他人を使用する者(=使用者。例えば会社)は、被用者(例えば従業員)がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うことになる(民法715条)。これを「使用者責任」という。

使用者に代わって事業を監督する者も、同様の責任を負う。
ただし例外的に、使用者等が被用者の選任および事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生じるときであったときは、損害賠償責任を免れる。

 ③ 工作物責任

土地の工作物の設置・保存に瑕疵(欠陥)があり他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負うことになる。

未成年者で自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときや精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠いていたとき、Aが道を歩いているときに、Bが所有するビルの壁が崩れてきてケガをした場合などをイメージすると分かりやすいかも。

ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない(民法717条)。
これを「工作物責任」という。

占有者実際に工作物を使用している者所有者工作物の所有権をもっている者(実際に、工作物を使用しているとは限らない)。
また、竹木の栽植・支持に瑕疵がある場合も、土地の工作物と同様に工作物責任が発生する。

 ④ 動物占有者の責任

動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う(民法718条)。
占有者に代わって動物を管理する者も同様である。ただし例外的に、動物占有者等が動物の種類・性質に従い、相当の注意をもってその管理をしたときは損害賠償責任を免れる。

  ⑤|共同不法行為者の責任
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う(民法719条)。

共同行為者のうち、いずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも同様。

つまり、被害者は加害者のうち、誰に対しても損害全額の賠償を請求できる。請求の配分についても、被害者が選択可能です。

|胎児に対する不法行為も成立する ~ 損害賠償請求が可能

胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなされる(民法721条)。例えば胎児の段階で不法行為を受け、その結果身体に障害が残った場合は、胎児自身が加害者に対する損害賠償請求権を取得することに・・・・・・・・・・。

なお、不法行為によって胎児が死亡した場合の取り扱いについては、民法において規定がない。
相続と同様に、胎児が死産となった場合は胎児自身に権利能力が生じないと解さざるを得ないと思われが(民法886条2項参照)、両親は加害者に対して、胎児の死亡について損害賠償を請求できる。

|不法行為による損害賠償の過失相殺

不法行為の被害者に過失があったときは、裁判所はこれを考慮して、損害賠償の額を定めることができる(民法722条2項)。

実務上は、過失割合に応じて損害賠償が減額されることになる。これを「過失相殺」という。
例えば被害者が100万円の損害を受けたとしても、被害者と加害者の過失割合が「2対8」の場合、被害者は加害者に対して80万円の損害賠償を請求できるにとどまるのだ。

|不法行為による損害賠償請求権の時効期間(消滅時効)

不法行為に基づく損害賠償請求権は、以下の期間が経過すると時効消滅する(民法724条、724条の2)。
 ① 人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
   以下のいずれか早く経過する期間
    (a)被害者またはその法定代理人が、損害および加害者を知った時
     から5年

    (b)不法行為の時から20年

 ② ①以外の不法行為に基づく損害賠償請求権
   以下のいずれか早く経過する期間
  (a)被害者またはその法定代理人が、損害および加害者を知った時から
   3年

  (b)不法行為の時から20年

|おわりに

以上いろいろ説明してきたが、基本的には法律に則った対応を講じていれば大きな問題はない。
しかしながら故意過失を問わず「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うことになることを理解していないと、うっかり事案による損害賠償責任が発生することになるので十分に注意を払って対応していくことが重要である。

<参考文献>

独立行政法人国民生活センター「第48回 不法行為」
窪田充見著『不法行為法 民法を学ぶ 第2版』有斐閣、2018年まえて要件が修正されている。

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