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運とリスクをとれ

お年寄りに、若い時の自分に何かを伝えられるなら何を伝えますか?
と質問すると、誰に聞いても大抵似たような答えが返ってくるらしい。

僕は何故か分からないが何処に住んでも近所のお爺ちゃんお婆ちゃんに異様に気に入られるという特殊能力を持っている。
ビックリするくらい早朝から開催されている近所の井戸端会議で同じ質問をしてもやはり似たような答えが返ってきた。

幾つか納得させられる答えがあったが、一番いいなと思ったのは「もっとリスクをとれ」だ。

要は後悔しないように大胆にいけ、もしそれで失敗しても経験になるから。若い時の心労は買ってもせよ的なことだ。

どうせ年寄りの言う事でしょ。なんて思ってはならない。

人よりリスクを多くとってきたと思っていたが、流石は大先輩方。僕はまだまだリスクをとれていないようだ。

毎日遅くまで電気がついているのが見えて、努力はしているのは分かっているから、もっとリスクをとって、あとは運があれば上手くいくよ。
と優しく背中を押され、涙目になりながら中学の部活動以来出していなかった大きな声で返事をし、その日の井戸端会議はお開きとなった。よく分からないハンドソープも貰ったが、大変申し訳ないがそれは捨てた。(お年寄りから貰うよく分からないハンドソープほど怖いものはない)


運は良い方だ。強運と言ってもいいかもしれない。
運とリスクをとる。そういえば一つ思い出した。


19か20歳くらいの頃、駅の北口ロータリーを歩いているとギターの音と歌声が聞こえてきた。
こんな夜中に迷惑なやつだ、なんて思いつつも少しハスキーで高音の時はやや掠れる歌声の方へ歩いた。
アコースティックギターが大きく感じる、小柄なショートボブの女の子。人生で初めて一目惚れをした。

木星ほどのスピードで脳味噌を回転させ、考えうる最大のナンパっぽくない言葉で連絡先の交換とデートの約束に成功した。

同い年の彼女は隣の県からわざわざ僕の住む町の専門学校に通っていた。
彼女の地元は田舎だったが山と海に囲まれた綺麗な所で、片道1時間半かけてよく会いに行ったものだ。

ただ真っ直ぐ伸びる山道を助手席の彼女が歌うハンバートハンバートやハナレグミをBGMに走るのは好きだったし、瀬戸内に沈む夕陽をテトラポッドに座って眺めるだけの時間が好きだった。

その日は朝陽を見ようと海沿いに出かけた。
そろそろ告白しようかな、なんて考えも当然頭の片隅にはある。
陽が昇る時間よりも早く着き過ぎた僕たちは車で待つことにした。
暫く話していると彼女の手が僕の肩に伸びてきた。
ここからは文章にすると生々しいので割愛するが、彼女はそういった行為を迫ってきた。

みずがめ座AE星ほどのスピードで脳味噌を回転させた。
当然僕も雄だ、有難い展開ではある。だがここまで丁寧に丁寧に彼女との距離を縮めてきた。ここで応じてしまえば一回きりの関係、もしくはそういった関係で終わる気がした。彼女の事を好きだったのだ。


拒否したとき、この世界でいちばん汚い朝陽が昇っていた。



それからは彼女に距離を置かれ、会う事もなく、僕の一目惚れは終わった。




甘酸っぱい話だ。
今は出来ることなら運転なんて1秒もしたくないし、デートは居酒屋にしか行かないような下衆になった男の思い出話だが、「運とリスクをとる」という点で見ると良い教材ではないだろうか。

一目惚れするほどの女性を偶然見つけ、連絡先とデートの約束を得るなんて、運に出会ってそれを掴んだとしか言えない。

そういった行為を拒否した、これはリスクをとれなかったのだ。
今となっては心と体どっちが先だろうが何とも思わないし、体が先の方が多いかもしれない。
あそこでリスクをとれていれば素敵な未来があったかもしれないし、無かったかもしれない。
その先はリスクをとった人間にしか分からない。

僕はまだまだ若いけど、朝陽を待っている当時の自分に高校の体育祭の校歌斉唱くらい大きな声で「リスクをとれ」と言いたい。



去年の11月下旬に、運とリスクをとりました。

仕事の関係で国内外の古着を取扱うディーラーの方と出会い、古着の展開を開始しました。



古着の展開には正に運とリスクが付き纏います。
いい商品をピッキング出来るかはその時の運次第。
オリジナルやリメイクは売れなくても製作過程で技術を得れるが、古着はただ在庫が残るだけ。

僕が年寄りになった時
「あの時リスクとって良かったな」と言える未来にするために頑張ります。


運とリスクをとったatelier daidye(d)を今年もよろしくお願いします。









あのさ、、、書いてて思ったけどさ、


あの子ただのクソビッチだっただけじゃね!?!?!?



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