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イタリアにあった、御伽の国のような家#イタリア4

巨大な鉄格子の門から入り見えてきたのは、白と赤の壁で少し歪んでいるようにも感じる、グリム童話に出てきそうなそんな家だ。田舎で家族で農業を営みながら静かに暮らしているパウロの家族は、優しく出迎えてくれる。現役ナースとして働く奥さんのバレンティーナ、そして普段はローマの大学に通い週末だけ帰省する娘のキアラが、ウェルカムパーティーと称して豪華なご飯を用意してくれていた。

「チャオ!日本から遥々、よく来たね。3週間、よろしくね」
「うん、こちらこそ〜!本当に素敵な家だね!」

扉を開けた瞬間から俺を包み込むトマトソースとチーズの香り。思わず深く呼吸をしてみたくなるのと同時に、初めてのヨーロッパの家でのホームステイに期待が膨らむ。目の前に姿を表したのは小さな暖炉やワインセラー、そして見るからに熱そうな巨大オーブン。ついに本当にヨーロッパに来たんだ、、!



そして今日から俺の相棒になるのがシェパードのベラ。門に入ってすぐからお出迎えをしてくれて、ベロを出しながら飛びついてくるくらいの人懐っこさだ。俺は身長が高く、友人宅の動物などにも怖がられ、吠えられることがほとんどなのでベラが可愛くて仕方ない。

「ベラは本当に賢くてかわいいね!俺普段は身長が高いからかわからないけど、動物には基本好かれないんだ」
「へ〜よかったわね!ベラにとって大地はそんなに大きくないのかも。私の彼氏は195センチだもの。」とキアラが言う。

え〜〜〜〜〜〜〜!


俺の発言、恥ずかしすぎじゃん!一応185センチあるから日本ではなかなかに高い方だし、自慢げに身長の話しちゃったじゃん!そうだ、俺はヨーロッパにいるんだ。俺よりでかい人なんてザラにいるんだ。もう身長マウントは取れないってわけ。


ちなみにベラ(Bella)というのはイタリア語で美しいという意味。人間のように豊かな表情を持ち、美しい毛並みを持つベラには本当にぴったりな名前だ。彼女(ベラ)の行動や顔を見ていると、俺たち人間の会話を聞いているんじゃないか、そんなふうに思わせてくる。イタリアの小さな村の広大な敷地で豊かな自然を毎日走り回り、ご飯をもらって人間と一緒に眠りにつく彼女は、何を感じて生きているんだろう。どんな目線で、どんな時間軸で、何を見て過ごしているんだろう。動物を飼った経験がない俺は、そんなことを考えたことすらなかった。ここでの生活を続けていたら、動物の気持ちも少しわかっていくんじゃないだろうか、そう感じさせてくれるような自然と共存している家族と短期間だがこれから生きていく。


名前通り"美しい"ベラ


夏から秋に気候が遷り変わる頃、イタリアは毎日快晴である。朝は少し冷え込むものの、日中は雲一つない青い空。そして夕日は絵の具で書いたようなグラデーションを描いて沈んでいく。冷蔵庫の中のような、少し冷たい空気を深呼吸し、太陽を慈しみながら今日を終える。


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