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「SOCIAL OUT TOKYO、終わっちゃったのかなぁ?」「バカヤロー! まだ始まっちゃいねーよ」

今から1ヶ月ほど前となる2018年12月14日。都内を一望できるオフィスビルの窓から眺める、どこか寂しげな年の瀬の東京。キッズ・リターンのラストシーン、金子賢演じるマサルの「始まっちゃいねーよ」の一言が、師走の空に染み込むように消えたような気がした。

その場所で行われていたのは、「SOCIAL OUT TOKYO '18」の最終回。最後を締めくくったのは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という創業者・山口絵理子さんの熱い思いとともに挑戦を続ける株式会社マザーハウスから、その経営面を支え、二人三脚を続けてきた副社長・山崎大祐さんだ。語られたのは、新たな事業を模索するすべての人に届けたい、珠玉の言葉の数々だった。


エモめなテンションで始まったところすみませんが、
「SOCIAL OUT TOKYO」って何ですか?

はい、年も明けたということで、エモい感じはこのへんにして、テンションをもとに戻します笑

「SOCIAL OUT TOKYO」って何ですか。この質問、よく聞かれるんですが、そのたびに答えるのに一苦労しています。僕が口ベタというのもありますが、あまり近しいプロジェクトがないので、例えるなどしてうまく言い表すのが難しい。まぁ、ざっくり言えば、「サステナブルな社会づくりに挑戦し続けるリーダーと、企業の未来を担う担当者が一堂に会して、これからの時代に求められる企業活動を模索するための事業共創プロジェクト」なんですが、う〜ん、わかったような、わかんないような笑

1年前のちょうど今頃に企画・プロデュースを開始して、5月末からひと月に1度のペースで全9回、半年以上にわたって行ってきました。企画だけでなく、運営やらファシリテーションやらレポート作成にサイトの更新やら、とにかく何から何まで担当していた僕の2018年は、このプロジェクトに費やされたと言っても過言ではありません笑 幸いなことに、何の実績もない初回にも関わらず、スマイルズさんやキリンさん、コクヨさんやニチガスさん、僕の古巣であるソフトバンクなど、一業種一社を基本に、大小様々な企業15社の担当者、計30名近くにご参加いただくことができました。

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なぜブランディングカンパニーが
こんなプロジェクトを始めたのか

これもよく聞かれます。なんなら、社内の人からさえも聞かれます笑 僕が所属しているAMDという会社は「クリエイティブの社会的価値の向上」をミッションに、企業や商品のブランディングや、それに紐づくクリエイティブの制作をしてきました。企業が抱える本質的な課題に迫るご提案を行なうためには、クライアントのビジネスそのものや、その先にある社会にまで立ち返り、「いま、そして、未来に向けて、その企業は何をしていかなければならないか」を考え抜く必要があります。そうしたことを、企業担当者自らが実践的に学んでいく場があってもいいのではとの思いから、SOCIAL OUT TOKYOを立ち上げるに至りました。

時代の流れに伴うブランドコミュニケーションの変化もその背景にあります。モノが飽和状態にある今は、企業のビジョン、商品のストーリーなどを通じて、「自分らしいと感じるか」「自分を表現できそうか」といった自己実現的な便益が重要視される時代。ネット社会によって情報の「透明化」や「分権化」が進み、企業のあり方や立ち振る舞いまでがブランドとみなされるようにもなりました。

市場の成熟とリーマンショックで見えた資本主義の限界、震災を通じた意識の変化、山積する社会課題、ロボット・AI技術の台頭などにより、「私たちは人間としてどう生きていくべきか」という哲学的な問いへの意識が色濃くなっていることは、ここ数年の売れ筋の本をざっと眺めるだけでも、実感として感じられると思います。

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時を同じくして国連では、SDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)という、2030年に向けた社会的課題における17の国際目標が採択され、日本でも世界から注目の集まるオリンピックに向けて、いよいよ本腰を入れた実装フェーズに差し掛かってきました。

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これらの要因が複雑に重なり合って生まれている「人生における社会的意義」「人間らしい生き方」への意識の高まりは、当然ながら企業のブランドづくりにも大きな影響を及ぼし始めています。これからは、本業とは別で行なうCSR活動ではなく、本業そのものにサステナブルな仕組みや、社会的意義を取り入れ、ブランドコミュニケーションを通じて「生きるに値する人生の提案」を行っていくことが欠かせなくなるでしょう。僕たちはこの状況を、企業が自社の原点や理念をもう一度見つめ直し、これからの事業のありかたを探求する絶好の機会と捉え、その学びの場、実践の場として、このようなプログラムを企画した、というわけです。

この社会背景の部分については、昨年末に登壇した宣伝会議のイベントで詳しく話しているので、もしよければそちらもご覧ください。


会議を捨てよ、社会へ出よう。

このご時世、社会課題やサステナビリティーに関するセミナーやシンポジウムは全国各地でたくさん開かれています。僕も実際にいろいろ足を運びましたが、スーツを着たおじさま方が集まって、深刻な社会課題に対して真正面から考え、あれやこれやとおカタい意見を言い合うものがほとんどでした。それ自体を否定する気はないですが、個人的には、こういったテーマほど理性だけでなく感性が重要で、やらないといけないから、ではなく、自分たち自身が楽しみながら、やりがいを持って取り組めるデザインになっていないと、大きなアクションにつながらないのでは、と感じています。

社会課題から逆算して、頭を抱えながら事業を検討する、言ってみれば「ソーシャルイン」のアプローチではなく、とにかく自分はこれがやりたいんだ、これが好きで、活動として広げていきたいんだ、という熱い思いをもとに、社会に発信していくほうが気持ちがいいし、世の中からの支持も集めやすい。マーケ用語で言うところの、「マーケットイン」ではなく、「プロダクトアウト」のようなイメージですね。

そこで、そういった「ソーシャルイン」の逆となる「ソーシャルアウト」をコンセプトに、自分が本当にやりたいこと、自分の好きの原点を見つめ直し、他の人や企業のリソースと掛け合わせることで何ができるかをメンバー全員で考え、小さな一歩をまず踏み出してみる。言ってみれば、究極の公私混同。その実践の場として企画したのが、SOCIAL OUT TOKYOです。

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スマイルズの遠山さんによる基調講演に始まり、キリンの坪井さん、スノーピークの山井さん、TOKYO油電力の染谷さんやTBMの山﨑さん、早稲田大学院の川上先生、greenz.jp、WIRED、Discover Japanといった著名メディアの編集長など、まさにソーシャルアウトと言える、好きを起点にした活動や、サステナブルな取り組みをされている方、あるいはそういった活動をサポートしている方、大企業からベンチャー、アカデミック、メディア、挙句の果てにはJAXAまで笑、多種多様なバックグラウンドの方々、総勢16名にゲストとしてご登壇いただきました。初回にも関わらず、こんな豪華な方々にご協力いただき、今後が思いやられます笑

ゲストの皆さまのトークは、レポート記事として一般公開しているので、もしよければそちらもご覧ください。僕ともう一人、社内のコピーライターがタッグを組んで、思いっきり筆を振るって執筆・編集しています笑 ほんと毎回毎回、胸にグッとくる金言ばかり。「(登壇者の)社内でも評判です」「ファンコミュニティーでもシェアされてました!」「新入社員に読ませたい」「とっても丁寧に仕上げられていて、心がこもっている」「これ、書籍化しないの?」といった本当に嬉しい声もいただいているので、なんとかしたい。頑張ります。

もちろん、単に話を聞いて終わり、ではなく、毎回のようにグループワークを行い、半年以上の時間をかけて相互理解を深めながら、具体的な企画のアイデアを実践的に検討していきました。

10月には、スノーピークさん全面協力のもと、新潟・燕三条の本社キャンプフィールドでもワークショップを開催。オフィスビルの閉塞的な会議室で考えていても良いアイデアなんて生まれない。もっと世の中とふれあい、楽しみながら、これからのサステナブルな事業を考える。そんなプロジェクトが掲げる「会議を捨てよ、社会へ出よう。」のスローガンにぴったりの素晴らしいフィールドで、実際にキャンプを楽しみながら距離を縮めたことで、自由闊達な議論やアイデアがたくさん生まれました。

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世の中の事業創出の視座をひとつ上げる

プロジェクトを企画・プロデュースした僕と大畑は、共にもともと新規事業創出の経験があるのですが、大畑曰く、新たな事業を企てる際、どの「視座」でビジネスに向き合うかが非常に重要とのこと。担当者なら部全体、部長なら事業全体、事業部長なら企業全体など、物事をひとつ上の視座から俯瞰することで、より本質的なアプローチが可能になる一方、企業が自社だけで新規事業を検討する際、その視座の高さには限界があるように感じているそう。

自社という枠組みを取っ払い、「世の中全体」という視座から、企業も、業種・業界も、NPOも行政も関係なく、世の中の企業やリソースをどう活用して、社会をどのように変えていくのかという高い視座を持って検討することで、より本質的な事業の企画ができるんじゃないか。特にSDGsみたいな大きな社会課題に対峙する際は、その視座が非常に重要となるはずだ、と。

そこで、SOCIAL OUT TOKYO立ち上げの際には、世の中の事業創出の視座をひとつ上げるべく、異業種連携、コレクティブ・インパクトのアプローチを意識し、自社だけでは困難なSDGsなどの社会課題へのアプローチが可能となるようなプログラムになるよう、2人でデザインしていきました。

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夢は大きく、まずは小さく

今回、プロジェクトからは5つのサステナブルな企画の種となるアイデアが生まれましたが、正直、いきなりウン億円規模のビッグプロジェクト誕生!というようなことは、期待もしていなければ、そこを目指しているわけでもありません。ソーシャルアウトというアプローチ自体、まずは自分の「好き」を起点に小さく始めて、仲間を増やしながら少しずつ広げていくものだからです。そういう意味では、このプロジェクトを通じて改めて気づけた自らの気持ちに向き合いつつ、生まれたアイデアの種を大切に育てていくことが重要。実際に現場を知るゲストたちから毎回のように学びや気づき、こころに深く刺さる大切なメッセージを授けていただき、マインドセットや行動が大きく変わったいう声も聞いています。その奮い立った想いとともに、まずは一歩、とにかく一歩、踏み出すこと。自分にとっての2019年も、そういう年にしないとな。

この企画自体、「こんなことをやってみたい!」という、僕や大畑のまさにソーシャルアウトな思いから実現に至ったプロジェクトです。冒頭に拝借した北野武巨匠の「終わっちゃったのかなぁ?」「バカヤロー! まだ始まっちゃいねーよ」じゃないですが、ほんと、まだ何もかもこれからの状態。常に試行錯誤を続けて成長し続ける必要があると感じています。年次の枠組みを超えるような構想もあれば、企業や地方、学術機関、メディアなどとのコラボレーションの話もあったり。直近ではプロジェクトの模様をムービーにしたり、某著名メディアからの取材の話があったり、生まれた企画のアイデアの実現に向けて動き出したりと、いまだにバタバタしている今日この頃。限られたリソースの中、全部やる!というのはなかなか難しいので、今後どのような展開にしていくのか、改めて検討しないとな。

2019年、やるぞ。

今年もどうか、よろしくお願いいたします。(メンバーで再び集まって行った新年会も、楽しかった!)

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*2019年2月22日追記:
プロジェクトのダイジェストムービーが公開されました!



<このnoteを書いた人>
Daiki Kanayama(Twitter @Daiki_Kanayama
1988年生。大阪大学経済学部を卒業。在学中にインド・ムンバイ現地企業でのマーケティングを経験。ソフトバンクに新卒入社後、孫社長直下の新事業部門に配属。電力事業や海外事業戦略など、様々な新規事業の企画、事業推進に従事。創業メンバーとしてロボット事業の立ち上げを経験後、専任となりマーケティング全般を担当。2017年、プランナー兼コピーライターとして、活躍の舞台をブランディングを軸としたクリエイティブエージェンシー AMD ltd. に移し、CSVやSDGsに絡んだ新規事業、新商品サービスの企画、自社事業となるSOCIAL OUT TOKYOなどを担当。2020年、ビジネスインベンションファーム I&CO にエンゲージメントマネージャーとして参画。

受賞・入賞歴に、Clio Advertising Awards、Young Cannes Lions / Spikes、Metro Ad Creative Award、朝日広告賞など。

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