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私の語学遍歴⑤スワヒリ語

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スワヒリ語との出会い〜学び

私が新しい語学を始めるきっかけといえば、その言葉が話されている地域の歌や踊りに触れて興味を持ったという理由がほとんどですが、その点ではスワヒリ語は例外的です。もともとタンザニアやケニアの文化に興味があったというよりは、ヨーロッパ系(印欧語族)以外の外国語を学んでみたいと思ったことが第一の理由でした。言語学を専攻していく上で、ヨーロッパの言語ばかりに知識が偏らないようにしたいと思ったのでした。
ヨーロッパ系以外の言語といっても色々あるのですが、そのなかでなぜスワヒリ語かというと、母親が若い頃にアフリカ最高峰のキリマンジャロに挑んだことがある(天候悪化で登頂はならなかったそうです)ということに影響を受けているのかもしれません。

スワヒリ語の授業はそれまで受けた大学の語学の授業とは全然違っていて、文法書や教科書がありませんでした。先生から提供されたのは学習用音源のみ。授業の予習として、そのスワヒリ語会話の音源を何度も聴いてディクテーションをしました。それを踏まえて毎回授業が進んでいきます。
もちろん最初は何の単語も知らないので、ただ聞こえたとおりにアルファベットをノートに書くだけ。単語の切れ目もわかりません。この作業が私はすごく楽しくて、同じところを何度もリピートして、耳で言葉の感覚を身に付けていきました。ときどき「入破音」という珍しい発音が混じっていることがあり、それを発音できるようになりたくて毎日トイレで練習したりもしました。

文法は、思っていたとおりヨーロッパ系言語とは全く違っていて、非常に興味深かったです。特に「名詞クラス」という、名詞のグループ分けが複雑なのがやっかいでしたが、よくできているシステムだなと感心もしました。名詞クラスによって他の様々な品詞と対応していくところは、パズルをはめていくような面白さがありました。(私はこういうパズルっぽい読み解きが好きなようで、ラテン語やポーランド語のハマりポイントもここでした)
名詞クラスは確か15か16種類あるのだったかな。例えばドイツ語だと、名詞の文法的グループ分けは「男性名詞・女性名詞・中性名詞」の3つですが、それがスワヒリ語だと15くらいあるということになります。ドイツ語を挫折した人にとっては気が遠くなる話かもしれません。

スワヒリ語を学んだ感想

  • 基本的にアルファベット表記のとおり発音すればよく、アクセントの位置も基本は単語の後ろから2つ目の音節なので、発音はしやすい。

  • 文法については、これまで学んだ言語のなかで学ぶのが一番楽しかった。日本語とも英語ともまったく異なる体系なので、「おお、そうなっているのか!」という驚きや発見の連続でした。

  • 名詞クラスの種類が多いので、最初から全部覚えようとすると挫折しそう。私は初級の初めのほうしか学んでいないので、「名詞クラスというものがあるのだな」という理解と、いくつかの頻出単語がどのクラスに属すかを覚える程度で終わりました。中級に進もうとすると大変だったかも。

スワヒリ語を学んで何年も経ってから、街で外国人のお兄さんたちがダンスのパフォーマンスをしているのに遭遇し、素晴らしいダンスだったので話しかけに行ったことがありました。出身はケニアだそうで、「ケニアってどこにあるかわかる?」と聞かれたので、うろ覚えのスワヒリ語の挨拶をしたらめちゃくちゃ喜ばれました。日本でスワヒリ語が話せる人に会えるとは思わなかった、と。そのときに、スワヒリ語を学んでよかったなあ、と思いました。

言語学を専攻する上で直接的にスワヒリ語の知識が役立ったことはありませんでしたが、私自身の言語に対する見方を大きく広げてくれました。

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