見出し画像

YOASOBI「アイドル」のヒットの理由と、相容れない人達についての持論

去年の暮れの話ですが、年末特番で長い歌番組が色々放送され、おそらく2023年最大のヒット曲といえるYOASOBIのアイドルを聴く機会が、テレビでは頻繁にあったと思います。
そんな中でTwitterにも各々感想が流れていた訳ですが、一つ、目に入ったあるツイートがありました。特にフォロワーというワケではなく、たまたま他の人が拡散したものだったのですが…
要約すると、

「アイドルを露悪的に歌ったこの曲が大ウケしたせいで、本職のアイドルまでカバーしているのが本当に酷い。ブームは今年いっぱいで終わって欲しい」

という、アイドルという曲の歌詞に対して嫌悪感を示した否定的なものでした。これに賛否両論が起こっていたのは想像に難くないと思いますが、私自身、これは危ない考え方だな…という印象を持ったんですね。

ヒットの理由、ヒットしすぎの弊害

まずこの曲が「アイドルを露悪的に歌った曲」かどうかという話ですが、確かに2:30まではそういう内容になっています。星野アイが嘘を正当化しているような自己本位なフレーズが並びます。ですがその後から、アイの人生観からの「本音」を吐露するフェーズにガラッと空気が変わり、大サビへとなだれこんでいきます。ここも含めて悪どい、と解釈するのであればもう考える余地もありませんが、少なくとも私は「アイドルという存在の醜悪さを歌った曲」とは到底思えませんでした。TVのOPとして流れていない部分に「肝」がある、そういう曲ですし、わずか3:45の間に一人の女性の人生が詰め込まれているような物語性があるところ、それが「推しの子」という作品に入り込んでいる人達にテーマソングとして刺さった…ことこそが大ヒットの理由ではないかと思っています。
加えて、最初に流れるのは90分ある第一話の最後です。つまり、星野アイの運命を見た後で聴く人が多かった。これは胸に残ります。

ですが、現在4億再生を越えているほどのヒット曲。これほど大勢に聴かれていれば、曲を最後まで聴かない、また聴いても曲解する、加え世間の流れに逆らいたい逆張り指向の人間にも届き、上記のツイートのような感想が出てくるのかな、とも思います。ひと昔前と比べると最近の曲は短いものが多く、総じて「最後まで聴かない人」が増えた影響なのかも…と感じることもあります。
昭和の頃から音楽に触れてきた人間としては、長くてもせいぜい5,6分なのだから最後まで聴けよ、と思わなくもないですね。

殿様気分のお客であるべからず

これも昨年公開のものですが、YOASOBIのアイドル、公式がライブ映像も上げていました。

香港での映像ですが、ライブ用の演出やアレンジ、客席との一体感が素晴らしいですね。私もこれまで音楽関連の記事をいくつか書きましたが、ライブ映像を観るのは大好きです。会場の盛り上がりにシンクロして、感動できるものだからです。

先日、舞台の話も記事にしましたが、ライブ、舞台が素晴らしいものになるのに必要なものの一つに、オーディエンスの存在も大きいと思っています。極端なことを言えば、観客が終始ブーイングを飛ばしていたりすれば、良いステージになりえませんよね。観客がステージ上に声援を送るからこそ、出演者にパワーを与え120%のパフォーマンスを引き出しますし、会場全体が熱気に包まれる、相乗効果に繋がるわけです。
「お客の質」、これは作品に大きく影響します。

先月、アニメの感想記事で他者のツイートを引用し批判的な意見に苦言を述べたことがありました。これは個人的感情から言った部分もありますが、何より「質の悪い視聴者」であると感じたために「良くない」と言っておきたかったんですね。もっとも、本当に作品側に問題がある場合もありますが、仮にそうであっても批評には慎重であるべき、と考えています。SNSでの発信は容易でありながら世界中に届く、危なっかしいものです。短絡的な批判がコンテンツを提供する側、応援している人間の双方にプラスに働くことがあるでしょうか?マイナス面は間違いなくあったとしても、です。

アイドルという曲を上辺だけの解釈で嫌悪している上記のツイートなどは、本質を履き違えた情報として新しいファンの可能性を摘む危険性があります。
それも折り込み済みで取り組まねばならない、今この時代にヒットする作品を作り出すことの難しさも感じた…そんな話でした。
基本的には肯定し、盛り上げていく方向で感想を発信する。
そういうお客でいたいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?