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#3 左ききの野良犬と逆さまの虹


〈丁度いい例えとは〉


会社の各階にある会議室では昼休憩の時間になると各階の女性陣が集まって昼飯を食べながら談笑する小さな女子会が開催される。
男たちの立ち入りは暗黙の了解的に禁止されているのだが、13時からの会議の準備があったので思いつく最大限優しいノックをしてドアを開けた(優しすぎてノックの音は聞こえていなかったのかもしれない)

自分たちだけの空間に異物が混入した瞬間は決まって場が静まるものだが(カラオケや個室居酒屋で店員さんが入ってきたとき)女子会の勢いは一切緩むことはなかった。
自分は透明人間なのかもしれないと疑いつつ、会議の準備にとりかかる。

聞き耳を立てながら五分ほど作業をしていると、例えで領域展開を使うのはダサいという話題が始まった。
身に覚えがあった僕は、それってどういうこと?
と女子会に突撃した(ここでは一瞬場が静まった)

聞いた話をそのまま下記すると、
飲み会のテーブルめっちゃ盛り上げてたり、現場めちゃくちゃ仕切ってたりする人に、あの人領域展開してるよって例える人ダサいよね。定番の例え過ぎるからせめて技名にしろよ。

という内容だ。
分からなくもないが、仮に無量空処で例えたら伝わらない可能性を考慮して領域展開で例えたという可能性は考えなかったの?
と言いかけたが新卒の子を相手にそれは大人気ないと飲み込んだ。

会議が終わり会社を出た。二月なのに気温の高い日で、春みたいな風が吹いていた。

「風が柔らかいですね」
とさっきの子が言ったので僕は
「HOWEVERか」
と言ったが、顔にはハテナマークが書かれている。

「いや、柔らかな風が吹くってあのGLAYの曲、HOWEVER。GLAYで例えたらダサいんでしょ?だから
HOWEVER 。」

「あー、そこは曲名分かんないんでGLAYで大丈夫です」




丁度いい例えとは。


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