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ー詩と形而上学ーNo.37

或る、雨について  


或る、雨について
語ろうとしている
この白雨が
概念ではないことを知った


わたしの傘は
どこへいったのだろう


バスに乗り
列車に乗り
飛行機に乗り
南半球の最果てまで
旅をしておくれ

ボリビア辺りの
紺碧の
その空を
観てくればよい

雨は、要りますか
宿命のような雨は

ベランダで
金魚鉢が
鳴いている
かつての
青い季節のままで

冷えて
蒸発して
乱反射して
交差点を照らす


誰も弾かない
ピアノが
濡れたまま
水溜まりが
反響している

或る、雨について
語ろうとするとき
包まれる
寂寞と
寂光

消えてしまっても
消えないもの が
たしかに
在った

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