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忘れていた本

私は退職する時
潔く捨てる物は捨てたし
持ち帰ってきた物に関しては
未だに段ボールに入ったままだ。

 
前の職場は辞めたくないのに辞めるしかなかったから
前の職場の物を見て
いちいち感傷的になりたくなかった。

いっそ全て捨ててもよかったのかもしれない。

 
 
先日
元同僚から私の名前が書かれた本があると聞き
私はへぇ~と思った。

それを置いてきたことは覚えていない。

 
利用者はそれを見つけて
ずっと本を見ていたらしい。

「ともかちゃんは取りに来るのかなぁ?」

と。

 
私はその話を聞いた時に号泣した。

 
いっそそれを口実にまた施設に行けたらいいのに
そんなことできるはずがなかった。

 
会いたい
会いたい
会いたい。

 
会いたい気持ちはきっと同じなのに
大好きな気持ちはきっと同じなのに
どうしてあの時
退職するしか道はなかったのだろうか。

 
新しい職場で働いていても
「あの時退職してよかった。」とも「今の職場が一番。」とも思えないし
周りのレベルは高いしで
自信は取り戻せない。

 
前の職場で一番大切なものを守れなかった私が
どうしようもなく弱いこんな私が
いつまでも私の中から消えないでいる。

 
あの日のように笑い合えたら。
あの日のようにまた隣にいられたら。

頑張ったらいつか
また会える日が来るのだろうか。

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