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映画「茄子 アンダルシアの夏」 *20/8/28

映画の中に出てくる「自転車」、でてくると無条件に魅力を感じます。夏にぴったりのスペインが舞台の自転車レースのお話でした。

視聴記録:
映画「茄子 アンダルシアの夏」

黒田硫黄原作のコミック「茄子」の中からスペインの自転車レース“ブエルタ・ア・エスパーニャ”を題材にした短編「アンダルシアの夏」を高坂希太郎監督が忠実に再現したアニメーション作品。


最初にこの作品を知ったのは、確か高校生くらいの時。映画館に一緒に行った誰かが、これはおもしろいと高評価していたような記憶があります。でも、「茄子?那須じゃなくて?いったいなんの話?」「ジブリっぽいけど違うのか」と思って、全く興味がわかず、ずっと見ていませんでした。

先日、同じ高坂監督の「若おかみは小学生!」を夫と見ました。

それで、夫がNetflixにあるのを見つけ出し「こっちも面白いよ」「47分で短いよ」といわれるものの「うーん…」とあんまり食指が伸びなかったのですが、夫が見はじめたのをうしろで見ていたらなんだか面白そう。説明部分が全くないまま話が進むのが、完結というか、入りやすかったのかもしれません。

とはいえ、一方で説明がないことで、自転車レースがわからない人にはルールがさっぱりわかりません。でも、見ながら、なるほど、自転車レースはチーム戦で、長期戦のためにいろんな役割の人がいて、この主人公のペペはチームの主役ではなく、補佐役に徹する立場なんだということがわかってきました。その上で、ペペが抱える劣等感や、地元との確執が見えてきます。

映画のなかの「自転車」

映画のなかで自転車が出てくると、無条件に「エモい…」と言いたくなってしまいます。自動車みたいに免許は必要なく、自分の力で漕ぐことができ、遠くまで行けるもの。乗っている人を次のステージに連れて行くものとして描かれることが多いと感じます。

今回の映画では、ペペはほとんどずっと自転車に乗っています。自転車レースの話なので当たり前ですが。じゃあどこへ連れて行かれるか、というと、ペペがレースを通して遠ざかろうとしているものは確執だらけの「故郷」なんですよね。このレースでいい成績を取らないと、スポンサーを解約されて、地元に戻らなくてはいけなくなるかも、という故郷からの逃走。そして、レースの日は兄と元カノの結婚式で、その故郷の悪夢からの逃走。

それを踏まえた上でのラストシーンは、観ているこちらとしても、さらに手に汗を握りました。

「茄子」の象徴

ラストシーンを見て、だからタイトルに「茄子」が付いていたのね、と非常に納得しました。

この映画の原作漫画は、もともと「茄子」という短編漫画集の中の1作だったそうです。一見、自転車レースに全く関係なさそうな「茄子」は、この作品の中で「故郷」の象徴として、最後まで大事に描かれます。

序盤には、この「茄子」のピクルス漬けがアンダルシアの名産で、ワインと合わせて飲むのが昔からの文化という話があります。ですが、その茄子をペペは毛嫌いしています。かつ、今現在ペペはベルギーのビールスポンサーの自転車チームにいるのです。

でも、レースの後、最終的にペペは茄子(=「故郷」)を食べて、今までの過去を受け入れるというのが、非常によくできた話だなと思いました。
また、茄子を食べるペペのアニメーションが美味しそうで非常に印象的でした。高坂さん作品、食事シーンの作画が特別魅力的で、そこはジブリ映画との共通点を感じます。


アニメだからこそできるゴール直前の表現は、CGアニメが主流になった今では、もうなかなか見ることができない熱量があり、目が離せませんでした。
そして、そのクライマックスからの映画終わりまでの作りがやさしく、とても鑑賞後の感情が爽やかな作品でした。

この作品に手を伸ばすまで時間がかかってしまいましたが、とてもよくできていて、夏に見るのがぴったりの映画でした。
ちなみに、主役のペペの声優は大泉洋だったのですが、実写していたとしても大泉洋だな、と感じてしまいました。(もう年齢的に厳しいかもしれませんが、、)


なんと、続編もあり、そちらは舞台が日本だということで、また改めて見たいと思います。次は「茄子」がどういう風に生きてくるのか、きになるところです。




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