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『リンボ』ハードボイルド白黒映画:残酷なのに美しい

先月、東京国際映画祭が日比谷・有楽町・銀座で開催されていました。

メジャーな作品だけでなく、コアな作品、社会派な作品も登場し、日本で公開や配信のない映画を見られる良い機会です。

今さらですが、第34回「東京国際映画祭2021」で観た作品の感想です。

『リンボ』という香港を舞台にしたかなりハードな作品です。

『リンボ』あらすじ

犯罪うずまく香港のスラム街。左手だけが残される猟奇的な連続殺人事件が起こる。

その手の持ち主は誰なのか、すでに死んでいるのか。暴力的なベテラン刑事ザムと、エリート新人刑事のウィルが事件を担当する。

事件を追ううちに手詰まりとなり、協力者が必要となる。出所したばかりの女トウを見つけたザム。

実はザムとトウには深い因縁がある。

トウは車の不注意運転でザムの奥さんを轢き、植物状態にしてしまっていた。おなかにはザムの子どもがいた……。

贖罪を求めるトウは事件に協力していくが、ザムの怒りはおさまらない。そんなトウに対し、暴力的に振る舞うザム。ラインを超えた捜査をおこなうザムに手を焼くウィル。

捜査を進めるうちにどんどん深みにハマっていく2人。

そして、ひとりの容疑者が浮上する。

英語版の予告です。残酷な映像が含まれるので注意してください。

キャスト

監督:ソイ・チェン

ザム:ラム・カートン
トウ:リウ・ヤースー
ウィル:メイソン・リー
ヤマダアキラ:池内博之

日本人の池内博之さんがかなり重要な役で登場します。

ウィル役のメイソン・リーは、ブルース・リーの息子さんです。

残酷な世界と美しい映像

この映画は全編白黒です。

どことなくハードボイルド映画の『シン・シティ』と似た雰囲気を持ちます。

『リンボ』の映像は細部まで美しく、全編白黒であることが負担になりません。

ただし、こんなにも荒廃している世界があるのか、と疑ってしまうほど残酷です。

もし映像に色が入っていたら直視できないと思いますが、白黒の映像でマイルドになっています。悪臭が想像できるほどの映像なんですが、同時にとても美しく感じました。

映画館で絶対にみるべき映画で、大画面だと細かいところまで美術が凝っているのがよくわかります。映像に引き込まれした。

リアルな暴力シーン

ザムがトウに対し、殴る、蹴る、引っ張り回すがとにかく激しい。キツい暴力シーンが頻繁に登場します。本当に100%の力で殴っているんじゃないか、と思うくらいリアルです。見ていてすごくハラハラします。

途中、3重、4重の追いかけっこシーンが登場するのですが、スピード感が半端ない。

そして、池内さんの存在がとても不気味です。池内さん『GTO』に出てたな、とか思い出したり……。ますます魅力的になっていました。

ちなみに『リンボ』とは「辺獄」という意味です。カトリック教会において「永遠の地獄にとどまることはないものの、宗教的な罪で死んだ者が行き着く場所」のことです。

まさにそんな世界でした。

それぞれの抱える罪。見終わったあとにはストンと納得する部分が多かったです。

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