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孫正義の憂国①~なぜ日本はウーバーが走れないのか?~

ソフトバンクの孫正義会長は2019年5月決算説明会で日本のライドシェアの規制に対して、「日本の進化を遅らせる」と話した。ソフトバンクはこれまで、中国の滴滴出行や米ウーバーテクノロジーズ、シンガポールのグラブ、インドで「オラ」を運営するANIテクノロジーズに出資をしている。

しかし、そのようなソフトバンクは未だ日本でライドシェア事業を展開することはできない。それは、二つの壁が存在するからである。

ライドシェアとはプラットフォーマーを通じて自家用車を用いながら、輸送の需要と供給を結び付けるサービスである。これは、所謂「白タク」と呼ばれる行為だ。市場規模は2017年の6兆円から、2022年には、10兆円になるとも言われている。

白タクは以下の根拠をもって規制される。

道路運送法78条:自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
一 災害のため緊急を要するとき。
二 市町村(特別区を含む。以下この号において同じ。)、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により一の市町村の区域内の住民の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき。
三 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。

災害時、自治体やNPOによる非営利目的、バスやタクシーが走っていないなどの特殊な事情を除いて自家用車を有償で輸送してはならない。

道路交通法86条:旅客自動車であるものを旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で運転しようとする者は、当該自動車の種類に応じ、それぞれ第二種免許を受けなければならない(一部抜粋)

つまり、旅客輸送には対象の自働車の免許に加えて二種免許が必要となるということ。

上の法律が日本のライドシェアにかかる二つの壁である。整理すると、まず日本では自家用車を有償の旅客輸送に使用することは、道路運送法78条で災害時などの特殊な場合を除きできない。それに加えて、旅客輸送をすると道路交通法86条の2種免許が必要となる。この法律上の二つの壁が日本でライドシェアを阻んでいるのだ。


【参考文献】

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44612550Q9A510C1000000/

各種法律については、イーガブ(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000105)で検索。

谷口博文.2017.「ライドシェアに係る法規制の現状と今後の方向性 :イノベーションに親和的な法形成プロセス」『ベンチャーズ・レビュー(日本ベンチャービジネス学会)』30.57
-61。

市川拓也.2018.「海外のライドシェアの現状と日本でのあり方~ライドシェアに対する法規制の議論を急げ~」大和総研。

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