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別格扱いの初代ウルトラマン、初代ゼットンについて語ってみる

先日、ウルトラセブン第6話についての記事を書きましたが、昭和のエピソードが近年の作品にも影響を及ぼしている事例として、ゼットンの話をしたいと思います。

これも円谷公式のYoutubeチャンネルで公開されています初代ウルトラマン最終回の戦闘シーンです。

あっけない戦いの中の、圧倒的密度

有名な最終回なのであえて解説や説明をするまでも無いですが、ご覧になってわかる通り、ウルトラマンは良いところなく負けてしまいます。最終回に来て初めて見せる技、ウルトラキャッチリングで足止めを狙うも破られ、八つ裂き光輪はバリアで防がれる。格闘戦では押され早くもカラータイマーが点滅、なんとか押し返して起死回生のスペシウム光線を放つも吸収されてしまいます。それをそのまま撃ち返してきたかのようなゼットンの光線にカラータイマーを破壊され、ウルトラマンは倒れます。カラータイマーが弱点である、というような設定があったのかどうかは定かではありませんが、帰ってきたウルトラマン最終回でバット星人が「カラータイマーを狙え!」とゼットン二代目に指示している事から、なんとなくそうなっている、という感じでしょうか。

短い時間での戦闘ですが、ウルトラマンは定番の攻撃、これまで数多くの怪獣を葬ってきた技を一通り繰り出しているんですね。「あれを使えば勝てたかもしれないのに」という気持ちが起きない、敗戦なのです。初めて観たのは小学生の時でしたが、子供心にも「これは完敗なのだ」と突き付けられた気持ちがあったのを覚えています。

スペシウム光線が効かなかった時、明らかな動揺を見せるウルトラマンです

変な言い回しになりますが、未練のない戦いだったということですね。
ただただ、ゼットンが強い事を思い知らされます。思えばゼットンは、テレポート、バリア、格闘能力、飛び道具を兼ね備えていて全くスキがありません。ゼットンの登場時間も非常に短いものですがそれでも万能、最強という風格を漂わせるのに充分な描写がありました。
「あんなに強かったウルトラマンが、最終回だからって簡単に負けた」と言われる事もあるこのゼットン戦ですが、「無理矢理感」がない、というところが今見ても随分秀逸だな、と感じる訳です。

繰り返されて、相対的に格が上がる両雄

ウルトラシリーズは現在も作品を重ね、ゼットンも幾度となく登場しています。再登場のはしりとしては帰ってきたウルトラマン最終回の二代目ですが、サーガ、メビウス、マックスなどなど基本的に強い怪獣の代表格として出てくる事が多いです。その圧倒的な戦闘力を見せながら最終的には倒されていってる訳ですが、そうなってくると負けた初代ウルトラマンは弱かった?と思われかねない状況です。

ところが、私の観測する範囲ではそんな声を全く聞きません。
それどころか初代ゼットンが格別に強かった、という擁護論から再戦すれば勝っていた(事実そういう映像作品もありました)、という論もあり、後に続く後輩ウルトラマン、また別個体ゼットン達より格上だったと見られている、初代のウルトラマン、ゼットンといった印象です。

有名なスチールですが、この戦いを実によく表現しています

後続の作品達がゼットンの持つカリスマ性だけを拾っているような印象を持たれているのが一因だと思いますが、それくらい元祖たるこの最終回が当時の視聴者に衝撃を与え、語り草となっているという事ですね。
「ウルトラマンは凄い、ゼットンも凄い」と、長寿シリーズゆえの化学反応が起きた結果だと思います。おそらく、当時の制作スタッフはタイトなスケジュールの中で撮ったラストバトル、半世紀後の神格化など予想できてはいなかったでしょう。

観てみたくある、現代の「さらばウルトラマン」

こないだ、ブレーザー9話の感想記事を書きました。

原典たるウルトラQの第16話「ガラモンの逆襲」の続編として60年の時間経過を織り込んだ、実に見事なエピソードでした。
この回を観て、この方向性で初代ウルトラマン最終回の「続き」が作られたら、どんな話になるだろう…という興味が湧きました。
ただ、ウルトラマンに勝った強い怪獣ゼットンがまた出た、というだけでなく、全力を尽くしても敗れてしまったヒーローの最後の戦い…これに続く物語が、このブレーザー9話のような解像度と現代的アレンジで観てみたい、と思ったんですね。

叶うことはないかもしれませんが、いち特撮ファン、ウルトラマンファンとしての妄想、願望でした。

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