お酒が飲めないとき

この日記は2017年2月、宙facebookページへ投稿しようとした没日記を編集しています。

先日の出来事。

「お酒飲めないのすごいストレス、旦那さんはお構いなしで飲んじゃうでしょ?頭にくるのよ、まったく。」
と日本酒好きの妊婦さん。

ごもっとも!ですね。
どちらかといえば旦那さん側の人間ですから。
僕。
妊婦さん、すみません。

「でもね、最近いいこと思い付いて!今しかできない貴重な期間と捉えるように切り替えたの。」

?????

「この期間を使って梅酒とか果実酒をいっぱい漬け込んだらいいと思うの。だってそうでしょ?飲みたくても飲めないし、飲み頃になる前に半分以上減ってしまうこともないんだから…」

ピンチをチャンスに切り替える。
大袈裟かもしれませんが、お酒好きの女性からしたら、突然飲めない体質になってしまうのはストレスが溜まることだと思います。
大ピンチです。

授乳が終わった頃、とびっきり美味い自家製果実酒が完成していることでしょう。
ユーモアも遊び心も夢もありますね。
素晴らしい時間の使い方だなぁ、と思いました。
ありきたりかもしれませんが、僕はこういう思い付きが大好物です。

そういう僕は、自転車ユーラシア大陸横断ひとり旅中、お酒が飲みたくても飲めない国にいたことがあります。
イスラム国家。
禁酒国。
ルート的にパキスタンやイランが当てはまります。
トルコはお酒が飲めるので却下。

8〜12時間自転車を漕ぎ、汗をいっぱい流したあとはビールを思いっきり喉に流し込みたいですよね?
そのためだけに自転車を漕いでいる。
この感覚はお酒が日常になっている方々にはわかりますよね?

でもできなんです。
禁酒国なんです。
すごいストレスです。
野宿先を決めたら速攻テントを張ってイジけて寝るしかありません。

街に着いたら、料理や水タバコや観光や地域の人とコミュニケーション。
たくさんの娯楽があるので問題ないのですが、何もない地域で野宿している日はふてくされて寝ることしかできません。

たった2ヶ月ちょっとなので、妊婦さんや授乳中のお母さんに怒られちゃいそうですね。
しかも裏ルートでお酒が飲めた時期もあったので…
でもね、無茶苦茶キツかったんです!


アウシュビッツ生存者、精神科医、心理学者ヴィクトール フランクルの著書「夜と霧」を思い出しました。

「深刻な時ほど笑いが必要だ。ユーモアの題材を探し出せ。そこに現状打破の突破口がある。」

好きなことばです。
深刻度は全く違いますけど。

お酒が飲めないことはお酒が好きな人からしたら深刻な時です。
間違いありません。
この時を楽しく過ごす手段のひとつに、果実酒を漬けることを思い付いた妊婦さんは本当にアッパレ!だと思います。


お酒が飲める体質になるまで1年以上掛かるでしょう。
待ち遠しいことでしょう。
それ以上に出産が待ち遠しいでしょう。
産後は日々の育児に追われ自家製果実酒のことを忘れてしまうときもあるでしょう。

「美味しくなぁれ!」というおまじないは、子供の成長とともに味が乗ってとびっきりの果実酒になってくれる筈。

熟成酒が好きな方は果実酒だけでなく、妊娠をきっかけにワインや日本酒やベルギービールを買って寝かすのもありですね。
家庭用ワインセラーも買っちゃえば、飲めるようになった日はパーリーできちゃいます。

洒落も応用も効いた実用性の高い素晴らしい思い付き!
最高です。

『妊婦さん、丈夫なあかちゃん産んでねー!』



余談
お酒が飲めなくてイジけて野宿していたイラン高原の出来事。

砂漠の夜空はものすごく奇麗です。
星ってこんなにあるんだ!
と誰もが思うことでしょう。
間違いなく日本で見ることはできません。
海外ツアーに参加しても他に人がいるのでできません。

誰とも共有できない感動です。

標高1200m前後で近くに街もないので空気がきれいです。
木も生えていないから遮るものがありません。
ですが、とてつもなく怖かった。

360°地平線で人どころか動物もいません。
当たり前です。
動物が生活するには厳しすぎる環境ですから。
虫や蛇や蜘蛛はあちこちで見かけましたが。

風とか自転?が理由で砂や小石が動く音しか聞こえてきません。
「この世にはオレしかいないんじゃ?」
そんな錯覚と同時に恐怖が押し寄せてきました。

さっさと寝る以外することはありません。

奇麗すぎる砂漠の星空は、僕にとって恐怖の体験になってしまいました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?