ボジョレーの自然派ワイン

Vin nature en Beaujolais

失われた「農作物」の味を求めて

 「リヨンには、ローヌとソーヌとボージョレーという3つの大河が流れている。」と20世紀のジャーナリスト、レオン・ドーデがいみじくも言ったように、脂っこい料理に合う、口当たりが軽く手ごろなボジョレーワインはリヨンを代表する地酒。毎年11月の第3木曜日に解禁となる新酒「ボジョレー・ヌーヴォーBeaujolais nouveau」は世界的に有名です。

 ボジョレー地区は、リヨンのすぐ北、ソーヌ河の西側に位置するなだらかな丘陵地帯。見渡す限り一面にガメ種のぶどう畑が広がっています。日常用のワインが多いボジョレーの中でも、北部にある10の村名が記載された「クリュCru」と呼ばれる特級ワインだけは別格。番組に登場したラピエール家のぶどう畑は、その中でもモルゴン特級ワインの産地、ヴィリエ・モルゴン(Villié-Morgon)村に13ヘクタールあります。

 マルセル・ラピエールさんは、1981年からボジョレー地区で、ぶどうの栽培に太陽と月の動きを関連させた完全有機農法、ビオディナミ(biodynamie)農法を取り入れた先駆者。そのワインは、化学的な添加物を一切加えることなく、天然の酵母のみでぶどうの果実と土地本来の味(goût de terroir)とを反映した、生きた繊細な「農作物」です。上品でしっかりとした味わいは、とても高貴な品種ではないガメ種からつくられたワインとは思えないほどです。

 マルセルさんのエスプリや情熱を共有する自然派ワイン(vin nature / vin naturel)はの生産者は、今日、フランスでは一大勢力となっています。2010年にマルセルさんが他界した後、妻のマリーさんと長男のマテューさんがその遺志を継いで、ぶどうの栽培とワイン醸造を続けています。

 ワインの良さは、素直に身体で感じるもの。ラピエール家のワインはそういった本来のワインの魅力を再発見させてくれます。

information

M. Lapierre
Domaine Des Chênes 69910 Villié-Morgon
http://www.marcel-lapierre.com



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