【詩】 指輪

まだ、義務教育が完全には開けやらぬ時分
私は身分不相応な高価な指輪の為に
一心不乱に時間を浪費し
ようやく手にしたそれをお前と私とで
交互に指にはめ、泣きながら、
これ以上にない幸せだね、と、言って
我々の未来を呪った

ところで、穢れのない心は
その純潔さが潤滑油となって
我々の指はその指輪からすぐに逃れた

その指輪が幾年もの歳月を重ねて
いままさに目の前にある

あれほど希望に輝いていたかに見えた指輪が
いまはドス黒くくすみ、見る影もない

こんなものにいったいどれほどの
価値があったのか!

たとえ、どれほどの代物であったにしても
こんなちっぽけな人工物で
我々の未来が拘束できるはずもない

ただ、それがわらかなかったのだ
恋の感情もカネで済ますような無粋の
こどもには

あぁ、それでもお前はあの忌々しい儀式を
未だに続けているだなんて!

悶え苦しむほどにその身で
知ったではないか
そんなまやかしはまるで
自由の心には通じぬ

たとえ、一国の大金をつぎ込んだとて
同じこと!

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