俺のきなこ棒

たんぽぽぴ

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時間に追い越されていく島村氏

昨日、唐突にメガネを失くしたんだ。草むらの中だったと思う。横になって、じっとしていたら、雲が太陽を隠すようにしてメガネは失くなった。それからずっとぼやけた靄(モヤ)の中の景色を過ごしている……困った、困った。 通りすがりに、お姉さんがすっとハンカチをくれて、それで自分が泣いてるってことに気が付いたんだ。どうしてかって、多分だけど、いつもはメガネ越しに浴びる車道のヘッドライトとかを、裸眼で浴びてしまったからだと思っている。だって悲しいことなんか特に無い人生だし、思い出はいつも

    • #あの選択をしたから

      最寄り駅から歩いて3分。閑静な住宅街の一角に、件(くだん)のお店はあった。リポートで向かったのは、「ウワサの街角!」特捜員、グルメ担当の丸山秀記記者である。 「どうも!こんにちは!丸山ですね、実はある噂を小耳に挟みまして、このD県F市の大宮塚町へとやって来ました!それというのもでさあねぇ、」 その時だった。 いきなり大きな爆発音が、静かなお昼時の空気を唐突に揺さぶったのである。 「う、うわー」 丸山は思わず情けない声を上げ、尻もちをドスンと付いてしまった。カラスだかハトだか

      • 最高の家がひとつ、ふたつ、みっつ……

        いいかい?僕が息を止めて、と言ったら、息を止める。いいって言うまで、止めること。 もしも途中で息をしてしまったら―――……。 ――――――――――――――――――――――――― 薄緑色の瓦屋根の上に、白猫と黒猫が二匹。上空を見上げている。そこから少し離れた黒い瓦屋根の上には、コーン付きのアイスクリームが円形にならべられている。暑いので、当然すべて溶けきってしまっているのだが(黒い瓦なので尚更表面の温度は高い)、辛うじてそれらが白いバニラアイスだったと分かるくらいの塊が、

        • コンコン、とベランダの窓がノックされる。 真夜中に。 コンコン、コンコンコン。 どこか慎ましやかで、遠慮がちにも聞こえる音。もしも幽霊ならば、こんなノックはしないだろう。じゃあなにか?人間か? コンコンコン、コンコンコン。 私はそのノックを横になったまま聞いていた。ノックされているのは、私の部屋の窓だ。しかし、だからといって、私が開けなければならないという理由(わけ)はない。無視したっていいし、このまま寝てしまっても咎められる所以はありません。疲れているし、わざわざ

        時間に追い越されていく島村氏

          人生の混迷を解く鍵は。

          ふん……バカが。 え、一体何がって? ――それは、分からない。 一つ。人間は何かを馬鹿にすることによって、自身の価値を相対的に上げる生き物だ。 いや、違うかもしれない。 そもそも、この世の中に、人が断言出来うる物事などあろうか? ましてや、世界の片隅に辛うじて自分1人分のスペースを確保しているだけの、それだけで精一杯の自分になど……。 コンコン、と不意にドアがノックされ、返事も待たずドアを開けて死が訪れる。ようこそ、私の人生へ。そして、さようなら。 私は死んで

          人生の混迷を解く鍵は。