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動きが見えることとコーチング

良い動きとは何かはバイオメカニクスによって研究されている。また、良いコーチは良い動きに導けるということもそれなりに認識されていると思う。けれども動きを見るセンスとは一体何か。どうすれば身につくのかはあまり理解されていない。どうすれば動きが見えるようになるのか。

人間は止まっているものより動いているものを認識しやすい。それは進化のプロセスで動きに反応した方が生存に有利だったからだろうと思う。この癖が残りむしろ静止しているものの中に動きを見出してしまうほどだ。ただ、動きには少し厄介なところがある。それは全てが影響しあっているという点だ。

動きが見えるということは、関係性が見えるということに他ならない。何が何に影響しているのか。何から始まり何に伝達したのか。この起点と結果の関係が理解できない人間には、物事が複雑に見えてしまう。大事な点は現象が現象として見え、その奥のそうならざるを得なくなった原因に遡っていくことができることだ。

まるでジェンガのように、それを除いても大勢には影響しないパーツと、一見目立たないがそれがなくなれば一気に崩れるパーツがある。動きの中でそのボトルネックを見出すことができ、そこに言語的な働きかけによって相手の動きを引き出すことができるのが良い技術コーチの条件だ。

目はいかにして鍛えられるのか。まず数だ。卓越とは人が見えない違いが見えることでもある。数を見ることにより微細な違いを見つけられるようになる。もう一つは体感的直感だ。人の動きの中に、感触を見出せるかどうかが大事になる。コーチは現象の説明と感触の説明ができなければならない。

数を重ねても感触を想像しても一定のラインしか行き着けない。そこから先には身体的直感と、言語能力が必要になる。表象に現れる動きから原因までが階層的に理解されることで、重要な点が端的に理解できる。言語能力が卓越することで視覚ではないイメージで相手に動きを伝達することができる。

動きの大まかなルールは以下のようになる
1、中心から末端へ力は伝達される
2、部分を集めても全体にはならない
3、押している場所(地面)が起点
4、速さは結局強さに行き着く
5、骨格と身体運動の履歴がその人の癖
6、人間は一点しか意識できない
7、意識と動きは一致しない

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