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婚活パーティー【違う、そっちじゃない】

「犬と猫、どちらが好き?」

人生で何回も聞かれ、また時に私も誰かに投げかけた質問。

私はこの質問への回答に悩んだことはない。
私は絶対的な猫派だからだ。

 
猫はなんでもかわいかった。
子猫も老猫も雑種でもなんでも。

 
猫がいると世界は平和になる。

私は笑顔になり、猫なで声になり
あやしたり、写真を撮るただの阿呆になる。

猫を飼っている友達や彼氏の家に行っては猫を愛で、写真を撮り、もしくは写真を要求し
猫喫茶に行ったり、道端の猫に悶えるくらいには
私は猫好きだった。

 
一方、犬は苦手だった。
昔、野良犬に追いかけられたからだ。

 
何故犬好きの人は周りが犬好きと思っているのだろうか。

よく吠える犬や人懐っこい犬が私の近くにいたり、まとわりつくだけで
内心ヒィッと怯えていた。

犬好きの人に悪気はないし
「あなたの家の犬、苦手なんです。」とバカ正直に言う勇気もなく
私は犬好きの人の悪気のなさにより更に犬苦手が強まった。

 
大人になったら少し緩和し

よく吠える犬や獰猛な犬、まとわりつきすぎる犬は苦手

と、なった。

 
犬の性格によっては犬もかわいいと思うゆとりができた。

 
 
世の中には様々な婚活パーティーがあり
その中で、犬好き婚活パーティーと猫好き婚活パーティーを見つけた。
本当になんでもありだとつくづく思う。

結婚後に犬を飼いたいか、猫を飼いたいか。
はたまた別のペット派か。ペットは飼いたくない派か。

確かにこれは結婚観の一つで大切かもしれない。

 
私は犬や猫を飼ってこなかった人生だから
ペットは飼わない、もしくは、飼うなら猫を飼いたい派だし
猫好き婚活パーティーに参加してみてもいいかもしれない。

そう思った私は猫好き婚活パーティーに申し込みをした。

 
猫好き婚活パーティーの会場は自然豊かなとある場所で
私は受付でトイレの有無を聞き、トイレに行った。

 
以前トイレがない場所で婚活パーティーがあり、軽いトラウマだったが
今回はトイレがあったのでよかった。
男女一つずつしかなかったので参加人数に対しては少ないとは思ったが(参加者、スタッフを入れて合計30人くらい)。

ロッジのような建物の敷地内に椅子が並べられ
参加者は好きな場所に座るように言われた。

 
受付にはラブラドールレトリバーが座っていた。

今日は猫好き婚活のはずだが
何故受付に犬がいるのだろうか。
私は申し込みを間違えただろうか。

婚活パーティーが始まる前から軽い不安を覚える。

 
猫好き婚活パーティーならではで
飼い猫を連れてきてもいいという話だったが
誰一人飼い猫は連れてきていなかった。

 
やがて開始の時間になり
私の足に触れるような形でラブラドールレトリバーが会場を練り歩く。

婚活パーティー参加者はラブラドールレトリバーにキャッキャする。

 
婚活パーティーの最初は動物と触れることでどんな癒やし効果があるかの講義で
その講師の方の飼い犬がラブラドールレトリバーだと分かった。

講義中、講師の方の足元に伏せていたり、時に会場を練り歩くラブラドールレトリバー。かわいい。

 
「今日は猫好き婚活パーティーですが、まぁ猫好きの方は動物好きですから、犬も猫も好きですよね。」

という講師の先生の元
犬のもたらす効果が語られ、犬が会場を練り歩く。

 
いや、違う。
犬好きが必ずしも猫好きとは限らないように
猫好きが必ずしも犬好きとは限らない。

 
違う違う、そうじゃ、そうじゃない。

私の中で鈴木雅之が歌い出す。
だが、誰一人講師に余計なことを言うことはなく
猫好き婚活パーティーは犬の話が進む。

 
講師の方は某場所でドッグ喫茶をやっているらしく
そこに犬好きが自然と集まり、それが縁で付き合う方もいると話した。
機会があればきてほしい、と。

この講師の方は
今日が猫好き婚活パーティーと本当に理解しているのだろうか。

 
そのドッグ喫茶がまた婚活会場から絶妙に遠く
なかなか気軽には行けない場所なのも個人的には少し引っ掛かった。

 
犬講義が終わった後は
主催者により男女混合グループいくつかに分けられた。
今からレクレーションをするという。

 
レクレーション内容はグループ全員で音や声を出さずに動きでとあるスポーツを表現し
他グループはそれが何のスポーツか当てるという内容だった。

 
やはり猫は全く関係ない。

猫好き婚活パーティーとは一体なんなんだろう。

そんな本音を声にはせず
大人しく主催者に従い
自分のグループの人達と何のスポーツを表現するか話し合いをした。

 
簡単な自己紹介をした後
グループの某男性Aさんが、とある球技をやろうと提案した。
どうやらAさんがやっている球技らしい。

 
Aさんは自己紹介したばかりのはじめましての私達に
誰がどの動きをすべきかを細かに指示し始めた。
頼もしいとは感じなかった。
俗に言う、仕切り屋だ。

面倒くさそう、と私は思い
その人に従った。

同グループの人はみんな同じ気持ちだったのだろう。

 
私達グループがしたのは話し合いじゃない。
Aさんの指示に従っただけだ。

 
グループごとに発表をしあった際
他グループの方が話し合いをした感が伝わり、羨ましかった。

 
その後、男女で各一列に並んで座り
一般的な婚活パーティーがスタートした。

プロフィールカードを見せ合い、決められた時間全員と話すあれだ。

 
猫好き婚活パーティーなだけあり、男性は実家で猫を飼っていたり、一人暮らしで猫を飼っている方が多かった。

ビビッと来る方は特にいなかった。

 
強いて言えばBさん、Cさんが話しやすいと思い
Aさんは話すほどにアクが強いと感じたくらいだった。

 
プロフィールカードを交換して話している際
例のラブラドールレトリバーはまた会場を練り歩いたのだが
何故か私の足元で過ごす時間が長く、私は癒された。

 
今日一番気に入った異性(♂)はラブラドールレトリバーだな。

そう確信した。

 
全員と話し終わった後
私含め数人の男女はラブラドールレトリバーの周りにいて
犬を触ったり、愛でたりしながら癒された。
おそらく今、犬の周りに集まっている男女は特にいい人がいなかったのだろう。

 
女性陣から話を聞くと
一番遠くから参加した人では東海地方から参加していた。関東でさえなかった。

何故そんな遠くから参加をしたのだろうか。
私も他地域の婚活パーティーにも参加しないともはや出会いはないだろうか。

婚活の闇を感じた。

 
「はいはい、犬と触る時間じゃありませんよ。男女ペアで必ず話してください。」

そう主催者に促され
しぶしぶ私達は誰か異性と話した。

 
私はBさん、Cさんと話した後
Aさんに誘われて話した。

 
婚活パーティーの最後にアンケートと誰が気に入ったかナンバーを書き、用紙を提出した。
両想いなら後日主催者経由で相手のマスクなし写真と連絡先が送られてくる。

 
コロナ禍の婚活パーティーは基本的にマスクをして参加なので
相手の鼻や口元は最後まで分からないままなことが多い。

私は軽い気持ちでBさんとCさんの名前を書いた。

 
猫好き婚活パーティーの後は犬好き婚活パーティーの予定らしく
準備があるから早く帰るようにと促され、私達は追い出されるような形でサッサと退散した。

猫好き婚活パーティーは前座でしかなかったのかもしれない。

 
猫好き婚活パーティーで私に一番優しかったのはラブラドールレトリバーだった。
犬も案外いいのかもしれない。

 
この後、友達とライブに行く予定だった私は気持ちを切り替え
ちゃっちゃとライブ会場へ移動し
ライブを楽しんだ。

 
数日後、主催者からAさんの連絡先が送られてきた。
どうやら私はBさんのナンバーとAさんのナンバーをはき違え、間違えて書いてしまっていたらしい。

書いていないはずの、私が希望していないはずのAさんの連絡先や前向きなコメントにゲンナリし
私はため息を一つ吐いた。

私が一番ないなと思ったAさんに
まさか女性の中で一番気に入られたのが私だったとは。

 
婚活の道は今日も険しい。

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