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一人で何役もこなすアニメーションディレクターの作品にかける想い

AD Channel第五弾はアニメーションディレクターとしてご活躍中の、株式会社アマナの古山さんにお話を伺いました。

今回のインタビューでは古山さんの仕事についてご紹介するとともに、一人で何役もこなす古山さんにとってアートディレクターはどのような存在かお話を伺いました。

|ディレクションだけでなくアニメーター、イラスト、コマ撮り、撮影全部やる

―古山さんの仕事内容を教えていただけますか?

古山さん:監督がメインですが、ディレクションだけでなく、プランニング、アニメーション制作、イラスト制作、コマ撮りもやっています。ディレクター兼アニメーターですね。通常、監督はここまでやらないのですが、全てを一人でやれるという意味ではこの業界では珍しいかもしれません。

―アニメーション制作時、古山さんは具体的にどのように携わっているのでしょうか?

古山さん:最初の企画提案からアニメーション制作まで、全ての工程を担当しています。お客さんの要望をヒアリングしながら、その映像の世界観となるイメージや登場するキャラクターのデザイン、ストーリー、セリフ、絵コンテなどを制作して提案しています。

大澤:そこまで全部一人でやってしまうなんて、なかなか聞かないですよね。イラストも描けるっていいですね。いろんな提案ができるし、方向性絞る時にも古山さんの中で決められますしね。提案しやすいですね。

古山さん:そうですね。ヒアリング中にその場で絵にしてお客さんに見せたこともありますが、認識合わせはとても早いと思います。
全体の流れとしては、世界観が決まったら、詳細な絵コンテを描いていきます。コンテが出来上がってからは、レイアウトと言われる画面設計図を描き、それをガイドにキャラクターの動きのキーとなる原画を描き、画面内での動きを把握し、問題ないことが確認できたら、滑らかに見えるように原画の間に動画を描き加え、アニメーションが出来上がっていきます。もちろん制作の一部を外部の会社に頼むこともあるので、その部分はディレクションにまわることもあります。

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|数秒間のアニメーションにかける想い

―特に思い入れのある作品を教えていただけますか?

古山さん:以前ワンカットで、カメラが常に360°動くアニメーションを制作したことがあるのですが、その作品は思い入れがありますね。アニメーターからすると、常にカメラが動いているものを作るのは大変なんですよ。
キャラクターの周りをカメラが回転しているシーンは、その角度に合わせて背景もパースに合わせてそれぞれ描かなければならず。加えてこれは12フレームで作ったので作業は大変でした。必ず1秒間に12枚描くというのはアニメーション映画でもあまり見られません。

大澤:動画やアニメーション制作の方々って、すごい時間をかけて作るのに動画が流れるのは数秒じゃないですか。この数秒間にかける想いがすごいなと思っていたんですが、、よく考えれば、我々も一般的には気付かない細かい部分までレタッチしていたり、細部まで気を使っていることを考えると、同じことかもしれないですね。
カメラを回転させることで得られる表現とか、より良いものにしたいという想いは、観ている人にとって数秒のものだとしても、とても大切なことですもんね。

古山さん:お客さんに満足してもらいたいですしね。あと、この時はワンカットでカメラが動き続けるアニメーションを、やってみたかったというのもあります。
常に表現方法を変えたりして、似たテイストのものは作らないようにと意識しています。

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|アニメーションディレクターとアートディレクターとの関係性

―アートディレクターと関わりながら制作されることはありますか?

古山さん:僕はありますが監督としてですね。アニメーターとしては基本的にアートディレクターと関わる機会は無いと思います。

大澤:古山さんは、監督からアニメーションの制作まですべてお一人でできてしまいますが、そのなかでアートディレクターの必要性は感じられますか?

古山さん:僕はいた方がいいと思っています。アートディレクターやクリエイティブディレクターは自分が持っていない感覚を持っているので、そこに共感した時に作品もより良くなると考えています。一人で考えると一人のアイディアしかないので、二人以上になると相乗効果が生まれるというか。監督が二人いるという感覚に近いかもしれません。
あと、クリエイティブディレクターやアートディレクターは、そのクリエイティブが“そうである意味”を考えていますよね。そこが1番重要かなと思っています。「なぜこうなったのか?」「なぜこのデザインにしたのか?」が言えないと、お客さんも納得しないですしね。

大澤:大事ですよね。お客さんの納得のためという部分もありますけど、「なぜこれを作っているんだろう?」と疑問に思うと最終的なアウトプットもブレてしまうと考えています。制作時にはいろんな人とも関わるので、1本、筋があることは大事だなと思っています。

|“温かさ”を感じられるアニメーションを

―古山さんの作品において、理想やこの質だけは担保したいことはありますか?

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古山さん:“温かさ”を感じられる作品にしたいと思っています。このIBMさんのアニメーションは、すべて手描きで紙に色鉛筆とクレパスで何枚も描き、その上に透明なフィルムや人物のレイヤーを重ねて制作しました。こうして手描きで作ると温かみがでるんですよね。

大澤:これ、企画も制作も全部古山さんがやったんですか?

古山さん:はい、企画から僕が考えました。実はこの時は音楽も自分で作りました。時間も予算もかかるのでめったにできませんが、こうやって制作できるのが1番良いですね。制作において、“手描き感”“温かい感”は大事にしています。

―最後に、古山さんが今後取り組んでいきたいことを教えてください!

古山さん:今は自分の作品を作っているので、それを完成させることでしょうか。5分ぐらいの短編アニメを作っていて、今年には完成すると思います。また、いつかは実写でもよいので映画を作れたらなとも思っています。

―古山さんの今後の作品、楽しみにしています!ありがとうございました。


古山 俊輔
広島県出身。
山と田畑で囲まれた美しい自然の中で育つ。
美術大学院を修了後フリーランスアニメーターとして日本とイギリスで活動。
2015年(株)アマナ/ワンダラクティブにディレクター兼アニメーターとして入社。
アニメーションだけに留まらず実写のディレクション、プランニングもこなす。
仕事の傍ら、自分の見たい風景を映像化し個人製作にも力をそそぐ。
最新作に2021年2月3月「NHKみんなのうた・愛を着て」を担当。
株式会社アマナ https://amana.jp/
広告を中心としたビジュアル制作、クリエイティブ素材の制作・販売、コミュニケーション・コンテンツの企画立案に至るまで、写真からスタートし、動画やCGなどといったさまざまなビジュアルで「心を動かす」表現にこだわり、マーケティング領域の様々なニーズに応えるべく、ビジネスを展開している。

<Credit>
Interviewer:Takuya Osawa(D2C dot Art Director)
Interviewer:Tomoyo Nagaoka(D2C dot PR)
Interviewer:Mai Yamauchi(D2C dot PR)