マガジンのカバー画像

インドネシア政経ウォッチ・バックナンバー(1-50)

50
過去に連載した「インドネシア政経ウォッチ」のバックナンバー(1-50)を再掲します。
¥1,000
運営しているクリエイター

記事一覧

第50回 ジョコウィは「現場」を作らせない(2013年 8月 15日)

ジャカルタ特別州のジョコ・ウィドド知事(通称・ジョコウィ)は、頻繁に現場訪問へ出かける。しかし、どこへ行くかは直前になっても一部の関係者にしか知らされない。メディア関係者が追っかけをしても、現場へ着く前に振り切られてしまう。

もっとみる

第49回 コメの輸入は是か非か(2013年 8月 1日)

踊り場に来たと言われるインドネシア経済。経済成長率見込みが下方修正され、予想インフレ率が大きく上昇する中、異常気象に伴う農業生産の減退が心配されている。しかし、コメ生産について言えば、政府は自給を達成できると楽観視している。

もっとみる

第48回 FPIと住民の衝突事件(2013年 7月 25日)

イスラム教の聖なる断食月を迎えて、巷では飲酒やカラオケなどを控えるムードが広がっている。毎年のように、白装束の集団が、断食月を尊重しないと見なすナイトクラブやバーなどを襲撃する事件が起こるが、その先頭に立つのがイスラム防衛戦線(FPI)である。この集団の暴力性は以前から問題視されており、先般成立した社会団体法も、こうした団体を法的に規制することを目的のひとつとしている。

もっとみる

第47回 軍にクーデターの伝統はない?(2013年 7月 18日)

7月3日、エジプトで軍の絡む政権交代劇が起こった。合法的な選挙で選ばれたモルシ大統領が政権の座を追われ、軍主導の新政権が発足した。一部報道では「軍によるクーデター」とされるが、日米とも「クーデター」という言葉を注意深く避けている。

もっとみる

第46回 貧困層向け現金給付はどう使われるのか(2013年 7月 11日)

前々回の本コラムで取り上げたように、石油燃料値上げの補償プログラムとして、政府は貧困層へ現金直接給付を始めている。社会保障カード(KPS)が配られた1,550万世帯へ計9兆3,000億ルピア(約940億円)を給付するのだが、案の定、登録漏れや不正受給などの問題が起きている。一部では、末端の村長が「政府から名簿が来ていない」として給付を拒む事態も出ている。

もっとみる

第45回 新社会団体法が成立(2013年 7月 4日)

インドネシアにある全社会団体を規定する社会団体法が、7月2日に成立した。国家による監視強化を懸念するナフダトゥール・ウラマ、ムハマディヤといった有力イスラム団体による反対を押し切った形だ。

もっとみる

第44回 石油燃料値上げと補償プログラム(2013年 6月 27日)

西インドネシア時間6月22日午前零時、政府は満を持して石油燃料を値上げした。ガソリンは1リットル当たり4,500ルピア(約44円)から6,500ルピアへ、軽油は同じく5,500ルピアへ、全国一律の引き上げである。すぐに、各地の公共交通料金が15%程度値上げされた。

もっとみる

第43回 学生の石油燃料値上げ反対デモ(2013年 6月 20日)

補助金対象石油燃料の値上げを控え、全国各地で学生らによる反対デモが頻発している。とくに激しいのが南スラウェシ州の州都マカッサルで、州知事庁舎へ強引に突入しようとした学生らと警官隊が衝突したほか、連日、古タイヤを路上で燃やしたり、タンクローリーを襲ったりして、幹線道路を封鎖し、大渋滞を引き起こしている。

もっとみる

第42回 「ずぶ濡れの乾季」の影響(2013年 6月 13日)

インドネシア各地で連日、雨のよく降る日が続いている。気象庁は6月2日、年末までそうした状態が続くとの予報を発表した。

赤道付近の海水温が上昇するラニーニャの影響で、インドネシア海域で大量の水蒸気が発生している。一方、本来ならばそれをアジア大陸方向へ吹き飛ばす役割を果たすオーストラリアからの季節風の吹き出しが弱いため、インドネシア上空は雨雲ができやすい状況にある。降雨量の多い状態が続く可能性もあり

もっとみる

第41回 燃料値上げ反対の福祉正義党(2013年 6月 7日)

牛肉輸入枠をめぐる汚職事件に深く関与した福祉正義党が、来年の総選挙を控えて、組織存続のためになりふり構わぬ行動に出た。ユドヨノ政権が計画している補助金対象石油燃料の値上げに反対の姿勢を明確にしたのである。同党は政権与党であり、しかも、値上げに賛成した過去もある。だが、党内では、今回の牛肉輸入枠汚職事件で、ユドヨノ大統領が守ってくれなかったことへの不満が大きいと予想される。

もっとみる

第40回 ハティブ新財務相への期待(2013年 5月 30日)

5月21日、新財務相にハティブ・バスリ投資調整庁(BKPM)長官が就任した。新財務相は、インドネシア大学経済学部を卒業し、オーストラリア国立大学で博士号を取得、インドネシア大学経済学部経済社会研究所(LPEM)副所長などを歴任したエコノミストである。

もっとみる

第39回 ユドヨノへのネポティズム批判(2013年 5月 23日)

ユドヨノ大統領に対するネポティズム(縁故主義)批判が現れている。5月初めに、各政党から2014年総選挙立候補者名簿が選挙委員会(KPU)へ提出されたが、民主党の国会議員候補者560名のうち、ユドヨノの親族が15名含まれていたためである。

もっとみる

第38回 カディン内紛の背景(2013年 5月 16日)

財界を束ねるはずのインドネシア商工会議所(カディン)が内紛の渦中にある。4月26日、スルヨ・バンバン・スリスト会頭に批判的な9つの州商工会議所が中心となり、西カリマンタン州ポンティアナックで「臨時全国大会」を強行開催。暫定新執行部が選出される事態となった。この造反劇を仕切ったのは、カディン評議会のウスマン・サプタ・オダン議長であり、彼は「臨時全国大会」で暫定会頭に選出された。

もっとみる

第37回 外国銀行の台頭と特殊銀行論(2013年 5月 2日)

ここ数年、インドネシア国内では外国銀行の台頭への警戒論が出ている。中央銀行は2012年11月、資産5兆ルピア(約500億円)以下の外国銀行支店は資本追加または事業縮小のいずれかを選択することや、外国銀行支店は3年以内にインドネシア法人とすることなどを含む新政策を発表した。2013年3月には、次期中銀総裁のアグス蔵相が「外資系合弁銀行のトップにはインドネシア人が就くべき」と発言した。これらの動きを、

もっとみる