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孤独を手放さないで

あたなはどこに行っても孤独を手放さずに入れるわ
ちひろさん(2023)

映画にこんなセリフが出てきた。
大好きな言い回し方だなぁとしみじみ。

孤独を知る人は強いなんてよく耳にするが、その意味は未だによくわからない。
辛い過去を経験した人とか、人に言えない何かがある人とか、そんな人たちが所謂一般人より強いってことなのか。それなら所謂一般的な家庭で、そして環境で育った自分は当てはまらないのかもなんて失礼な事を勝手に考えたりしてしまう。

最近、ここ数ヶ月ほどか、自分が肯定的に捉えている「孤独」の意味が少しながらわかってきた。
それはまさに、冒頭の映画のセリフそのものだ。

隠し事が多い人。
人と全く話さない人。
プライドが高いせいで周りと距離を置いちゃう人。
こういう人たちも、本人からしてみれば孤独なのかもしれない。

でもなんかそれって少し違うくて、
冒頭のセリフに出てくる孤独はもっと人間味があって野生的に思える。

あたなはどこに行っても孤独を手放さずに入れるわ
ちひろさん(2023)

映画を見終わった後に近くのコンビニに散歩に行った。
その道中でセリフが何を意味するのかを考える。
このセリフ、もしかしたら「あなたがあなたとしていれる時間・空間は、あなたがどこに行っても手から離れないわよ」って意味なのかなと思った。

誰かが周りにいる時も、誰も周りにいない時も、私は私なんだと無意識に自覚してる人。誰に対しても同じ熱量で接することのできる人。周りから離れるために一人になるんじゃなくて、自分と一緒にいたいから一人になるような人、そんな人のことを「孤独」っていうのかな。
書くのは簡単だけど、自分がどうかって言われれば、そんなことできるほど心の余裕はない。どこかで自分に自信が持てなくなったり、折れそうになったり、誰かに八つ当たりしたり、そんなのの連続である。

そう考えると、「ちひろさん」に出てくるちひろは孤独な人だった。
恋愛の駆け引きができなくて、嘘が下手で、思ったことをすぐ言ってしまって、人が見ていなくてもいただきますとご馳走様を言って、バイト先の知り合いに話しかけるのと同じようにホームレスのおじさんや小学生に話しかける。

世の中にはいろんな人がいて、自分もその中の一人であること。
自分が他人を見るように、他人も自分を他人として見ていること。
彼女はそれを良く理解しているように見えた。

もちろん、彼女も気分が落ちることはあるらしい。
でもその気分の落ちさえも、彼女にしてみたら「お久しぶり」な出来事なのだ。

ちひろさんみたいに強くはなれないだろうし、多分ちひろさんも弱い部分があるのは確かだ。

でもいつか、自分が誰であるかを理解した孤独な人になりたい。



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