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叔母と甥

姉には息子が二人いて
そのうちの一人、長男は私によく似ている。

母親である姉よりも叔母である私の血が強い気がしてしまう。

 
真面目で臆病で心配性で優しい。
周りよりも身長が高いのも似ている。

義兄は赤ちゃんが生まれた時から要領のいい子どもになってほしいと願っていたが
残念ながら願い届かず、要領は悪い。

 
甥っ子長男がイジメに遭ったらどうしよう、と私は小さい頃から心配していた。
我が家の家系はイジメにおいて被害者になりやすい。
性格上、いじめられるとしたら甥っ子次男より長男だ。

 
空手で黒帯をとり、がたいはいいが、根は優しい。
イジメられた時、母親に言わずに耐えそうで怖かった。
私はよく、母親に言えないことがあったら叔母を頼るように伝えた。

 
甥っ子長男は成績が特別よかった方ではなかったが
母親である姉は頭がよい。

甥っ子は母親がライバルだった。
弟より友達より母親に負けたくないようだった。

 
それはかつての私に似ている。
昔、勉強をしても勉強をしても姉には勝てなくて
私はいつも悔しかった。

 
小学校高学年の頃、なりたい職業ができた甥っ子長男は勉強への意識や取り組む姿勢が変わり、中学校に入学すると塾に通いたいと希望し、入塾した。

成績はどんどん上がっていったようだが
やはり母親には勝てなくてもどかしかったようだ。

 
部活は母や叔母、祖父(私や姉や父)と同じ卓球部に入部し、副部長になった。
姉も副部長だったので親子だと思った。

部活を引退してからは受験生として勉強に励みつつ、どの高校を目指すか悩んでいるらしい。

 
私は甥っ子長男といた時に受験について相談された。
だから私は実体験を踏まえて話した。

 
高校は近場だと部活やバイトや自分のために使える時間が多いから近場がいいのではないか。
私は遠かったので金銭的にも時間的にも大変だったことを伝えた。

また、進学校だと周りに頭がよい人がたくさんいることや予習や復習が大変だから、ギリギリで合格すると後が大変なことを伝えた。

 
ハッキリとは言わないが、甥っ子は姉の母校を目指しているのではないかと思った。
ただ、甥っ子の家からその高校はなかなかに遠いし、レベル的にも背伸びをする感じで合格するかしないかはバクチになる。

 
甥っ子の家の近くには甥っ子の今の成績なら余裕で入れるような高校があるので、そこがいいと私は思っている。

ただ、私も中学時代、先生や親がワンランク下げるように言っても、結局は姉と同じ高校を目指した。
そこでやりたいことがあったからだ。
模試の判定はBで、結局私は落ちて行きたくない私立高校に行く羽目になった。

 
私は甥っ子に同じ思いは味わってほしくなかった。
だけど甥っ子は私に似ているから、それでも可能性があるなら挑戦するような気もしないでもなかった。

 
私の話に甥っ子がどう感じたかは分からない。
ただ、こんな道や選択肢もあると伝えたかった。

 
また、目指していた職業にしても、迷いが出てきたらしい。
年を重ね、現実が見えてきたのもあるだろう。

 
だから私はこうも伝えた。

高校は普通科に行き、大学で何を学ぶか高校時代に考えたらいいし、大学時代に何を仕事にしたいかより考えたらいいのではないか、と。

 
私自身も中学時代から福祉職に就きたかったけど、当時は高齢者福祉の分野しか福祉の道はないと思っていた。
大学時代に障害福祉の道もあると知り、今の仕事に繋がったと伝えた。

仕事の種類はたくさんあって、今知らないであろう仕事もたくさんあって、好きなことを突きつめていくと何かしらで道は繋がるだろう、と。

一時間以上そんな話をしただろうか。

 
甥っ子は色々話した。
友達のこと、学校のこと、受験や勉強のこと。
成績表も見せてくれた。

 
思春期だなぁと思った。
色々悩み、感じる年頃なのだ。
それでいて素直だとも思った。
思春期に入ってからも叔母である私にこんなに色々話してくれて、嬉しかった。

 
それから数ヶ月後、甥っ子は5教科でオール5をとったと教えてくれた。

姉は一回とったことがあるが、私は4教科5しかない。

 
すごいことだと思った。
努力だとも思った。
根性でここまで上りつめてきた。

甥っ子は好きな科目と苦手科目で差があるし、成績表や模試の結果を見るとムラがある印象だったが、オール5をとったということは学校の勉強で成果を出したということだ。

 
次はオール5をとれる保障はない。
むしろ難しいと思うが、それでも今回は本当に頑張ったと思う。自信に繋がるだろう。

 
私立受験の日は近づいているし、私立高校はどこを受験するか決めたようだ。
あとはその先の県立高校だ。

どうか自分を磨き、自分と向き合い、自分に嘘をつかず進路を決めて欲しい。

 
叔母は遠くから応援している。

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